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社長インタビュー

PRESIDENT INTERVIEW

「安心・豊かな社会」を 創造するということ

取締役社長 長島 巌
社長に就任されて3年半、三菱UFJ信託銀行のサステナビリティ活動の推進に尽力してこられました。これまでの活動を通してどんな手応えを感じていらっしゃいますか?
企業の存在意義は、単に経済活動の担い手というだけでなく、社会課題を解決したり、困っている人を助けたりすることにあるように思います。それは人間も同じです。

そこで当社では「『安心・豊かな社会』を創り出す信託銀行」をキャッチフレーズに、様々な取り組みを行ってきました。具体的には、社内に「サステナビリティ委員会」を立ち上げ、重要なサステナビリティ課題の特定と定期的な見直し、社内における重要課題解決のための進捗レビューを実施しています。

サステナビリティ活動を推進するにあたっては、2022年度に国内の全拠点に計300名の「サステナビリティプロモーター」を配置し、プロモーター自身がナレーターを務める動画を配信して知識や事例を共有化しています。役員に対しても外部から講師を招いて定期的に勉強会を開催するなど、全従業員に意識の浸透を図ってきました。
社会課題を起点として商品やサービスを創り出していくことで「安心・豊かな社会」を実現していくという取り組みが浸透していく中で、どんなアクションが生まれ、新商品、新サービスが誕生したのでしょうか?
新しいところでは、7月25日から省エネ性能の高い不動産の取得資金を資金使途とするJ-REIT(国内上場不動産投資信託)向けの貸付債権を高格付の短期運用商品に仕立てた「グリーン J-REIT トラスト(実績配当型合同運用指定金銭信託)」の取り扱いを始めました。
日本のCO2総排出量の3分の1を不動産分野が占めていると言われており、J-REITでも省エネやCO2排出を抑える効果のあるグリーンビルディングを増やす取り組みが増えつつあります。

近年、グリーン投資への関心が急速に高まっている中で、事業等の余剰資金を原資に短期で安定的な運用を行いたい法人のお客さまのニーズに応えながら、グリーンビルディングの増加に貢献していけたらと考えています。

身近な社会課題では、少子高齢化が進行する中での高齢者の独居問題に着目しました。65歳以上の高齢者世帯では一人暮らしの割合が半数近くに上り、自分だけでは身の回りのことができない、葬儀や相続手続きをしてくれる人がいないといった悩みを抱える独居高齢者が増えています。

そこで当社では、日常生活の見守りやご逝去後の葬儀や遺品処分などを行う高齢者サポート事業者と提携することにより、事業者が提供するサービスと当社が提供する「信託」を活用した金銭の管理、財産の承継などのサービスを一体で提供する「おひとりさまライフサービス」をスタートしました。
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社会課題起点の商品やサービスでは、評価を行う際も、どれだけその社会課題の解決に貢献したかを「見える化」していくことが重要になるかと思います。専門用語では「社会的インパクトKPI(重要業績評価指標)」と言いますが、それぞれのアクションの社会課題解決への貢献度をどのように「見える化」し、評価していくのかを教えてください。
サステナビリティ活動の道筋を「見える化」する仕組みとして、当社ではロジックモデルを導入しています。ロジックモデルとは、組織や事業がどのような道筋で目標を達成しようとしているかの関係性や戦略を示したもので、「事業の設計図」に例えられます。

このロジックモデルで示された、社会や受益者の方々に与えた変化や効果を測定する指標として「社会的インパクトKPI」を設定しました。新商品や新サービスについても、このKPIの達成状況を定期的に確認していくことで社会問題解決への貢献度を評価しています。

とはいえ、現状に満足しているわけではありません。本来のKPIは、例えば社会課題が病気や貧困を減らすというものなら、病気の人を何人減らした、困窮している人を何人救ったという具体性を伴ったものであるべきです。

しかし、一部の製薬会社さんなどを除けば、そこまできめ細かにKPIを運用しているところはまだありません。クリアしなければならない課題は山ほどありますが、当社としても最終ゴールはその水準を目指していきたいと考えています。
サステナビリティ活動が進捗する中で、お客さまとのコミュニケーション、あるいは社内のコミュニケーションにおいて、アンテナを張る重要性をより強く感じていらっしゃるのではないでしょうか?
おっしゃる通りです。ただ、常にアンテナを張り巡らせ、お客さまの声に向き合うことが重要だと周知徹底しても、一人ひとりの社員がそれを正しく理解し社会課題の解決につなげていくのは容易なことではありません。

「おひとりさまライフサービス」など社会課題解決に向けたサービスが「結果」として出てきているので、問題意識の共有化はある程度できていると思うのですが、社会課題を探し出す力がどれくらい向上したかと言われると、正直よく分からない面もあります。

そうした中で、他の社員がどのように社会課題解決に向けた取り組みを実践しているのかを知ることは、自分もやってみようという気持ちを新たにしたり、具体的な実践例を知ることで自分の部署でもできないかと考えたりするきっかけになります。

そこで、新設したインターナルコミュニケーション室で、社内ポータルやアプリを通して、そうした事例を社内に広く伝える活動を行っています。
サステナビリティ活動が進捗する中で、ES(従業員満足度)の分野に力を入れている印象があります。長島社長は社内に向けた動画も毎月配信していらっしゃいますよね?
動画が社員から親近感を持ってもらえるきっかけになっていたら、うれしいですね。サステナビリティ活動において会社はあくまで「ハコ」に過ぎず、実際に現場でお客さまに接するのは社員です。

社員がそれぞれの部署で自分のなすべきことに注力し、なおかつ、現場から上がってきた報告が滞りなく社内で共有化されるような、働きやすい、風通しのいい職場環境をつくっていくことが私たち経営陣の役割です。

在宅勤務をしやすくしたり、社外副業の対象範囲を拡大したり、社員の働き方やスキルアップ、キャリアアップに役立つ施策を積極的に行ってきましたが、それが最終的にはお客さまのお役に立てるサービスや、大きな社会問題の解決につながっていくのではないかと考えています。
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今後も「安心・豊かな社会」を創るサステナビリティ活動を推進していく上で、さらに必要と思っていらっしゃることや達成したいことがありましたら、お聞かせください。
サステナビリティ活動では、すぐに結果が出るわけではありません。世の中のお役に立てる商品やサービスをコツコツ地道に提供し続けること。それが一番重要だと考えています。

現状、こうした取り組みはある程度成功しています。だからこそ、流れを止めないためには個々の社員が当社のサステナビリティ活動に参画しているのだという当事者意識を持ち、世の中の人が困っていることはないか、当社がお手伝いできる社会課題はないか、どんどん探しにいってほしい。

そうした意識改革が必要です。また、対外的にはまだ当社の取り組みについてご存じない方も少なくないと思います。発信力をより強化して、新しいお客さまや、一緒に取り組んでくださるパートナー企業さまを増やしていけたらいいですね。
最後に、長島社長の最近の個人的なサステナビリティ活動についてもお伺いできたらと思います。
社会貢献は個人的にも非常に関心の高い分野です。大それたことがやりたいわけではなく、地域の小さな活動からジョインしていけたらと考えています。先日、当社が関わっている山梨県富士河口湖町の「ピーターラビット™未来へつなぐ森」での森林整備活動に参加しました。

その際驚いたのが、Z世代の社員の社会貢献への意識の高さです。参加した人数も多かったですし、現地でも熱心にボランティア作業に汗を流していました。その様子を見て、当社としてももっと社員参加型の社会貢献プロジェクトを仕掛けていけたらと思った次第です。これも今後の課題ですね。
今後の展開が楽しみです。本日は充実したお話をありがとうございました。