特別対談
三菱UFJ信託銀行 フェロー 小谷 亨一 KOICHI KOTANI × (株)生活設計塾クルー取締役 ファイナンシャルプランナー 深田 晶恵AKIE FUKATA三菱UFJ信託銀行 フェロー 小谷 亨一 KOICHI KOTANI × (株)生活設計塾クルー取締役 ファイナンシャルプランナー 深田 晶恵AKIE FUKATA
大切な人のこれからを守るために。
そんな視点で
「遺言」を考えてほしい。
歳を重ねても元気な方が増えてきた現代。
まだ自分には関係ないと敬遠されがちな「遺言」ですが、実は、
そんな今だからこそ考えておくべき理由があります。
家族とお金の問題に詳しい、二人の専門家に話を聞きました。
−−「遺言」といっても、あまり馴染みがないという方も多いかもしれません。そもそも、なぜ遺言は必要なのでしょうか。
小谷 亨一氏
小谷 亨一氏
小谷遺言には、大きく分けて二つの役割があります。一つは、自分自身のため。資産に対する自分の意志を伝えるために、非常に有効な道具だといえます。もう一つは、のこされた方のためです。きちんと準備しておけば、相続手続きの事務的な負担、そして精神的な負担を大きく軽減することができます。
深田例えばご本人亡き後にご家族が口座からお金を下ろしたいとなると、相続の権利があるすべての方から、合意のうえ書類にハンコをもらう必要が出てきます。きちんと要件を満たした遺言書があれば、そうした手間もなく預金や不動産の名義書換えができますし、遺産分割の協議で意見がまとまらないということもある程度は避けられます。これは大きな違いですよね。
−−本人だけでなく、のこされた側にとっても重要ということですね。それでも、やはり遺言なんて大袈裟だという意見もありそうです。どんな人が遺言を作成するべきなのでしょうか。
小谷できれば、どんな方でも遺言は書いておくことが望ましいです。日本における遺言利用率は1割未満。国民の5割程度が遺言やそれに代わるものをのこしているアメリカやドイツと比較すると、非常に低いと言われています。欧米では、法律の制度が違うこともあり、遺言は相続手続きの煩雑さを減らすためのものだと広く認識されているようですね。日本でも、遺言はのこされた側のためにもなるという意識がもっと普及すれば、利用率は上がるのかもしれません。もちろん手続きの他にも、例えば「世話になった長女へ確実に財産をのこしたい」など、資産の分け方へのご希望をかなえるためにも、遺言の検討は有効だと思います。
深田 晶恵氏
深田 晶恵氏
深田あまり知られていないですが、お子さんのいないご夫婦も注意が必要です。相続というのは、子どもや孫など下の世代に対するものという感覚がありますが、子どもがいないと、親や兄弟、場合によっては甥や姪といった、上や横の世代にも相続権が発生する場合があります。遺言がないと、のこされた配偶者が、例えば疎遠になっている親族などとハンコをもらうためにやり取りしなければならない可能性も出てくるんですね。

小谷そうなんです。相続では、親戚とのやり取り、家族間の考えの違いからの心労だけでなく、難しい用語が出てきたり、期限に追われたりと、不安ばかりだったという声もよく聞かれます。遺言を書いておくこと、さらに遺言を実現する役割の「遺言執行者」を指定しておくことでその負担を減らせるというのは、多くの方に知っておいていただきたいです。
−−遺言はどんな方にも関係のあることなんですね。ただ、元気なうちはあまり現実的に考えるのは難しそうです。遺言を考え始めるべきタイミングはいつなのでしょうか。
小谷目安としては、60代後半くらいからでしょうか。早いと思われるかもしれませんが、実は遺言というのは何度でも書き換えることができます。書いて終わりではなく、書いてからが始まりという気持ちで、気軽に考えてみてもいいのではないでしょうか。
深田後回しにせず、動ける時に動いておくのがいいと思います。例えばここ数ヶ月は、社会情勢の影響から遺言作成のご要望が急増し、相談に乗り切れないケースも多かったようです。何かあってから焦るのではなく、元気なときにこそ余裕を持って考えておくといいですね。
小谷遺言というのは、必ずしも人生の最後を意識した時に書き始めるものではないと考えています。保険を見直すのと同じように、年齢やご家族の変化に応じて、何度も見直していくことが重要です。専門家と相談しながら、今の自分に合ったものは何なのか、大切な人に何をのこしたいのか、その都度考えていく。そんな風に付き合っていってもらえればと思います。
プロフィール
三菱UFJ信託銀行
フェロー
小谷 亨一
KOICHI KOTANI
「資産の悩みに最も寄り添える存在」を目指し、
資産承継サポートなどの相続業務を数多く担当。
(株)生活設計塾クルー取締役
ファイナンシャルプランナー
深田 晶恵
AKIE FUKATA
特定の金融機関には属さない独立系FPとして、
個人向けマネーコンサルティングを行っている。