SUSTAINABLE
ACTIONS

事業貢献・取り組み事例
[ サステナアクション ]

社会課題

相続での家族間の争いによる資産承継面の問題に加え、
長寿社会に伴う認知・判断機能の低下による
資産管理面の問題も増加。



THINK

THINK三菱UFJ信託銀行が
考えたこと

  • 長寿社会を迎え、認知・判断機能の低下に伴い、金融サービスの享受や配偶者・次世代などへの資産承継において制約を受ける可能性がある。
  • 「おひとりさま」などライフスタイルの多様化に対応する新たな相続の形が必要とされている。
  • 大切な人へ資産はもちろん、想いを引き継ぐ環境を整えることが社会全体として必要。

ACTION三菱UFJ信託銀行が
実現すること

  • MUFG相続研究所を新設。「高齢社会における資産管理」「次世代への円滑な資産承継」という社会的課題の解決に対して貢献するため、MUFG相続研究所を新設。資産管理・資産承継領域における高品質かつ実践的な情報提供を中立的な立場で行うことで、高齢者が安心して暮らすことのできる社会の実現を目指す。

DISCUSSING
SUSTAINABILITY

金融財政事情研究会常務理事/沼田 基成

金融財政事情研究会
常務理事/沼田 基成

It's my サステナ活動
好きなものを大事に。
自宅は築95年、
車も26年目。
MUFG相続研究所所長/小谷 亨一

MUFG相続研究所
所長/小谷 亨一

It's my サステナ活動
マイバック、マイ箸、
マイ○○が増えました。
MUFG相続研究所主任研究員/玉置 千裕

MUFG相続研究所
主任研究員/玉置 千裕

It's my サステナ活動
歩くこと。
自転車に乗ること。

相続にしっかりと向き合える
「安心・豊かな社会」を
創っていくこと。

長寿の時代に変化を続ける相続のあり方

沼田:金融財政事情研究会は、金融財政政策および金融機関経営に関する情報の収集・発信、調査研究と経済金融知識の普及・啓蒙を目的として、1950年に大蔵省所管の社団法人として設立されました。今はIoTの技術が劇的に進化を遂げていますが、情報がイノベーションと成長の源泉であることに変わりはありません。インターネットを通じて情報が氾濫する中、皆様にとって真に価値ある情報を、正確かつ迅速にお届けすることが当会の使命だと思っております。

小谷:三菱UFJ信託銀行は、さまざまな社会課題をベースにその解決策に取り組んでいます。その中でも、特に少子高齢化というテーマの中で、いかに円滑な相続を行っていくのかという点が、「安心・豊かな社会」を創っていく上でも、とても大切になると考えています。今の日本は、少子高齢社会に加えて長寿社会にもなってきますので、相続の形態そのものが変わってきています。また生活スタイルの多様性、たとえば「おひとりさま」のようなケースも増えてきました。その中で、どのように円滑な相続を進めていくのかという点について、中立な立場で実務からどうあるべきかを考えていく取り組みが必要ということで、2年前にこのMUFG相続研究所を立ち上げました。

玉置:やはり今は長寿社会になっていますので、そこにいわゆる健康寿命と平均寿命の差が出てきます。円滑な相続を実現するためには、体力や判断能力、いわゆる意思能力が衰えた後も自分の思いが実現できるような財産管理についての考え方も必要になってくると思います。そのあたり、今ある制度面も含めて研究所の中で何か研究、調査できるところはないか、意識して取り組んでいるところです。

沼田:認知・判断機能の低下と相続のテーマは、間違いなく今後、解決すべき社会課題の一つでしょう。当会でも、シンポジウムのお話や共同研究など、大学等から声をかけていただくことがあります。

 

小谷:そうですね。まさに我々も今、慶応義塾大学のお力をお借りし研究を進めているところです。相続では認知症により、意思能力が少し衰えても遺言を書く能力はある程度まで認められます。そのためその遺言能力をどう見極めていくかという研究をしています。

沼田:後見人などの話になる前に、なんとかできないかということですね。

玉置:医療分野の知見を参考に、たとえば医者が患者に投薬する場合などの医療行為に際して、患者本人の理解度や、何をもって判断しているかなど、患者の意思決定能力をチェックする枠組みを遺言に応用できないかと。自身の財産、相続人の状況や遺言内容、配分理由など、自分の意思が反映された内容であることを体系的に確認することで、従来以上に相続における争いを予防し、遺言実現の可能性を高めることを目的として、現在実証実験に入っている段階です。

大切なことは、
相続リテラシーを高めていくこと

小谷:今日は、沼田さんがいらっしゃるので、ぜひお話ししたいテーマがありまして、それは相続リテラシーをこれからどう上げていくのかというお話です。相続は誰にでも必ずやってくるものですが、相続実務の正確な知識を持っていらっしゃる方は少なく、専門家でも少ないのが現状だと思っています。海外ですと、相続教育をやっている国もあります。欧米などは契約文化が浸透しているので慣れているということもあるのかもしれませんが、遺言の利用が多いと言われています。しかしながら日本では利用が少ないことに加え、正しい遺言を自分で書ける方もかなり少ないと思います。

沼田:その前提として、やはり日本では相続がある意味タブー視されてきたように思います。私も父の相続の際に初めて経験したことが沢山ありました。当時はまだ当会に入りたてのころで、何もわからない状態で税理士さんや母に任せていたという状況でした。母の相続のときは、仕事を通じて得た知識もあり、ある程度、こうすればよいということはわかっていましたが、それでも大変でしたね。

小谷:実際、日本での遺言利用は、1〜2割程度ではないかと言われています。相続は必ず経験するものなので、本来は若い世代にも、日本における承継がどのような仕組みになっているか学んでもらいたいと考えています。

沼田:基礎控除が「5000万円+1000万円×法定相続人の数」だった2014年までは、相続税がかかる人の割合、課税件数割合は、5パーセントにも満たなかったはずです。それまでであれば、遺言を書いている人が少ないというのもわかります。ところが、今の基礎控除は当時の4割減。こうなると都内に自宅などがあると一方の親御さんが生きているうちはともかく、2回目の相続の際に確実に相続税の問題が出てきますからね。

小谷:相続は、税法や民法がベースになっていますので、基礎知識があるにこしたことはありません。

沼田:今年度から高校の家庭科で金融教育が必修化されています。その中に本来相続も入れるべきなのでしょうが、やはり若年層ですと遠い未来の話という感じで、相続に関する早期教育は必要でありながら、なかなか切迫感がないというのが、現状ではないでしょうか。

玉置:相続研究所で“終活”に関するアンケートを取ったときに、皆さん、終活はすごく意識されていて、やらなきゃいけないという認識は持っていますけど、始めるタイミングについては、自分が病気になってから具体的に考えるという方が大半でした。本当はお元気なうちに心身ともに健康な状態で、その後の財産などについてどうするか考えていくことが大切なのですが。将来の相続のことも含めて考える必要性について、なるべく早く気づいていただくような仕組みは本当に大切なことであると感じています。

小谷:こうしたアンケートは、親世代だけでなく、子世代にも行っています。親が不安に感じるのは、認知機能が低下したらどうしよう、入院した時に費用負担は大丈夫かなど、子供に迷惑かけないようにと考えていますが、お子さんは親に何かあれば、当然面倒を見ようという気持ちが強くあるので、どちらかと言えば親が亡くなった後のことを心配しています。そのため、財産やいろいろな遺品も含めて整理できるものは整理しておいてほしいと考えています。このあたりの認識の差が大きいことから我々のところには、お子さんから親御さんに相続のことを話したいがどうしたらよいかという相談がよくあります。

沼田:親世代と子世代のギャップという意味では、遺言を作成する際に親の意思だけで書いているのか、お子さんも交えて、お子さんも内容を知っている遺言なのかにより、受け止め方が全く違うと思いますね。子を交えた形で作成した遺言であれば、その通りに遺言を執行しやすいと思いますが、親の意思だけの場合、子はある日突然、親が亡くなったときに遺言を見て、「え?これ、こうなの?」と疑問に思うことが多くなると思います。相続がうまくいくかどうかは、やはり生前のコミュニケーションに大きく左右されると思います。

玉置:実際、我々も遺言執行の現場を経験している中で、お子さんとある程度話した上で遺言を作ったケースもあれば、いろいろな事情があってお子さんには全てを知らせず、一部だけ伝えて遺言を作り、亡くなったときに初めて具体的な内容を知るというケースもあります。どちらのケースも、遺言は、法的な要件を満たす必要がありますので、無味乾燥な条文だけが並んでいるような感じになりますが、遺言者ご自身のお気持ちを残すことができる付言の部分で、どのように自分の気持ちを伝えるのかが円満な相続の鍵になると思います。

小谷:執行時においても、やはり心に響く付言事項の存在は大事であると感じていますね。

玉置:はい、実際、執行の現場で、相続人の方の表情を見ていても、気持ちを伝えるという部分はすごく重要であると実感します。その親子間の生前のコミュニケーションというのも大事ですし、それに加えて、やはり親がどれだけ明確に亡くなった後のことまで考えて、しっかり遺言書のように形として自分の気持ちも含めて残しておくことが大切になります。

今の時代にアンテナを張って、
未来のために価値ある情報を届けていく

沼田:当会の場合、金融界や法曹界向けの活動が多く、事業目的の一つである「経済金融知識の普及啓蒙」活動についても、広く一般の方々向けに直接、というよりも、まずは金融機関やその職員のみなさんへ向けた活動、その活動を介して間接的に一般の方々に啓蒙を行うことのほうが多かったと思います。ただし今後は、一般の方々にも広く、直接的に金融知識の啓蒙ができればと思っています。当会は指定試験機関として、国家検定ファイナンシャル・プランニング技能検定を実施・運営しています。幸いなことに今年から高校の授業に金融教育が入ってきましたので、若い世代にも広く興味を持っていただけるように啓蒙活動を続けていきたいと思っています。

小谷:サステナビリティ検定という、今の時代にマッチした取り組みもスタートされたと伺っています。

沼田:ESG投資やインパクト投資も含めて、サステナビリティと金融は深いつながりがあります。こうした時代に求められるものに対して、スピーディに対応していくことも重要だと考えています。また、ここ数年は、検定試験の受け方も大きく変わりました。新型コロナウイルスの蔓延により、以前のように大きな会場にみんなで集まってというスタイルを見直す必要を迫られたわけです。当会独自試験については、今は個別にPCを使って試験を受けられる体制になっています。そういう意味では、試験科目や出題内容というソフトの面はもちろん、ハード面でも常に時代の変化に機敏に対応し取り組んで行かないといけないですね。

小谷:おっしゃる通りですね。今後の相続を考えると、デジタル化という目線が不可欠になると思っています。いま、国の方でもデジタル公正証書やデジタル遺言の検討を行っています。それを使いこなしていくには、ある程度の相続リテラシーがないと難しいと思っています。そのため、そのベースの知識を誰が利用者に示していくのかという部分が、今後、大きなポイントになってくると思います。

玉置:そうですね。以前、研究所で実施した調査でも、既にネット口座などを利用されている高齢者の方が増えてきているなど、デジタルの活用が着実に進んでいます。そのため、まずはデジタルツールをうまく活用することで、遺言を書くことや資産承継、終活について考えることの心理面のハードルを下げていくことができないかと考えています。さらに相続手続き自体もデジタル化によって、いろいろな手続きが一本化されてスムーズに進んでいくような仕組みができれば、相続という社会問題の解決につながっていくのではと思います。今後も、「安心・豊かな社会」を目指して相続研究所として、いろいろな提言や情報発信を進めていきたいと考えています。

沼田:社会課題の解決という大きな目標に対して、目指す方向は、当会も、相続研究所さんも変わらないと思います。銀行が中立なシンクタンクを作り、目先の利益ではなく、社会課題解決の目線で広く研究や提言を行っていくことは、とても良いことですし、我々も一緒にできることはうまく連携をしながら、取り組んでいきたいと思っています。もっと言えば、たとえば認知症のような大きな共通課題については、各金融機関や大学が別々のアプローチをするのではなく、社会課題解決のために一体化してやっていただけるような体制ができれば、素晴らしいと思いますね。

小谷:ありがとうございます。我々も、いろいろな垣根を超えて、より大きなビジョンを持って社会課題解決に取り組んでいきたいと思います。本日は、ありがとうございました。

聞き手/執筆 伊田 光寛
(ブランドコミュニケーションデザイナー)

2022年8月4日現在