SUSTAINABLE
ACTIONS

事業貢献・取り組み事例
[ サステナアクション ]

社会課題

デジタル化が進む中、
パーソナルデータが個人の意思に関係なく、
企業に収集・利用・販売されている。



THINK

THINK三菱UFJ信託銀行が
考えたこと

  • 長年さまざまなパーソナルデータを適正に管理してきた信託銀行として、社会課題を解決する方法について、議論をスタート。
  • パーソナルデータもお金と同じように大切な資産のひとつ。信託銀行として、託されたパーソナルデータを守りながら、企業活動に適正に活かされる仕組みを構築する。

ACTION三菱UFJ信託銀行が
実現すること

  • 情報銀行サービス“Dprime”を開発、ローンチする。
Dprime

Dprime は、個人の明示的な同意に基づいてお預かりしたパーソナルデータを、弊社による厳正な審査を通過した企業に活用してもらうことで、新しい体験や利用者に合った商品、サービスを受け取ることができる新しい仕組みです。「データを可能性に変えよう」というブランドコンセプトのもと、Dprime 利用者一人ひとりを起点に企業のイノベーションが加速し、日々の生活の質が向上していく世界を目指します。

DISCUSSING
SUSTAINABILITY

経営企画部 デジタル企画室/甲斐 文人

経営企画部
 デジタル企画室
甲斐 文人

It’s my サステナ活動
子供たちの未来のために、あらゆる場面で努力しています
経営企画部 デジタル企画室/畑 茜

経営企画部
 デジタル企画室
畑 茜

It’s my サステナ活動
Dprimeのオファーをきっかけに
環境にやさしい「代替肉」を購入しています

データを可能性に変える。
情報銀行サービス”Dprime”

「資産としてのバーソナルデータを銀行に預ける」

/7月1日に、無事に「情報銀行サービス“Dprime”」の記者発表を終えることができました。Dprimeアンバサダーに中田英寿さんに就任していただき、さまざまなメディアにも取り上げられたので、最近、Dprimeを知っていただいた方も多いかもしれません。

甲斐/7月1日のメディア向け記者発表以降は、企業、個人双方から多数のお問合せをいただいており、反響の大きさを感じています。私自身もDprimeを使っていますが、自分のパーソナルデータを預けることで、自分の興味・関心に合ったさまざまな企業からオファーが届くというのは、新しい体験で楽しいなと思っています。

/オファーを応諾するかどうかは、個人が自由に決められるので、興味のある分野の企業とつながることができますしね。甲斐さん、何か気になるオファーはありましたか。

甲斐/エリーというスタートアップ企業の、「蚕」を原料とした「シルクフード」のオファーが気になりましたね。「シルクフード」という言葉自体を知らなかったのですが、蚕の恵みに着目した新しいサステナブルフードとして注目しています。

/そもそも情報銀行サービス”Dpime”のプロジェクトがスタートしたのは、ちょうど、フィンテックや情報銀行という言葉が出てきた背景に加えて、パーソナルデータの取り扱いが社会問題になりつつあったことが、きっかけでしたよね。

甲斐/そうでしたね。大手IT企業が個人の意思に関係なく、パーソナルデータを利用しているのではないか、といった問題が新聞やテレビで取り上げられるようになりました。パーソナルデータの取り扱いに対する消費者の意識が高まる中、長年さまざまなパーソナルデータを適正に管理してきた信託銀行として、当社でも何か貢献できることがあるのではないか、という機運が高まったことをきっかけに、新しいビジネスを考えようということになったんです。そこから生まれたのが、お金と同じく価値を持つ資産としてのパーソナルデータを銀行が預かる「情報銀行」という発想でした。

/そのときに議論になったのは、パーソナルデータの利活用を推進しつつも、社会問題になりつつあった、企業によるパーソナルデータの取り扱いについては、しっかりと守っていく必要があるという話でしたよね。

甲斐/そうですね、「パーソナルデータの利活用」というと、なにか犯罪に利用されるのではないかとか、欲しくもない商品を売りつけられるのではないか、と思われがちですが、個人が特定されないという前提で、適正に活用することができないかと。

/本人の承諾のもと、匿名形式で個人の特定につながるデータは守りながら、趣味や興味、行動履歴など、さまざまなパーソナルデータを企業に提供することで、マーケティングに活かしてもらうことができます。個人にとっても、データ提供の見返りとして対価を受け取ることができるというだけでなく、自分の知らなかった企業などからさまざまなオファーを受け取ることができるので、新しい自分を発見できたり、企業との新しいつながりが生まれることを期待しています。

「ひとりひとりの情報が、新しい価値を生み出す」

畑 甲斐

/このプロジェクトを立ち上げるにあたって、どんな目的で自分のデータが使われるか、どんな対価ならデータ提供に応じたいかなど、いろいろと調査してみると、パーソナルデータを開示することに対して、高いハードルがあるということがわかりました。

甲斐/そもそも、これまでは、開示するとかしないの前に、知らないうちにデータがとられて、利用されていることが社会問題になっていたわけだから、多くの人が懐疑的になるのはよくわかります。

/そういう過去の体験があるから、正直、データ=何か危ないもの、何か怖いものといった認識のほうが圧倒的に多く、それを変えるきっかけになるものを当社が創っていくことが、社会課題の解決につながるという考え方が根底にあります。だから、まずは、Dprimeを通じて、自分のデータは、自分で管理することが当たり前なんだということを世の中に浸透させていけたらいいな、と思っています。

甲斐/Dprimeのコンセプトは「データを可能性に変える」ですが、さまざまな企業の利用目的をきちんと把握した上で、自らのデータを提供することができるようになれば、自分のデータを社会に役立てたり、もっと言えば、世の中を良くすることができると思っているんですよ。お金を寄付するのと同じで、自分のデータを、自分が応援したい企業に提供することで、より良い商品やサービスが生み出されるようになるといいなと思います。

/Dprimeのような仕組みが、世の中に広くインフラとして根づくようなカタチになれば、データに対する価値観って、がらっと変わってくると思うので、当面はインフラとして浸透させることが目標ですね。

甲斐/インフラとして定着させるという話ですが、それに貢献する可能性がある新たな機能の開発も検討しています。ECサイトで何か購入する場合に、今だとさまざまな企業のECサイト上で、氏名・連絡先・クレジットカード情報などを入力する必要がありますが、Dprimeを通じて購入すれば、事前にDprimeに登録された情報を使うことで、ユーザーが企業に対して氏名・連絡先・クレジットカード情報を渡すことなく、物品の購入が可能になるのではないかと。

/Dprimeの中にEC機能を持つ、という構想ですね。たしかに、Dprimeを通じてオファーを出すことで、自社の商品・サービスを個人ユーザーに認知してもらうことができますし、さらにその商品・サービスの購買までDprime上で一気通貫して完結することが可能になれば、企業側にもメリットがありそうですね。

甲斐/そうですね。企業にとっては、匿名ではありながらも、どんな人が自社のオファーを閲覧し、データを提供し、実際に顧客になったかがわかるので、Dprime自体が市場分析ツールとして役立つことになります。個人にとっても、ECサイトで何かを購入する際に、パーソナルデータを入力することに不安を感じる人も多いはずです。一度Dprimeにパーソナルデータを登録してもらえれば、それぞれの会社のECサイトではパーソナルデータの入力を不要にできる点が個人にとってのメリットになります。

/確かに、個人にとってはいろいろなところに自分のパーソナルデータを開示するストレスや不安はだいぶなくなりそうですね。パーソナルデータを守る、という観点でも、パーソナルデータを活かすという観点でもDprimeが一定の役割を果たせそうです。

甲斐/3年ごとの個人情報保護法の改正や、最近のCookie情報の利用規制といったパーソナルデータの取り扱いを厳しく制限する環境下、個人が自分のパーソナルデータをしっかりと管理して、提供先も自ら決める。ひとりひとりの情報が新たな価値を生み出す時代に少しずつ近づいているように感じているので、その流れをDprimeを通じてより確かなものにしていければと持っています。

「データを預けて、運用する」

畑 甲斐

/このインフラが普及していくポイントは、個人と企業の両方にメリットがあることだと思うんです。個人は、自分のパーソナルデータを守りながら、データを提供して、ある意味、データを運用できるという部分が、すごく面白いし、メリットです。一方で、企業側はそのデータを安心安全に利活用できる。データを価値に変える、運用ができるという意味で、Win-Winだと思っています。

甲斐/自分のデータを、自分で選んだ企業にだけ提供して、対価をもらうという今のスタイルを「運用」にたとえるならば、株式投資に近いですよね。いまのDprimeの仕組みではどの企業に自分の個人データを提供するかを自分自身で決めるので、株式投資で言えば自分で銘柄を選んで投資しているということ。これを進化させて、データの信託という発想に近いんですけど、たとえば三菱UFJ信託銀行に運用権を与えるっていうイメージが実現できないかと思っています。株式投資でも、ぜんぶ自分でやりたいという人もいるし、ある程度、運用方針を指示して任せるというスタイルもあるので。

/確かに。自分で全部決めるやり方と、ある程度任せるやり方とどっちもできたら面白いですね。

甲斐/私のデータをこういう企業に提供して、逆にこういう企業には絶対提供しないでといった方針を最初に決めておいて、あとは三菱UFJ信託銀行にお任せ。それで、たまにアプリを見ると、自分のデータがいろんな企業に提供されて、その対価として何かメリットが貯まっているみたいな。データの運用には興味はあるけど、何か面倒くさいから勝手にやっておいてという人は、結構いるかもしれないので、そういうやり方もひとつのアイデアとしてあると思うんです。

/パーソナルデータの運用となると、安心して任せられる先でないといけないですよね。情報銀行サービスは当社以外でも取り組んでいる企業はありますが、これまで株主さまや企業年金受給者さまの情報など、さまざまな情報をお預かりしてきた当社だからこそ、安心してお任せしてもらえるといいなと思います。

甲斐/もうひとつ、先ほどお話しした「データを信託して運用する」という発想の先に、パーソナルデータを守るという意味で、データ管理の銀行として機能するという方向性もあるんじゃないかと思っています。すでにカストディ、つまり資産管理業務の実績がある信託銀行が、その発展形として、データカストディアンになるイメージです。パーソナルデータの管理という社会課題解決の一助になる可能性を感じています。

/情報銀行サービスのインフラができることで、その先の夢が大きく広がりますね。今後の展開に向けても、まずは、このサービスと考え方をしっかりと社会に浸透させて、ひとりひとりのデータが未来を変えていく一歩を踏み出していきたい思います。

聞き手/執筆 伊田 光寛
(ブランドコミュニケーションデザイナー)

2021年7月20日現在