ピンチをチャンスに変える。
コロナ禍で、前例のない挑戦がはじまる。
「コロナ禍で、オフィスのあり方はどう変わっていくのか。」

斎藤さんは、テナントリーシング営業部で、お客さまのオフィス移転をメインに担当されていますが、コロナ禍で、どのような変化を感じていますか。

そうですね。コロナ禍で、この一年、オフィスのあり方が大きく変化しました。お客さまと会話していて実感するのは、オフィスのあり方が重要な「経営課題」になっているということですね。その経営課題をいかに解決するかというご提案を意識しています。

確かに、お客さまからのご相談が増えていますね。

コロナによってリモートワークが進んで、今までとは違うオフィス環境を用意する必要があるという考え方は共通するのですが、具体的に立地や広さ、設備をどうすればいいのかというところは、前例がないだけに、どの企業にとっても悩みの種です。

働き改革をキーワードにした環境づくりという考え方は、以前からありました。それが今回、コロナを起点に一気にリモートワークが進み、今後はウィズコロナ・アフターコロナという中で、働き方改革をどのように進めていくかというのが中長期的な課題になってくるのかなと思います。

加えて、不動産を効率的に使っていこうという経営的な目線も、コロナ以前からありましたよね。コロナ対応の答えはひとつではなく、ニーズが多様化していると実感しています。業種や会社規模によってニーズは様々ですね。

コロナを受けてリモートワークが進んで、今、オフィス不要論も一部で出てきている一方で、やはり人が集まりコミュニケーションが生まれることによってイノベーションが創出されることを再認識したという会社もあって、業種や企業文化等によっても、それぞれの考え方・目指す姿があるので、多様化するワークプレイス改革に対して幅広くニーズにマッチできる仕組みを作らないといけないなと思っています。

まったく同感です。これまでの王道というか、パターンみたいなものは通用しなくなっています。お客さまのニーズが多様化するということは、我々、不動産周りのサービスを提供する側にとっては、よりオーダーメイドに近いサービスが求められることになります。

はい、そうした多様なニーズに対応する仕組みとして、本部として、昨年度、FM(ファシリティマネジメント)コンサルという新しいサービスを企画しました。
そして、この4月より提供を始めています。サービスはオフィスに限りませんが、オフィスに関することで言うと、これまでは、お客さまの現状分析と課題整理、それに対する解決策としてオフィスの移転までをお手伝いするというのが移転サポートの主な内容でしたが、FMコンサルでは、お客さまの新たな価値の持続的創造のために、社員のみなさんのエンゲージメントや生産性向上まで踏み込んだ戦略立案から、その実現に向けた具体的なオフィス設計や効果測定、運用等、実務的なところまで落とし込んだものをワンストップでサポートできるようにしました。
「情報がないことへの不安。信託銀行の幅広い顧客基盤だからできること」


2020年の4月以降、最初にコロナの問題が起きたとき、お客さまからいちばん聞かれたのは、他社はどういう対応を考えているのか、世の中全体の流れはどうなっていくのかというお話でした。そこで、信託銀行として何ができるのかを考えたときに、自分たちの取引先のネットワークを活かして、コロナ禍でのオフィスについて大規模なアンケートを実施してみようという話になりました。

コロナについては、過去のデータもなく、現状を知ることに大きな意味があったと思います。

アンケートの中で、お客さまの声として多かったのが、在宅勤務でも仕事自体はできることが分かったので、オフィスの役割を変えなくてはいけない。オフィス=作業する場から、オフィスはコミュニケーションを行う場、あるいはイノベーションを起こすための場所にしていきたいという声でした。またリモートで仕事ができるという中で、従業員が出社したくなるようなオフィスを作っていかなくてはいけないという声もありました。

このアンケートは、単に当社のビジネスを拡充するためのヒントを得るというだけではなく、コロナ禍で世の中全体がどう動いているのか、他社はどう考えているのかという情報を集約して、その結果を伝えることで、お客さまの漠然とした不安を少しでも解消できたことが大きかったですね。他社の動きはワークプレイス検討においてヒントになると思います。

まさに、そういうお声をいただくことも多く、コロナ禍におけるオフィス問題という各社の経営課題の解決に向けて、信託銀行としての貢献ができたのかな、と思っています。もともと当社は、MUFGグループも含めて金融機関として、総合的にお客さまと取引があるので、一度の仲介が成立したら、それで終わりということではなく、他の取引等も含めて、お客さまの立場に立った提案ができるというのが我々の強みだと思っています。

MUFGグループとして総合的な取引があるからこそ、不動産の課題だけでなくて、事業環境でお客さまがどういう状況に置かれているか、どんな課題を抱えているかということを多角的に見たり仮説を立てることができ、その課題に対してMUFGグループとして提案するとか、そういった組織のカタチができているかなというのもありますね。

冒頭でもお話しましたが、不動産のあり方が重要な経営戦略となる中、オフィスの移転であったりとか、新しいオフィスを作るというのは、従業員にとって経営からの強いメッセージになり得るなと思っています。例えば、当社でも三菱UFJ銀行と法人融資部門を統合したときに、多くの信託銀行の営業担当者が信託銀行の本店ビルから銀行の本店ビルに移転をしたんですね。それは、経営からもっとMUFG一体となって、信託のスキームをお客さまに提供していこうというメッセージだったと私は認識しています。

だからこそ、わたしたち自身、目の前の取引だけでなく、企業全体の課題や世の中の動きにアンテナを張って、本質的な課題にアプローチする必要があると思っていますし、常にそれを意識した提案を心がけていきたいです。
「新しい働き方から発想する、未来のオフィスのあり方」


コロナとの共存も一年が過ぎました。お客さまの対応にも変化が出てきましたか。

いま、ちょうど大規模アンケートの第二弾を検討しているところなんです。前回のアンケートで意外と多かったのは、想定していたよりもリモートで仕事が回るという回答でした。ただ、それがまた半年ぐらいで変わってきた感覚があって、一年以上経ったいま、やっぱりフェイストゥフェイスじゃないとできないこともあるよねとか、オフィスでしかできないことってあるよねっという考え方が多く聞かれるようになっています。

オフィスに対する価値観も多様化していて、単純にオフィススペースを減らすという話ではなく、リモートワークしやすい環境やコミュニケーションデザインを重視した環境など、よりポジティブな変化を模索する企業が増えていると感じています。

そうですね。自社オフィスだけでなく、外部のシェアオフィスも合わせて活用するとか、小規模なサテライトオフィスを各地域に分散するとか、ヘッドオフィス自体をさまざまなリスクに対応できるように移転するとか、働き改革と連動したオフィスプランが検討されています。

最近の傾向では、オフィス構築にあたって、従業員の働き方だけでなく、ESGの観点を入れた検討も見られますね。

今、環境認証を取得しているオフィスビルが増えてきている中で、カーボンニュートラルの証明を出せるようなオフィスビルに移転したいというニーズも出てきています。環境問題を意識したオフィスビルに本社を移転する事は、経営からの「環境問題に全社的に積極的に取り組むんだ」という強いメッセージになるため、時代の流れや社会の動きについても、提案の中に盛り込んでいきたいと思っています。

そうですね。MUFGとして社会課題に対してアクションを起こしていくことも重要ですし、お客さまが社会課題に対して起こすアクションに寄り添っていくことも、今後より一層求められると思います。それに資する提案をしていくこと、サービスのラインナップを用意していくことが必要ですね。

コロナを通じて考えさせられたことは、前例のない事態に遭遇したときに、お客さまのために何ができるのかということ。時代の変化とともに、さまざまな社会課題が生まれてくる中、既存の価値観や常識に囚われない発想で向き合っていくことが重要ですね。