IAS19号

  1. IAS19号とは
  2. 改正IAS19号のポイント

1.IAS19号とは

IAS19号は、従業員給付の会計処理を定めたものである。日本では年金の会計と解されているが、実際には短期従業員給付と退職後給付、その他の長期従業員給付の会計処理をまとめたものである。年金会計は退職後給付に含まれるが、退職後給付は年金だけでなく医療給付なども含まれる。ちなみに、短期従業員給付は給与・賞与の他、有給休暇、その他の長期従業員給付は長期勤務休暇(永年勤続者に対しての休暇制度)などである。

2.改正IAS19号のポイント

2011年6月16日に、改正IAS19号が発表され、2013年1月以降に開始される事業年度から適用されている。改正の主要なポイントは、資産・負債の変動の即時認識、期待運用収益の廃止、費用表示方法の見直しである。

<資産・負債の変動の即時認識>

従来は数理計算上の差異についてはコリドールールを伴った遅延認識及び即時認識を選択することが認められていた。一方、過去勤務債務に関しては、受給権確定分は即時、受給権未確定分は受給権が確定するまでの期間で処理することとなっていた。改正により、数理計算上の差異の遅延認識の選択肢が排除され、過去勤務債務についても受給権の有無を問わず即時で処理することとされた。

<期待運用収益の廃止>

日本、米国さらには国際基準でも、従来は退職給付費用の構成要素(費用の減額要素)として年金資産の期待運用収益が計上されてきた。しかし、改正IAS19号では、この期待運用収益が廃止された。事業主の恣意性が入る余地が大きいというのが廃止の理由である。ただ、年金資産を積立てていることの経済的な効果を考慮するため、利息費用(退職給付債務×割引率)から、利息収益(年金資産×割引率)を差し引いた額を純利息費用として退職給付費用の要素とすることになった。

<退職給付費用の表示>

これまでの基準では、退職給付費用を構成する要素は、(1)勤務費用、(2)利息費用、(3)期待運用収益、(4)過去勤務費用の処理額、(5)数理計算上の差異の処理額その他、となっていた。新しい基準では、期待運用収益率が廃止されることに伴い、確定給付債務のネットの利息相当分として純利息費用が計上される。一方、期中の資産・負債の変動は期末時点で即時に反映されるため、過去勤務費用は受給権の有無に関わらず当期の費用としてすべて計上されるほか、これまで数理計算上の差異として扱われてきた資産・負債の時価変動についても"再測定"という項目で即時に認識されることになる。
ただ、従来、資産で発生する数理計算上の差異は、期待運用収益を織り込んだ期末の予想資産額と実際の時価資産額だったのに対し、新基準で織り込まれる年金資産の収益は年金資産割引率であるため、実際の時価資産額と年金資産×割引率を織り込んだ期末の予想値との差額が資産サイドで発生する再測定となる。
また、再測定は当期利益には反映せず、その他の包括利益で計上し、発生した再測定をその後損益計算書を通じて当期利益へ計上し利益剰余金に組み替える処理(いわゆるリサイクリング)は行わない。ただし、その他の包括利益に計上した額を資本の部の中で利益剰余金に振り替えることは認められる。
また、費用の構成要素を損益計算書のどの箇所に表示するかについては、公開草案では勤務費用は営業費用、純利息費用は財務費用、再測定はその他の包括利益に表示するとされたが、純利息費用の表示箇所は特定しないこととなった。

新旧の基準における退職給付費用の構成要素

新旧の基準における退職給付費用の構成要素