受託者責任―日本
年金の分野では、受託者(fiduciary)は信託財産の受託者(trustee)に加えて、信任を得て他人のために任務を遂行する者を含んだより広い概念として一般に用いられている。この受託者が任務遂行上負う義務が受託者責任で、「善管注意義務」と「忠実義務」を主な内容とする。
「忠実義務」は、利益が相反する立場に身を置いてはならず、受益者の利益のためにのみ職務を遂行しなければならないとする義務のことであり、DB・DC法において事業主および基金の理事の忠実義務が規定されている。「善管注意義務」はある地位や職責にあるものが地位にふさわしい知識に基づき払うべき注意義務をいう。また、「金融商品サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」が改正され(2023年11月29日公布、2024年11月1日施行)、DB・DCの事業主および年金基金とその理事に対して、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない「誠実公正義務」が加わり、顧客本位の業務運営が今まで以上に求められるようになっている。