コラムVol.20 投資信託の分配金について考えよう

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古徳 佳枝 (ことく よしえ)
東京大学卒業後、日興證券に入社。投資信託・投資教育業務等に携わった後、2002年退社し、東京大学大学院にて「大学におけるパーソナルファイナンス教育」に関する研究を行う。その後、野村アセットマネジメントに入社、投資信託のセミナー講師等を担当。2011年同社退職後は、金融経済教育インストラクターとして、大学生・高校生向けの金融経済教育の講師や確定拠出年金導入企業の社員向け説明会の講師等を中心に活動している。

分配金とは?

投資信託の「分配金」について、投資家はどのように理解すれば良いのでしょうか?

「投資信託の運用による利益」と説明される一方で、「分配金は必ずしも投資家にとって利益とは限らない」とも言われており、もらった方が得なのか、もらわない方がよいのか、悩んでしまいます。

“投資信託は集合投資の器”ですから、さまざまな投資家が同じ投資信託に投資をしています。

投資信託は日々、基準価額が算出されますが、保有する投資家の中には、現在よりも低い基準価額で購入した投資家もいれば、高い基準価額で購入した投資家も混在しているわけです。

決算日に支払われる分配金は、投資信託の計理上は分配可能な金額の一部ですので、「運用による利益」といえます。一方でその投資信託を高い基準価額で購入していた投資家にとっては、利益ではなく元本の払い戻しになります。

結局のところ、投資家から見た分配金は「保有する投資信託からの一部払い戻し=一部換金」であり、それが利益かどうかは、そのときどきで異なる、と理解すればよいでしょう。

ただ「分配金が必ずしも投資家にとっての利益ではない」とはいえ、「分配金を毎月受け取りたい」「分配金はいくら?」と気にする投資家がいることもまた事実です。

毎月分配型の投資信託は減少基調

毎月分配型投資信託の純資産とシェアの推移
毎月分配型投資信託の純資産とシェアの推移

毎月分配型の投資信託は2000年代前半に登場し、その存在感を高めていきました。特にリタイア後の投資家は、長期複利運用で資産を増やすことを目的とするよりも、定期的に資産を引き出したいという受け取り志向が強く、そのニーズに合致していたといえます。毎月分配型は、2011年8月には株式投資信託の純資産総額のうち67.5%を占めるに至りました。しかし2015年以降、その純資産総額は減少基調となり、2016年以降は株式投資信託全体の純資産総額が増えるなかで毎月分配型は減少し、2017年9月のシェアは34.8%まで低下しました。ファンド本数も2015年8月以降の2年間で約100本減少しました。

「分配利回りが高いファンドが良いファンド」という誤解が是正されてきたことや、高い分配金を払い続けることが投資信託サイドにとって困難になったこと等がその背景にあるようです。

投資信託を活用するにあたっては、分配金について少なくとも次のことを理解しておきましょう。

投資家が分配金について知っておきたいこと

1. 「分配金が多い=利益が大きい」は間違い
過去の分配実績だけをみるのではなく、分配金と基準価額のトータルリターンが運用成果です。

2. 分配の「あり・なし」のどちらが得かはわからない
分配金は一部換金することと同じなので、今後値上がりするなら、分配金は受け取らない方が得ですし、逆に値下がりするなら、分配金は受け取った方が得です。
どちらが得か事前にわからない以上、投資スタンスに応じて決めるのが良いでしょう。

3. 毎月分配型の再投資コースは、年1回決算型と比べると通常不利
「分配金を受け取る必要はないから、毎月の分配金を同一ファンドに再投資している」というケースがありますが、これは合理的な考えとはいえません。なぜなら、毎回の分配金のうち利益にあたる普通分配金からは税金が差し引かれ、税引き後の金額が再投資されるからです。
分配金を受け取らないのなら、できるだけ分配頻度が少なく、かつ分配金が少ない投資信託を選択して長期複利運用をする方が有利です。ただし、利益が出ていない場合は、分配金には課税されませんので、どちらも同様の結果になります。

投資信託の分配金についてはさまざまな考えがありますが、結局は投資家本人の使い方次第です。

毎月分配型は「投資対象資産で運用しながら、定期的に資産の一部を受け取りたい」というニーズには合致した手法です。また、ファンドが値上がりしているときにその収益の一部を分配金として受け取っておくことで、その後ファンドが値下がりした際、受け取った分配金については値下がりの影響を受けない、という「利益確定効果」もあります。

一方、NISAを活用して非課税で運用を行う場合、元本払い戻しに相当する分配金を受け取る際はそもそも非課税であるため、せっかくの非課税メリットが享受できません。そのため、運用収益以上に分配金が支払われるファンド(=元本払い戻しに相当する分配金を支払うファンド)への投資は目的に合いません。また、積立投資を行う場合は、毎月そのファンドを買い付けていくので、毎月分配型を選択すると「一方で毎月買い付け、一方で毎月受け取る」ということになるため合理的とはいえません。そのため、分配の頻度はできるだけ少ないタイプを選ぶ方が合理的な選択といえます。

投資を行う際は、「どの資産を投資対象とし、いつ投資するのか」を決定し、そして「投資した資金をどのようなタイミングで手元に戻すのか」についても考える必要があります。分配金の受け取りは、換金と同じく、投資した資金を手元に戻す方法です。分配金に対して正しい知識を持ち、投資目的に合った分配タイプの投資信託を選びましょう。

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