コラムVol.176 日下部所長の知っトクお金講座第2回 これならできる!?株式投資

2024年3月8日
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日下部 朋久 (くさかべ ともひさ)
MUFG資産形成研究所長。1986年三菱信託銀行(当時)入社。年金数理、年金ALM、退職給付コンサルティングなど、幅広く年金業務に従事。企業年金基金、健康保険組合等を経て、2022年4月より現職。年金数理人。日本アクチュアリー会正会員。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。1級DCプランナー。
MUFG資産形成研究所

株式投資を始めてみたいと考えているけれど、怖いイメージがあってなかなかスタートできない方への講座です。お気持ちよくわかります。株で儲かったという友人の話しを聞くと、自分もと思いつつ、ニュースで大きく株価が値下がりしましたと聞くと、やってなくて良かったと思う。そんなイメージ先行型みなさまのために、「これならできる!?株式投資」として、イメチェンのためのQ&Aをご覧いただきましょう。

株式投資は企業業績や今後の成長力を調べたり、何か特別な準備が必要だと思うのですが、そこまではとてもできません。 やっぱりやめておくべきですか?

Answer

半分正しく、半分誤りですね。イメージしているのは個別株への投資だと思います。確かに個別株に投資するには、海外も含め多くの企業からここだと思える企業を選んだのち、株式を直接購入することになります。最低購入金額も選んだ株によってまちまちですし、高額となる場合もあります。倒産すれば価値が0となる場合もあります。その企業の業績や成長力、短期的にはさまざまな政治・経済ニュースや思惑などで、株価は動きますので、情報の収集・分析や、資金の準備、そして価格変動に対する覚悟が必要になってきます。これらをクリアするには、株式投資について考え方はもちろん、取引ルールや手続きをしっかり学んでから始めることが必要かと思います。
しかし、悲観することは全くありません。そこまでやっている方はかなり株式投資が好きな人であって、その他大勢、普通の人はそこまでやりません。普通の人は、株式の投資信託を利用することで、これらのハードルを下げているのです。
株式の投資信託は、運用会社のプロが多くの個別株を組み合わせて運用するファンドと呼ばれるものです。つまり、個別株の選択、調査・分析はプロが行いますので、その点をお任せすることが可能なのです。怖いイメージの多くは個別株投資に由来しています。まずは個別株を買うのではなく、投資信託を購入することから始めるのが良いと思います。投資信託には個別株のデメリットをカバーするメリットが他にもいろいろありますので次に紹介いたしましょう。

株式投資を投資信託で始めることのメリットについて教えてください。

Answer

主なメリットは以下のとおりです。

・プロの運用
投資信託は小口の資金を大勢から集めてファンドを作り、プロのファンドマネージャーが運用します。そのため、個別株の選択、調査・分析などは自分で調べる必要がありません。ファンド内の株式の購入、売却の実務もプロが行います。みなさんはそのファンドを売買するだけで済むのです。

・分散投資でリスクが比較的小さい
投資信託は多数の企業に投資するため、一部の企業が悪い結果を出したとしても、全体の運用成績に与える影響は小さくなります。つまり、価格変動リスクが分散され、個別株の値動きより穏やかになります。最近では外国株式の手数料が下がり、世界の株を投資対象とする国際分散投資が手軽にできるようになりました。

・少額から投資可能
利用する商品や金融機関に拠りますが、一般的には10,000円から始められ、積み立て型では1,000円から投資できる場合が多くあります。最近では100円で始められるという金融機関もあるようです。個別株で分散投資をしようとすると、一般的に、多くの銘柄を一度に少額で購入することは難しいので、この点は代えがたいですね。iDeCo、NISAではこのメリットを活かして、毎月少額の積み立て投資が可能となっています。

メリットがある一方で、デメリットはありますか?

Answer

デメリットには、以下の点があげられます。

・手数料がかかる
プロに任せるので運用や資産管理に手数料がかかります。これらは投資収益から残高に応じて差し引かれますので、リターンを減らす要因となります。ただし、手数料は商品ごとに異なり、最近では手数料がかなり抑えられた商品が増えましたので確認が必要ですね。

・大きな儲けが期待できない
メリットでリスクが分散され価格変動が個別株にくらべ穏やかと説明しましたが、その裏腹に価格の上振れも抑えられます。大きな上振れで大儲けを期待する人には物足りないかもしれませんが、普通の人はメリットの方が大きいと思います。

・好きな銘柄が選べない
一定の条件で運用を任せることになりますので、たとえばぜひとも欲しい株があっても、それを指定して買ってもらえるわけではありません。これは諦めましょう。

株式の投資信託を始めるにあたっての注意点があれば教えてください。

Answer

注意すべき点としては、投資信託であっても価格変動は大きくなります。そのリスクを乗り越えるには、長期投資が必須となります。目先の相場変動は誰も予想できませんが、長い目でみれば相場全体として上昇が期待できます。短期での売買は結果として収益機会を逃すことに繋がりかねません。じっくり保有することが大切です。

株式の投資信託には「パッシブ運用」と「アクティブ運用」があると聞きましたが、どちらを買えばよいのでしょうか。選択の基準を教えてください。

Answer

・パッシブ運用
運用はプロが行うと解説しましたが、パッシブ運用は、特定の株価指数(東京証券取引所全体を代表する指数(TOPIX指数)や米国の市場を代表するような指数(S&P500指数)など)の動きに追従することを目指します。基本的に指数と同じ銘柄を同じ比率で保有するなどの方法で、指数に追随できます。個別企業の調査・分析・選択等の判断が不要となるため運用コスト(手数料)が低く抑えられます。最近では外国株式に投資するファンドでも手数料が低く抑えられます。どの市場(日本、米国、ヨーロッパ、新興国、・・・)を買えば良いか判断が難しい場合は全世界株の指数に連動するファンドが検討対象になると思います。

・アクティブ運用
一方、アクティブ運用は、ファンドマネージャーが市場の動向を予測したり、個々の銘柄の選択や売買タイミングを決定するなど、投資判断が入ります。その目的の多くは、特定の指数を上回るリターンを目指すことです。そのための分析や取引が必要なため、運用コスト(手数料)が高くなることが多くなります。

・選択の基準
おそらく、どちらが儲かるの?と言うのが知りたいところかと思います。アクティブ運用はコストをかけてパッシブ運用を上回ることを狙うわけですが、手数料を差し引いたあとでパッシブ運用を上回るかどうかが焦点です。
統計的にはアクティブ運用の手数料控除後の運用成果はパッシブ運用の成果とくらべて、必ずしも良いとは限りません。数多くあるアクティブファンドから何を選ぶかによりますが、過去成績良かったからと言って将来も良いとは限らないのも事実です。初めての人はどのアクティブファンドを選べばよいかというのは、難しい選択になると思います。その意味で、パッシブファンドの選択をお薦めします。パッシブファンドであれば運用成果は運用会社によって大きな違いはありませんので、手数料の安いものを選べば良いと思います。

投資信託のパッシブ運用を利用して株式投資を始めてみようと思います!実際に始めるにあたって、どのくらいの資金を投入すべきでしょうか?考える際のポイントについて教えてください。

Answer

投資信託のパッシブ運用を選択するとしてそれ相応の価格変動リスクがあります。まず、投資開始には生活資金をしっかり確保することが必要です。少なくとも月々の生活費の3か月分は臨時支出に耐えられよう預金などに置いておくべきです。投資資金はしばらく使い道のない余裕資金での運用が相応しく、老後のための資金などもその対象になると思います。
このような余裕資金を前提にするとしても、株価が半減するようなショックは十分起こり得ます。このようなショックがあっても心理的に耐えられるぐらいの額にしておくことが必要です。損失に耐えられる額を考えるにあたっては、悲観的になりすぎず、次のような将来リカバリーが期待できる要素も考慮に入れると良いと思います。

  • 1.

    過去の経験によれば一時的な暴落のあとでも、時間がかかることはあるが、徐々に回復する(最近ではコロナショック後すぐ回復しましたね)

  • 2.

    今すぐ必要なお金ではないし、将来の収入を考えれば十分リカバリーできる

  • 3.

    退職金や相続財産が期待できる

個人的には、バブル崩壊もリーマンショックも経験していますが、その後回復すると信じ、積み立て投資を続けました。暴落のあとも、継続して投資を行っていれば回復相場に乗ることができます。もう一つアドバイスとしては、儲かると売って利益を確定したくなりますが、使い道が決まっていないのであれば(余裕資金であるなら)、持ち続けることをおすすめします。売り時はその資金が必要になった時が良いと思います。もし損失があったとしても、必要なお金であればあきらめがつくからです。

株式投資のイメチェンはできたでしょうか。納得できましたら、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

ご留意事項

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