LEADER’S
VOICE

個人のお客さまに向けての
サステナ活動について

常務執行役員 リテール副部門長
新井 進一

新井進一

社会課題と向き合うために必要なこと、
それは、お客さまとの接点を
見直すことでした。
ひとりひとりが“街中の主治医”として、
寄り添うことから始めました。

三菱UFJ信託銀行のサステナ活動は、社会課題を解決していくことで、「安心・豊かな社会」を創ることをテーマに掲げています。個人のお客さま向けの領域では、どのような社会課題がテーマになるのでしょうか。

まず「少子高齢化」という大きな社会課題の中で、やはり「高齢化社会」への対応が大きなテーマになるでしょうね。一般的に信託銀行というと「遺言」や「不動産」の印象が強いかもしれませんが、実際には、大多数のお客さまに影響がある「資産運用」がベースになると考えています。寿命の考え方にも、平均寿命と健康寿命がありますが、いずれにしても寿命が伸びるということは、お客さまの財産を増やしながら、それをどう守り続けるかがより重要になります。たとえば、いま60歳の方が、そのままの生活を続けると、貯蓄や年金だけだと80歳で資産が尽きてしまうという試算が出たとします。80歳の方の平均余命を調べてみると90歳まで生きるというデータがあるわけで、80歳からの10年間をどのように生活するのか計画しておく必要が出てきます。対策としては、毎年使うお金を減らすこともあるでしょうし、生活資金として必要な金額を確保するために何%かの運用で資産を増やしながら、90歳まで同じ生活水準を維持していくという方法もあるでしょう。こうしたライフプランシミュレーションや資産運用のポートフォリオ提案を組み合わせたコンサルティング提案を、私たちがお客さまひとりひとりにワンストップで提供していくことが、社会全体としてのサステナブルにつながることになると考えています。

重要課題=事業を通じて解決していく社会課題とアクション
高齢化、認知症の社会問題化に伴い、資産管理、価値観の多様化、不確実性の増大における不安に対して、お客さまの大切な財産を「増やす」「守る」「使う」「継承する」ことができる安心感と、多様なソリューションをワンストップで提供するパートナーであること。

ひとりひとりのお客さまへの提案が、社会全体のサステナブルにつながるというお話ですが、具体的にお客さまの対応にどんな変化が必要になるのでしょうか。

4年前、私がリテール企画推進部長に就任した当初「お客さまの総資産を踏まえたコンサルティング提案をしよう」という話をしました。先ほどは、資金の運用の話をしましたが、それ以外に不動産やその他も含めたトータルなアセット、つまりお客さまのご資産全体と向き合ってコンサルティング提案をしようと。長いので仮に「総資産コンサル」とここでは言っておきます。「総資産コンサル」では、相続や不動産など個別の課題だけをみていくのではなく、お客さまのご資産全体を俯瞰してみることで、全体の資産のバランスを踏まえた提案が可能となります。そこには、お子さまやお孫さまへの承継も視野に入れた、お客さまにより最適な提案をするということが含まれます。これを言いはじめたのは、おそらく金融機関の中でも早いほうだと自負しているのですが、いま現在は、どの金融機関も「総資産コンサル」を標榜しているのではないでしょうか。その中でも、三菱UFJ信託銀行のオリジナリティは、ワンストップの総資産コンサルティングだと考えています。このワンストップという言葉も、実はいろんな銀行が使っていると思いますが、投資商品の話も、相続の話も、ワンストップでお受けしますと言いつつ、それぞれ別の担当者が出てくるケースがほとんど。我々が言うワンストップは、一人の担当者がワンストップで対応するという意味。要は縦割りではなく、担当者が自分で全部やれるということを目指したわけです。僕らが子供の頃は、風邪を引いても、腹痛でも、扁桃腺が腫れても、家の近所の先生のところに行って、相談したものです。病気だけでなく、赤ちゃんの様子や子育ての悩みなんかも。「街中の主治医」がいることの安心感は、金融の世界にも共通するものだと思います。これまで続けてきたワンストップの総資産コンサルを、街中の主治医のように世代を超えて信頼される存在として、さらに深めていくことが、当社のサステナ活動の指針でもある「安心・豊かな社会」を創り出す原動力になると思っています。
また、コロナ禍を経験し、世の中全体のデジタル化が一気に進んでいます。これまでシニアの方を中心に、ご自身のライフプランやご資産に関するご相談は対面でなければならないという方がほとんどで、当社も店舗での接客を前提としていましたが、なかなか出かけるのが難しい時代となる中、デジタル技術の進歩も相まって、ウェブ相談のニーズがシニアの方にも広がりつつあります。信託銀行の商品は説明が必要なものが多いため、ネットのみで取引を完結させるのはお客さまにとって不安が大きい一方、当社であればウェブを通じて一人の担当者がトータルにお話することも可能だと考えています。この特徴を活かすためにも、今後お客さまとのコミュニケーションの方法をさらに多様化させていくことも「安心・豊かな社会」を創り出すことにつながるのではないでしょうか。

ワンストップ

「街中の主治医」のようなコンセプトを実現していくためには、意識改革や制度改革なども必要だったのではないでしょうか。

そうですね。一人でコンサルティングができるように投資商品、相続、不動産などの主力商品についてマスターするわけですから、通常業務に加えて、かなり勉強する時間が必要になります。当然、現場からは、負担が大きいという声があったのも事実です。ただ、その一方で、以前は投資商品について相談する中で、親しくなったお客さまから、実は相続について悩んでいる、あなたに相談をしたいという話をいただいても、他の担当者につなぐことしかできず、すごい悔しい思いをしていたけれど、自分自身ですべての商品のご提案をするようにになって、やっと自分がやりたいこと、お客さまが求めていることができるようになったという声も届きました。ワンストップでのご提案スタイルが、単純に上からこうしなさい、という話ではなく、お客さまの要望と一致していたという部分が大きかったと思います。現段階で「街中の主治医」として十分なレベルに達している担当者の数は、ざっくり5割に欠けるぐらいです。この数字が7割、8割になったときに、胸を張って、全社が掲げるサステナ活動に恥じない取り組みができていると言えるようになる。さきほど申し上げたように、我々以外に一人の担当者が様々な相談をワンストップでお受けできている金融機関は多くはないはずなので、ここはプライド持ってやっていこうと伝えたいですね。あと2年かかるか、5年かかるかわかりませんが、あとは時間だけの問題で、この理念さえ、旗を下ろすことなくしっかり続けていけば、必ずゴールに向かっていけると確信しています。そこは、強い信念を持ってやっていきたいですね。

新井進一

街中の主治医というコンセプトに加えて、社会課題解決型の商品開発やサービス開発は、どう進められているのでしょうか。

街中の主治医として、お客さまと対話していると、既存の処方箋では解決できない問題も見えてきます。たとえば、お客さまの認知能力が危うくなったときに、お金を引き出したいといわれても、認知能力に疑義がある場合は、引き出しができないという問題がありました。たとえこのような問題に気がついたとしても、そこで声を上げなければ、会社として解決の糸口にはたどり着けません。最初の一歩は、こういう課題があって、こんな商品を作らないといけないと誰かが声をあげて、じゃあ、それをやってみようというキッカケになるんですね。この認知症に関する問題を解決する商品として、代理出金機能付信託「つかえて安心」という商品が生まれました。ちなみに、このアイデアを提案したのは、梅田支店で、そのときの支店長は私です(笑)。サステナ活動の視点から社会課題を捉えて、アクションにつなげるためには、まず声をあげることが大切で、私たち管理職も現場からアイデアをどんどん出せる環境づくりを進めています。昨年から社として10名単位のタウンホールミーティングを週イチで開催してきているんですが、その中で、私は必ず何かあったら、電話でも、メールでもいいし、直接、言ってきてほしいという話をしています。もちろん、私に言えば、なんでも実現するわけではないですが、ノーと言われることもひとつの気づきだと思っているので。支店と本部、現場と管理職の壁を取り払い、コミュニケーションしやすい組織風土や仕組みを創っていくことで、サステナ活動を活性化したいですね。

フロー

※出典:「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業九州大学二宮教授)による速報値より一部編集・抜粋

最後に、サステナ活動のゴールイメージついて教えてください。

顧客満足度や投資信託の預かり残高などの指標もありますが、まずは先ほどもお話しした「街中の主治医」レベルの担当者に全員の担当をもっていきたい。さきほどは、8割と言いましたが、あくまでも目標は全員。これについては、当社独自の認定基準があって、投資商品、相続、不動産の3業務に加えて、一定の資格等があれば、まずはTFP(トラスト・ファイナンシャルプランナー)に任命されます。加えて、もう一段レベルアップするとTWM(トラスト・ウェルスマネージャー)として認められます。ここまで来ると信託のセールスとしては、最高峰と言えます。このTFPとTWMの比率を8割まで高めることができれば、街中の主治医というコンセプトが完成形に近づきますし、最終的には全員がそのレベルに到達する。加えてここまでは専門性のお話ばかりしましたが、その根底には信託銀行員としての高い規範意識や人としての信頼性があるわけです。そして、それらの結果として、我々の元に多くの情報が集まり、その解決策をひとりひとりが考え、行動することで、ひとつひとつ個別の課題を解決していく。その結果として、大きな社会課題を解決し、その先に、「安心・豊かな社会」を見出すことができると信じています。

It's my サステナ活動

地球にも、健康にも、優しい休日のウォーキング。

新井進一

聞き手/執筆 伊田 光寛
(ブランドコミュニケーションデザイナー)

2021年5月17日現在