Talks真田広之編

世界を舞台に、俳優・プロデューサーとして活躍する真田広之氏。この度、ロサンゼルスの地で「世界へ挑むために、必要なもの。」をテーマに、社長の窪田と対談を行いました。
異なる道を歩んできた二人が、挑戦しつづける仲間として、未来に向けて熱く語ります。

Talks

俳優・プロデューサー /
三菱UFJ信託銀行ブランドパートナー
真田 広之

取締役社長 窪田 博

世界へ挑むために、必要なもの。 Chapter1 備えを以て「時」を待つ

窪田

『SHOGUN 将軍』のエミー賞、そしてゴールデングローブ賞受賞、改めておめでとうございます。

真田

窪田社長から直接そう言っていただけると、喜びもひとしおです。
正直、撮影中にはこんな展開が待っていようとは予想だにしませんでした。視聴者の皆さまや評論家の方々から高い評価をいただけたのは、チームワークの賜物であり、チームの皆には心から感謝しています。

窪田

実は私、歴史が好きでして、『SHOGUN 将軍』は世界史と日本史をダイナミックに融合させた時代物の傑作だと思いました。全10話をあっという間に視聴してしまいました。

真田

ありがとうございます。

窪田

『SHOGUN 将軍』のヒットを機にハリウッドでも日本文化が受け入れられ、盛り上がっていると聞きました。真田さんがアメリカに拠点を移されて20年以上経ちますが、真田さんご自身は当時から現在のような状況を予見していらしたのでしょうか?

真田

予見と言うより、「いつかそういう時代にしたい」という“願い”ですね。エンターテインメントの世界に東西の壁があるとしたら、自分たちの世代で取り払って次世代のための橋を架けたい。それが、ロサンゼルスに住み始めた動機の1つでした。
撮影の現場で、気が付いた範囲で日本人や日本の文化について誤解につながるような表現を指摘し、正していく。そして、1作ごとに日本文化の理解者を増やす。それを愚直にやり続けることが大切で、挑戦を続けた先に役者としてのチャンスがあるとしたら、その時までにハリウッドで通用するような実力を蓄えておこう。そういう「急がば回れ」的な考え方をしていましたね。

窪田

日本文化を正確にご紹介いただけたのは、日本人の一人としてもうれしい限りです。
先ほど予見と言いましたのは、弊社のビジネスでも時代の先を読むことが大変重要だからです。弊社は信託銀行として社会課題の解決に資する商品やサービスの提供を経営のトップ戦略に位置付けています。世の中の動向を先読みしながら常にお客さまや社会のニーズにお応えしていくのが私どものような信託銀行の使命ですが、それはエンターテインメントにも通じるのではないかと思います。

真田

確かに、予見することは大事ですよね。予見するだけではなく、何かしら変化の兆候を感じたら、すぐに調査や準備をして、チャンスが訪れた時に慌てないようにしておく必要性は、業界が違っても同じなのではないでしょうか。

窪田

おっしゃる通りです。先ほどロサンゼルスに住み始めた動機の話をされていましたが、日本でトップ俳優として活躍されていた中で、敢えてゼロから海外に挑戦されたのは大きなサプライズでした。何かきっかけとなるような出来事があったのですか?

真田

海外志向は10代の頃からあったんです。チャンスはいつ、どんな形で訪れるか分からないので、時間があればニューヨークやロンドンで芝居を見たりして、世界のレベルが今どこにあって日本はどの辺りか、その中で自分はどうかといった現在地を確認し、トップクラスの方々と仕事をするためには自分に何が足りないのかを考えて悶々としていました。
そうこうするうちに10代、20代が過ぎていったのですが、30代の最後にロンドンのロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの公演『リア王』に出演する機会が巡ってきたんです。日本人キャストは史上初で一人だけ、慌てて英語を勉強し直しました。今思えば人生最大のチャレンジでしたが、異文化がぶつかり合い共有される中で誰も見たことのない新しい感覚が生まれる瞬間を目の当たりにし、困難さと同時に楽しさや重要性も感じたわけです。
こういう国際的なプロジェクトに関わっていきたいと考え始めた時にハリウッド映画『ラスト サムライ』の話をいただきました。「リスクを覚悟で飛び込んで、変えていこう」と思えたのは、ロンドンでの経験が大きかったですね。

窪田

そこまでご自身を追い込むということは、相当な覚悟をお持ちだったのではないかと思います。その時のモチベーションについて、お聞かせいただけますか?

真田

『ラスト サムライ』では撮影終了後も半年ほど仕上げ作業に参加し、日本人として意見をしていました。その中で、「もしかして東西の壁を壊せるんじゃないか」と思い始めたんです。とはいえ、当時は日本とアメリカを行ったり来たりの生活で“お客さま扱い”されているように感じ、本気で何かを変えたいなら飛び込むしかないと腹を括りました。
日本の家や車を手放して単身渡米し、エージェントやマネージャーもいないまま英語のレッスンから始めました。最大のモチベーションは、ハリウッドの第一線の人たちと一緒に仕事をすることでした。となれば、自分に足りないものも見えてきますから、現場で冷や汗をかいたり、恥をかいたりしながら経験を積んできました。作品の1つ1つがオーディションという気持ちでしたね。

窪田

ハリウッドは世界のエンターテインメントの中心ですから競争も激しく、生半可な気持ちでやっていけるような場所ではないですよね。 聞いたところでは、作品ごとにオーディションが行われ、ベテランも新人も横一線で参加するのだそうですね。

真田

そうですね。最近でこそオファーも増えてきましたが、最初の頃は毎作オーディションを受けていました。俳優に限らず、美術さんなどの職人さん、チーフクラスの方もプレゼンテーションで仕事を得ています。
しかも、技術や資質は現場に出るまでのライセンスに過ぎません。その先重要になるのはコミュニケーション能力で、いかに周囲に調和しながら作品の質の向上に貢献していくかが見られています。トップクラスの人でも対人能力に問題があれば作品の途中で切られてしまいます。
ですから、華々しいキャリアを持ったベテランの方すら、生き残りをかけて必死に取り組んでいます。なぁなぁが通じない半面、しっかり地力を見せればまた次が来る。厳しいけれど、実にやりがいのある世界だと思いますね。

窪田

その中での真田さんの自己研鑽についても是非お伺いしたいと思います。今に至るまで、どのようなチャレンジを行い、どんなことを心掛けてこられたのでしょうか?

真田

私の場合はやりたいことが仕事になっているので、作品のために何かを覚えたり、身に付けたりすることが全く苦にならないんです。むしろ、身に付けた台詞なり所作なりアクションなりを披露する時に悔いを残したくないと思うと、自然と準備や稽古に割く時間が増えていきます。その大変さを楽しんでいる自分がいますね。

窪田

まさに、真のプロフェッショナルですね。私たちトラストバンカーも、時代とともに社会やお客さまのニーズが多様化する中で、それに対応していく「専門性」を磨き続ける必要があります。真田さんのお話を伺い、真田さんのように大変さを楽しむくらいの気持ちでチャレンジし続ける姿勢を持ちたいと思いました。弊社でも全社を挙げてチャレンジを続けてまいります。

Chapter2 日本人や日本企業が
グローバルに活躍するには?
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