理事会役員の成り手不足や専門家不在の運営など
マンション管理組合を支援
MUFGの新規事業創出プログラム「Spark X」第1号案件
マンション管理組合向け外部管理者事業「PROTHIRD(プロサード)」

私は当社へは2018年にキャリア採用で入社し、5年ほど企業型確定拠出年金(DC)の新規営業に携わっていました。キャリアのターニングポイントになったのは、2022年11月にMUFGが初めて開催したグループ横断のボトムアップ型新規事業創出プログラム「Spark X」で提案したマンション管理組合向け外部管理者事業(現在の事業名は「PROTHIRD(プロサード)」)が特別賞を受賞したことです。
その後、2023年4月にMUFGデジタル戦略統括部に出向し、事業の仮説検証や社内外関係者との交渉・調整などを進めてきました。その後、事業化の目処が立ったことから、2024年6月に三菱UFJ信託銀行に帰任し、法人マーケット統括部 不動産事業室で、事業開発責任者として2025年度のサービス提供開始を目指して準備を進めています。MUFGの中にSpark Xのような一社員の提案を汲み上げる枠組みがあるのは大変ありがたいことだと思っています。自分の想いを社会に発信するチャンスをいただき、北浦さんや山口さんのように一緒に動いてくれる仲間もできました。

私はこの事業の今までにない社会課題解決のアプローチに共感し、社内副業制度で手を挙げ、今は週1回程度、事業の立ち上げ準備に関わっています。このチームの中では広報担当で、マンション購入を検討するお客さま向けに事業内容を紹介する小冊子を作成中です。私にとっては初めての挑戦となり、制作会社の方が話す専門用語の意味を調べるところから始めました。

私は2019年に入社してから不動産管理処分信託のお客さま対応などに従事してきました。PROTHIRDには2023年12月から関わっています。
私は主に事業がスタートした後の実務関係のフローや社内での体制の構築を進めています。
マンションごとに最適な運営をご提案していきたいと考えており、難しいこともありますが、とてもやりがいがあります。
「外部管理者」として管理組合業務をサポートする


PROTHIRDを通じて目指しているのは、分譲マンションの管理に関わる方々が抱える課題の解決です。マンションでは区分所有法に基づいて管理組合を置き、会社の取締役会のような役割に当たる理事会が管理運営を行うことが一般的です。
理事会では、区分所有者が輪番制で理事長、副理事長、会計などを担当します。2〜3か月ごとの理事会や年1回の総会に加えて何千万円、何億円という大きなお金が動く大規模修繕工事など、マンション管理の専門家ではない方が回していくには非常にハードルが高いのが実情です。また、新築マンション価格が高騰している今、購入層の中心となっている共働きのパワーカップルは理事会のために平日の夜や土日のプライベートな時間を費やすのに抵抗を感じるようです。一方、築年数が30〜40年という中古マンションでは所有者の平均年齢も高くなり、役員の成り手不足が顕在化しています。

実際にマンションの理事会に足を運んで区分所有者の皆さまのお話をうかがってみると、成り手不足は本当に深刻で、「次にやってくれる人がいない」と困っている方が大勢いらっしゃいました。

私は、PROTHIRDは少子高齢化のしわ寄せを受ける現役世代をサポートするサービスだと捉えています。不慣れな理事会仕事の束縛から解き放たれて、平日夜や土日の時間をご自身やご家族のために有意義に使っていただくことができます。

PROTHIRDは当社がマンション管理組合と“管理者業務委託契約”を締結し、外部管理者になる仕組みです。そうすることで、管理組合は理事会を設置する必要がなくなり、理事会が行う「意思決定」は当社が代行します。たとえば、排水ポンプが壊れてすぐに修理が必要になった場合、そもそもどの業者に頼めばいいのかという問題が生じます。
そうした時に、当社は相見積もりを取った上で迅速かつ合理的に業者を選定するサポートを行います。また、残念ながら、管理組合の運用資金が着服されたり、工事の費用が水増し請求されたりするケースが後を絶ちません。
当社ではスマートフォンアプリを活用して、管理組合の毎月のお金の動きを確認できる仕組みも検討中です。

当社のような信託銀行が厳格に資金管理を行うことは、区分所有者の皆さまの安心・安全につながるだけでなく、マンションの資産価値を維持したり、向上させたりする側面もあるかと思います。この先PROTHIRDが社会インフラとして浸透することによって、「PROTHIRDが入っているマンションの方が安心して住めるよね」との認識が広まり、将来手放すことになった時に未導入のマンションよりも高く売れるといったメリットが出てくるかもしれません。

マンションの管理組合の報告書は電子化して、アプリで区分所有者の方々が見られるようにしておくことが可能です。
当社が外部管理者となった場合は、区分所有者の方々はスマートフォンアプリを通して組合運営を監視することもできるようになります。

当社が得意とするDX(デジタルトランスフォーメーション)で、そうした業務の「見える化」を進めていけたらと考えています。

たとえば全体アンケートを取る場合も、一軒一軒アンケート用紙を配布したり、区分所有者全員が対面で集まって説明会を開いたりする必要がなくなります。
説明会はオンラインで開催し、当日出席できない方は録画をご覧いただけます。
アンケート自体も投票箱に用紙を入れるのではなく、スマートフォンの画面で賛成か反対かを選ぶ形で、システムで投票の透明性を確保いたします。
当事者である管理組合の皆さまにとっては利便性が大きく向上しますし、管理会社の方にとっても運営が効率化できます。

PROTHIRDは、実は管理会社へのメリットも大きいんです。PROTHIRDを導入したマンションでは、管理会社は理事会のメンバーの方々ではなく、区分所有者からの意見を反映し執行する立場にある我々とやり取りする形になるので意思決定がスピーディーになります。
さらに、総会を平日の夜や土日開催ではなく平日日中の開催としたり、対面でなくオンラインとすれば、管理会社の働き方改革にもつながるのではないかと思います。
スタートアップと協業で「マンションの課題解決」を加速


PROTHIRDの事業は構想の段階から外部のパートナー企業に入っていただいています。株式会社ペネトレイト(本社:東京都渋谷区)という創業4年のスタートアップ企業です。
社長は大手マンション管理会社で10年以上働いていた方で、我々が管理会社さまの考え方や共通認識を理解する手助けをしていただいています。システム開発についても株式会社SP(本社:東京都港区)という創業10年に満たない企業と協業しています。
最初から大掛かりなプロジェクトにするのではなく、小さく生んでニーズがあるところをしっかり固め、そこが軌道に乗ったら少しずつ大きくしていければと考えています。

スタートアップ企業の方々との協業で感じたのは、皆さん非常に視野が広くて思考回路が柔軟なことです。サステナビリティに貢献していくサービスを構築していく上ではこうした企業との助け合いが不可欠と考えるようになりました。引き続き、外部の方々と協力しながら頑張っていきたいと思います。

事業としては1戸あたり毎月数千円の費用をサブスク的にいただくスタイルで、2028年度までに累計1万戸の契約達成を目指しています。
2024年6月にはプレスリリースを発表し、おかげさまで想像を上回る反響がありました。当初の事業プランでは新築マンションに絞ってデベロッパーさまに営業をかけていくことを考えていたのですが、管理会社さまや理事長さまご自身から直接お声がけいただくケースもあり、既存のマンションも対象に加えました。すでに新築マンション2件の“導入内定”もいただいています。

PROTHIRDは他の金融機関が参入していない事業領域でもあるので、新しい仕組みをゼロから創り出すことに大変やりがいを感じています。
ご利用を検討してくださる皆さまにお伝えしたいのは、法令を遵守した運営になっておりますので、安心してお任せいただけます、ということです。
役員の成り手不足だけでなく、新聞報道に出てくるようなマンションの多くの課題を解決していけるようなビジネスに育てていけたらと考えています。

当社がこの分野に参入することで、これまでになかった課題解決のアプローチやサービスが生まれる可能性もあります。たとえば、管理組合には億単位の修繕積立金を普通預金に寝かせっ放しのところがある一方で、目先の資金が足りないところもあります。前者の管理組合から資金調達して後者に融資するような仕組みを当社が作れれば、双方のお悩みを一気に解消することができます。区分所有者の方がマンションの相続を考えた時に当社がお手伝いさせていただくことも可能です。まずは事業を軌道に乗せて、将来的にはそうした周辺事業にも取り組んでいけたらと思っております。