取締役社長 長島 巌 取締役社長 長島 巌

取締役社長 長島 巌

最初に、いま、新たにサステナビリティ活動への強い思いを宣言されるに至った理由を伺えますか?

長島 サステナビリティ活動は、企業や社員がお客さまや関係者はもちろんのこと、それを超えて地球環境や地域社会のために、気候変動や少子高齢化のような社会課題を解決すべく行動するものです。特に最近では、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックや地球温暖化による弊害、自然災害などが多発する中で、企業も利益を追求するだけでなく、社会や自然、人権などに配慮しつつ“企業市民”として活動することが求められています。そうした機運が高まる中で、サステナビリティという考えを社内外で共有して進めていかなければならないと考えたからです。

“「安心・豊かな社会」を創り出す信託銀行”をキャッチフレーズに掲げています。「安心」「豊かな」社会の創出のために、具体的にどんなことをされていますか?

長島 「安心・豊かな社会」というキャッチフレーズを使い始めたのは3年ほど前からです。私たち信託銀行は、お客さまから財産を託され、それをお客さまがお決めになった目的に沿って、お客さまご自身や大切な方のために運用・管理しています。ですから、そうした仕組みを活用して、みなさまの暮らしをより「安心・豊かな」ものにするためにお役に立つことが使命であると考えています。「安心」の分野であれば、資産や老後、相続などに不安を抱える方々に対して、相続を円滑化するお手伝いをしたり、高齢化に対応する金融商品をご用意したりしています。「豊かな」については、財産だけでなく健康や精神的な豊かさをサポートするような商品、サービスが作れないものか、検討しているところです。

「安心・豊かな社会」を創り出す信託銀行として、これまでと変わらず守っていくべきもの、逆に、新たに変えていくことが必要なものについてはどうお考えでしょう。

長島 幸い、当社にはお客さまから寄せていただいている信頼や信用というものがあります。これは、先輩方が何十年という時間をかけて築いてきたアセット(資産)ですから、大切に守っていきたいと思います。とはいえ、それだけでは足りないので、私はそこに時代に即した「商品開発力」やデジタル化などを進めていく「革新性」をプラスしていけたらと考えています。

長島巌

サステナビリティ活動を行う中で、既に複数の実績、実例が生まれていると思います。具体例を挙げていただけますか。

長島 社会課題は無数にありますが、まずは当社でやれることをしっかりやっていくのが重要と考えており、既にさまざまな分野で多くの商品やサービスが生まれています。例えば、国内では今高齢化による認知症対策が大きな課題となっています。そこで、当社では代理出金機能付信託「つかえて安心」を開発し、認知機能が低下した際は、あらかじめご指定いただいたお子さまなどが代わりにお金を引き出せる仕組みを作りました。世界的な潮流となっている温室効果ガス削減対策としては、太陽光発電施設に出資する機関投資家向けの「再生可能エネルギー投資ファンド」を組成し、クリーンエネルギー投資をお手伝いしています。

サステナビリティ活動の観点からは、どのような企業文化や組織風土を醸成していく必要がありますか。そのためにどんなアプローチをお考えですか。

長島 当社には実直な社員が多く、お客さまから仕事ぶりを褒めていただくことが多々あります。それは大変喜ばしいことだと思います。しかし、新しい商品やサービスを開発するには、そこに「感受性」や、技術を含めた「革新性」を加えていく必要があります。そのためのアプローチはいくつかありますが、一つは人財育成プログラムの充実だと考えています。今、プログラムの作成に取り組んでいるところです。もう一つ、当社には新規事業を立ち上げる専門部署があり、既に多くのプロダクトを創出しています。今は毎年社員から新規事業案を募って発表会を行い、優秀者を表彰しています。そして本人が希望すればその専門部署に異動し、自分の手で商品化することが可能です。こうした流れの中で社内に新しい会社も誕生しており、当該事業の発案者が社長に就任しました。本気で取り組みたいと思えば、会社だって作れてしまう環境が整備されているのです。始まったばかりで、まだ一部ではありますが。

サステナビリティ活動や具現化したアクションについては、社内外に浸透させていくことが大切だと考えます。こうした情報発信については、どのようにお考えでしょうか。

長島 むしろ重要なのは、事業を通して継続的に活動すること、そして商品を通して実際に皆さまのお役に立つことではないかと考えています。そうした前提の下で、我々のウェブサイトをご覧になった方が当社の思いに共感して相談を持ち掛けてくださったり、「一緒にやりましょう」と声を掛けてくださったりしたら、大変ありがたいことです。

サステナビリティ活動については、どれくらいのスケジュール感で、何をどこまで実現していくと想定していますか。

長島 サステナビリティ活動は、永遠に続けていくものと考えています。例えば、ある社会課題を解決する商品をいつまでに完成させるというような短期的な目標があったとしても、それは決してゴールではありません。時代の変化とともに常に新しい課題が生まれます。そうした社会課題にアンテナを張って、「安心・豊かな社会」を創り出す活動を続けていきます。会社が存在する限り、恒久的に続けるのが、サステナビリティ活動です。ここには強いこだわりがありますね。地域のコミュニティであれば「みんなが気持ちよく暮らせるようにずっと家の周りをきれいにしておこう」となりますよね。地球規模でも未来を見据えながらみんなが暮らしやすい環境を作っていく必要があり、企業市民として我々ができることを継続して地道にやっていくしかないと考えています。

長島巌

サステナビリティ活動を行っていく上で、難しい判断を強いられるケースもあるかと思います。

長島 例えば、目先の収益と社会的な意義の間で迷いが生じるようなケースはどうしたらいいのか、とよく質問されます。「この商品を販売したら我が社は儲かるけれど、お客さまが損をしてしまう」といった場合は、お客さまの利益を優先しなければなりません。お客さまを裏切るようなことがあったら、大切な信頼を失ってしまいます。お客さまの利益、社会の利益を考えて行動することで、結果的に企業の利益にもつながる。社員には、そうした「三方良し」を考えてほしいと話しています。お客さまも、社員も、会社もハッピーになる解決策を探っていく必要があります。

今までの話を実現するために社員の方も長島社長のお考えを理解し、推進していく必要があります。社員の方に期待することを教えてください。

長島 サステナビリティ活動は、これまで我々が行ってきたフィデューシャリー・デューティ(FD)の取り組みとよく似ています。FDでは、お客さま本位のサービスをしましょう、お客さまを欺いたり誤った情報を伝えたりしないようしっかり勉強しましょう、という活動を行ってきました。FDが社員版の「世の中の役に立ちましょう」運動であるとしたら、サステナビリティ活動はその企業版という見方もできます。根っこは同じなのですね。ただし、企業版とはいえ、実務を担うのは社員ですから、ひとりひとりが自覚を持って知識を得るとか、商品やサービスを具現化できるように努力していく必要があります。

サステナビリティ活動を行う上で、解決すべき社会課題をどうやって見つけていったらいいのでしょうか。

長島 一番重要なのがいかにして社会課題を見つけるかということですが、実は、これが大変難しい。もちろん、新聞を読むなどして情報を集めることも必要でしょう。ただ、課題のリサーチという点で、一番情報を持っているのは日々お客さまと接している現場だと考えています。ですから、社員によるお客さまとのコミュニケーションは大変重要です。現場の社員は、相続やお孫さんのこととか、お客さまのお悩みや相談をしっかり吸い上げて、本部や私に伝えてほしいですね。

最後に、日常生活の中で個人的に行っているサステナビリティ活動についてお伺いさせてください。

長島 たいしたことはしていません。道路にゴミが落ちていたら拾うとか、ゴミは分別して捨てるとか、お年寄りが重そうな荷物を抱えて駅の階段を上がっているのを見かけたらお手伝いするとか、道端に具合が悪そうな方がいたら「大丈夫ですか」と声をかけるとか、ただ、コロナ禍で外出の機会が少なくなり、お声がけする機会も減ってしまったのが残念です。あとは社会活動を行っている団体に寄付をさせていただくとか。ちなみに当社では長年、社員ほぼ全員がお金を出して社会貢献や福祉活動をされている法人や団体に寄付をしています。大変良い活動だと思います。

本日は、たくさんのお話をありがとうございました。

聞き手 伊田 光寛
(ブランドコミュニケーションデザイナー)
執筆 森田 聡子
(ライター)