SUSTAINABLE
ACTIONS

事業貢献・取り組み事例
[ サステナアクション ]

社会課題

気候変動をはじめとした
環境問題に加えて
マイクロファイバーや
マイクロプラスチック汚染など
新たな社会問題が表面化する。



THINK

THINK三菱UFJ信託銀行が
考えたこと

  • 環境・社会課題への意識が高まり、世界の投資家がESG投資への取り組みを進めるにあたり、ESG投資に関連する中立的で実践的なリサーチ情報を求めている。
  • 地球温暖化のような問題に加えて、天然繊維、合成繊維、半合成繊維など全ての繊維から放出されるマイクロファイバーによる環境汚染や健康への懸念など、まだまだ一般に認知されていない問題についても目を向ける必要がある。

ACTION三菱UFJ信託銀行が
実現すること

  • 傘下の資産運用会社 First Sentier Investorsと共同で、ESG投資における協働コミットメントの一環として、MUFGファースト・センティア サステナブル投資研究所を設立。
  • 中立的で実践的なリサーチ情報を提供することで、ESG投資の普及と世界の資本市場の発展に貢献していくとともに、幅広いステークホルダーと社会課題の解決に向けた取り組みを実施し、「安心・豊かな社会」の実現を目指す。

DISCUSSING
SUSTAINABILITY

MUFGファースト・センティア サステナブル投資研究所 所長/ヴェリーナ・カラジョヴァ

MUFGファースト
・センティア
サステナブル投資研究所
所長/
ヴェリーナ・カラジョヴァ

It’s my サステナ活動
オーガニック製品を
選ぶこと、
そして何より、物を極力余計に買わないこと
NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム 会長/荒井 勝

NPO法人
日本サステナブル
投資フォーラム
会長/荒井 勝

It’s my サステナ活動
ファッションは、
自然素材にこだわっています。
アセットマネジメント事業部 責任投資推進室/中村 政之

アセットマネジメント事業部
責任投資推進室/中村 政之
 

It’s my サステナ活動
モノを大切にする

「新たな社会課題を見つけ出し、
解決方法を発信する。」

サステナブルファイナンスが
社会に根付くまで

ヴェリーナ:私は、イギリスのロンドンを拠点とする、MUFGファースト・センティアサステナブル投資研究所の所長を務めています。マイクロプラスチックの問題など、みんなが何となく気にはしているけれど、あまりリサーチされていないものを取り上げて、レポートを作成し、誰でも読めるようにWeb上で無料開放しています。これにより、投資家を含む様々な人々が、このような問題を軽減するのにどのように役立てるかを考えるようになることを願っています。

中村:私は、三菱UFJ信託銀行のアセットマネジメント事業部の責任投資推進室に所属していまして、責任投資に係る方針の策定や協働エンゲージメント(企業価値の向上を目的に、ESG課題について投資家と企業が対話をすること)の推進、国内外のESG関連イニシアチブとの連携を担当しています。

荒井:NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)という団体の会長をやっております。2001年頃からESG投資やサステナブルファイナンスに関わる方々が集まって、日本にいかにしてそれらを広めるかということを議論し、情報を発信しています。主な会員は、三菱UFJ信託銀行、ファースト・センティアをはじめとする国内外の運用会社、投資指数を提供する会社、ESGなどの調査会社、コンサルティング会社などです。

中村:三菱UFJ信託銀行の取り組みを客観的に見てどのように思われますか?

荒井:三菱UFJ信託銀行は、2006年に国連がサポートするPRI(責任投資原則Principles for Responsible Investment)ができたときの最初の署名機関です。非常に長い間、こうした取り組みをされていて、現在は日本でも署名機関数は多いんですが、今の時点で本格的にかなりレベル高く熱心にやっていらっしゃるところを数えると、3〜4社ぐらいかなと考えています。その中の1社だと認識しています。

中村:ありがとうございます。

荒井:それとファースト・センティアのような外資系の運用会社をグループ会社として持っているのは、非常な強みになっていると思います。日本の運用会社がESG投資を海外のレベルで運用するというのはなかなか 難しいのが実状です。その点で、ESG最先端の運用会社を海外に持っていることが大きな強みになっています。

中村:そうですね。日本ではESG投資やサステナビリティの考えがここ数年で急速に浸透しているように思いますが、欧州と比べて規制の整備や取組の状況などにおいて少し遅れている印象があります。その点、グローバルな視点でESG投資の調査を実施しているヴェリーナさんや荒井さんは、欧州の動向や、欧州と日本の違いを、どのようにご覧になっていますか?

ヴェリーナ:議論されていること自体は、日本で今議論されていることと、イギリスで議論されていることは、そんなに変わりません。先日、日本のフォーラムにも参加しましたが、トピック自体は追い付いているというか、日本のESG投資やサステナブルファイナンスは活発化しているように感じています。少し違いがあるとしたら、開示規制に関することですね。今まさに投資家としてこの分野でどう開示していくかという規制がヨーロッパで始まっています。そこが今ヨーロッパにとって一番大きな問題、日本との大きな違いです。新たな規制によって、業界が引っ張られてきたという状況ですね。

荒井:サステナブルファイナンスがかなり高いレベルで進み、投資も非常に増えています。その中で投資家が何をやらなければいけないかを考えたときに、定義づけや規制をある程度作って、きちっとした方向性で気候変動に取り組んでいく流れがあります。

ヴェリーナ:考えるべきなのは、それらの規制を実際にどう導入していくか、という観点です。 サステナブルファイナンスは複雑な領域であり、人々の理解がそれぞれ異なる場合がありえます。 全般的には皆さん前向きに取り組んでいますが、意見や見方の違いにより、気候変動などの重要なトピックに関する行動が結果として遅くなってしまう場合もあります。 欧州は、これらを調和させ、比較的迅速に標準化させましたね。

新たな社会課題を見つけ出し、
発信すること

中村:三菱UFJ信託銀行では、当社の運用資産に与える影響と、社会における重要度という2つの観点から、当社が優先的に取り組むESG課題を特定しています。環境や社会、ガバナンスなど幅広いテーマがある中で、現在当社は、「気候変動」、「人権・ダイバーシティ」、「健康と安全」、「ガバナンス体制」、「情報開示」の5つのESG課題に優先的に取り組んでいます。

荒井:運用会社全体にみられる傾向としては、気候変動はかなり長い間取り組まれている非常に重要な課題であり、2050年に向けてどうするかという最大の課題の一つですが、最近では人権問題やコロナの影響もありますので、企業の労働環境やサプライチェーンでの雇用問題などもあがってきています。また、ヴェリ―ナさんのところで取り組まれているマイクロプラスチックの問題やマイクロファイバーの問題は比較的新しい課題ですが、 重要な課題になりつつあります。

ヴェリーナ:問題を認識して、そこにある事実をオープンにして伝えていくことが、社会課題解決の一歩になると思っています。そのため私たちの研究所のレポートは、マイクロファイバー汚染の全体をカバーしています。まずは汚染の元、それがどこから来るのか、どのようにしてそれが生態系に入ってきてしまうのか、人間の体にはどういう影響が起きているのかを深掘しています。さらに、どのようにして汚染自体を減らすことができるのか、そのためにはあらゆるステークホルダー、政府から投資家まで、どのような人たちがどういうことに取り組めるか、ということをカバーしています。

中村:ちなみに、我々の生活とマイクロファイバー汚染の問題はどのように繋がっているのでしょうか。

ヴェリーナ:衣服やカーペットなどのすべての繊維製品は、使用すると目に見えないくらい細かな微細な繊維(マイクロファイバー)を放出します。たとえば、衣服を洗ったり着たりするときなどです。 マイクロファイバーは化学合成繊維から放出され、もちろん環境に悪影響を与えますが、実は天然由来の繊維からも放出され、例えば染められたり化学処理をされることで、天然繊維からの粒子でさえ長年にわたって環境に残る可能性があります。

荒井:マイクロファイバー汚染は、比較的新しくて、まだあまり一般にも投資家にも知られてない課題ではあります。画期的だと思うのは、 金融機関・運用会社のグループとして、こういう調査会社を独自に持って、第三者による調査をして発信していることです。私もレポートを読みましたが、どのような課題なのかがきちっと整理されている。それもですね、政府や官庁、投資家は何をすべきか、それから当然、企業や各産業団体がどうするべきか。 場合によっては個人もどうしたらいいかということまで、はっきりとレポートの中に書いてあります。こうしたレポートはこれまでなかったので、非常に参考になると思っています。

中村:そうですね。まさに当社も昨年からこのマイクロファイバーのレポートを参考にしながら、グローバルに展開する洗濯機メーカーと対話を行っています。洗濯機にフィルターを取り付けることで、洗濯時に発生するマイクロファイバーの流出を減らすことができれば、マイクロファイバーによる海洋汚染を防止することができます。すでにフランスやイギリスでは洗濯機にフィルターの設置を義務化するという議論が進んでいます。企業には海洋汚染の防止や規制対応の観点から、洗濯機にフィルターを設置することが今後重要になることをお伝えしています。

ヴェリーナ:おっしゃる通り、すでにイギリスでもマイクロファイバーに対応した洗濯機が普通に売っています。特に価格が高い洗濯機に特別な機能として付いているものではありません。だいたいイギリスの洗濯機って200ポンド(3万円)くらいから1,500ポンド(24万円)くらいのレンジで、その平均はおよそ400ポンドくらいですが、そのフィルターが付いた洗濯機は500ポンド程度です。

中村:環境対応が特別なことではなく、当たり前のこととして、メーカーにも、消費者にも浸透しているんですね。

荒井:イギリスのような状況を作るには、まずは気づいてもらうことが大切です。これまでもいろいろな社会課題がありましたが、企業もどういう課題に取り組んで、投資家もどう評価するか、なかなかわからないわけですね。 その中で、こういう社会課題があることを企業に知ってもらい、今後、きちんと取り組んでいかなければいけないと考える企業を増やしていくことが、投資家の役割として非常に重要なポイントだと思います。

サステナブルファイナンスが
創造していく未来

中村:現在取り組みを進めているテーマでいうと、現代奴隷の話ですとか、あとは健康と栄養の課題があります。ある地域では肥満の問題がある一方で、一部の地域では栄養不足の問題に直面しているところもあります。こうした社会課題がビジネスにどのような影響を与えるのか、また、企業にはどのような取組が求められているのか、投資の観点から考えています。また、昨年、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)が発足して、企業や投資家の間で生物多様性や自然資本への関心が高まっているように思います。ESGやサステナビリティ課題というと、これまでは気候変動の問題が世界的に注目されていましたが、ここ最近は生物多様性の問題にも同時に取り組む必要があるという考えが広がってきています。その背景には、気候変動と生物多様性は互いに影響し合うものであり、自然資本や生物多様性の喪失が気候変動に悪影響を与えることがわかってきたという事実があります。また、生物多様性のことを考える上で、我々の生活や社会、経済が豊かな自然環境や生態系の上に成り立っていることも忘れてはいけないポイントだと思います。

荒井:先ほど、中村さんから健康と栄養の話が出てきましたが、実は今、大きなグローバルな会社は、こうした問題に関する意識が非常に高いです。 トップクラスの企業は、昔のように単なる利益を求める経営では成り立たないという認識に間違いなくなっています。ですから、今後の課題はサプライチェーンといいますか、プロダクトチェーンといいますか、取引会社を含めて資源を調達する段階から取り組むことが課題になっています。

ヴェリーナ:社会課題を解決していくには、コスト感覚も大切です。マイクロファイバー汚染を解決するフィルターのコストは、現在では数千円程度です。先ほどもお話ししましたが、イギリスではこれで洗濯機の価格が高くなったという感覚はありません。一方、化学繊維が一切ダメというわけではなく、化学繊維だけど、マイクロファイバー繊維の脱落率が非常に低いものもあります。ただ、そこに値段の差が大きいと広がっていきません。消費者の側も、自然のものだけを100%買うのは難しいかもしれませんが、例えば半分なら可能かもしれない。

中村:コストも含めて社会全体で考えていくことが大切になりますね。

荒井:やはりイギリスなどと比べると、我々日本の一般消費者は意識がまだまだ低いです。たとえば、ようやく日本でもエコバックが浸透しつつあります。しかし、それって、お金を出さないとプラスチックのレジ袋をもらえないよ、となったから広まったようなもので、ここ2年くらいの話ですよね。私が昔ロンドンに出張で行くと、エコバッグをお土産に買ってきてくれってよく言われました。ロンドンのスーパーマーケットに行くと、非常にデザインも良くて、普通に欲しくなるようなエコバッグを売っているんですよ。要するに、エコバッグに詰めなさいっていうことですけど、お土産に買ってきてくれって言われるようなエコバッグを作るという発想は、社会的な意識の違いが大きいですよね。

中村:お二人にお聞きしたいのですが、我々の取り組みを通じて、この先にどのような未来を思い描いていますでしょうか。

荒井:そのままの表現になってしまいますが、ひと言で言うと、サステナブル社会です。どういうことかというと、格差のない、持続可能な社会ということです。現在の我々の世代はもちろん、将来生まれてくる人の世代にとっても、良い地球環境や社会環境を作っていくことが理想ですね。歴史的に振り返ると、1960年代かなと思いますが、地球には限界があって、資源に関しても限界がある、我々が生活するにも限界がある、森林が少なくなってしまったり、二酸化炭素の排出が多くなったりしている中で、地球全体としてのガイアという捉え方を我々はしなければいけないんだという考えが出てきました。その中で、将来世代のために今を生きる我々が負の遺産を残してはいけないという考え方も出てきたんですね。そういう将来や世界に向けて、人間だけではなくて生物も含めて、持続できる環境作りが世界的な目標になっていると思います。

ヴェリーナ:その通りですね。サステナブルな意識をみんなが共有していることは、とても重要だと思います。そのためにも、私たちが、まだ気がついていない社会課題にアンテナを張って、発信していくことが大切な役割だと思っています。

聞き手/執筆 伊田 光寛
(ブランドコミュニケーションデザイナー)

2022年5月26日現在