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リーダーズボイス

LEADERS VOICES

個人のお客さまに

向けてのサステナ活動について

取締役 常務執行役員 リテール部門長
旦 一哉

お客さまの声を大切に、社会課題解決に向けた新商品、
サービスを開発しています。
お客さまには「販売」ではなく“人生を豊かにする「ご提案」”
により、価値を提供し続けます。

三菱UFJ信託銀行のサステナビリティ活動の推進は、社会課題を解決していくことで、「安心・豊かな社会」を創ることをテーマに掲げています。個人のお客さま向けのリテール部門では、どのような社会課題がテーマになってくるのでしょうか?
個人のお客さまの相続や資産承継のお手伝いをさせていただいている信託銀行のリテール部門として、真っ先に向き合わなければならない社会課題は「少子高齢化」です。

当社のリテール部門では、目指す姿を「『資産運用・管理・承継』に資する信託ソリューションの提供拡大により超高齢社会の課題解決に貢献し、お客さまとご家族の安心・豊かな人生を支えるチカラとなる」としています。

加えて、昨今はインフレが本格化しマイナス金利政策の転換で市中金利も上昇してきていますから、貯蓄から投資へのシフトも視野に入れ、長期分散運用など、お客さまの資産拡大に向けたご提案を積極化していきたいですね。

重要課題

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事業を通じて解決していく
社会課題とアクション

後期高齢者数増加、資産寿命の延命課題、認知症問題、個家族化、大相続時代に伴う資産管理等を中心とした社会課題に対して、「資産運用・管理・承継」に資する信託ソリューションの提供拡大により、お客さまとご家族の安心・豊かな人生を支えるチカラとなる
少子高齢化という課題に対し、リテール部門としてどのような解決策を打ち出していくのでしょうか?具体的な商品やサービス、あるいはお客さまとの向き合い方など、課題解決に向けてどのような価値を提供していきたいとお考えになっているのか、お教えください。
少子高齢化への対応という視点で、軸になるのは「遺言信託」ではないかと思います。
遺言信託は、お客さまの遺言書の作成と保管、執行などを代行させていただくサービスです。遺言書の作成に向けてお客さまのご資産やご家族の状況、ご家族への想いなどを詳しく教えていただくことになりますので、リテールの担当者からすれば、お客さまへの理解を深めるチャンスであると同時に、お客さまからそれだけのご信頼を頂戴するに足る人間性や知見があるか、己を見つめ直す機会にもなります。

私たちは、お客さまとやり取りをさせていただく中で、お客さまが抱えている課題やご要望は何かを共有し、その実現に向けて遺言を作成していきます。
その意味では遺言は亡くなる直前に用意する遺書とは異なり、作成することで先々の憂いをなくし、充実した毎日を送って長生きしていただくための1つの方法です。お客さまからご信頼があって、初めて成り立つ業務であり、そのための人財育成には力を入れてきました。近年はその成果が出てきてかなり手応えを感じていますが、一方で、依然として課題も残っています。

大切なのは、遺言信託をきっかけに次のご提案へとつなげていくことです。
作りっぱなし、プロダクトアウト(商品ありきの販売戦略)ではダメなんです。販売というと、自分たちのために商品を売っている的なイメージがありますよね。
私たちがなすべきことはむしろ、お客さまの課題を正しく認識し、その課題を解決するために当社の商品・サービスやコンサルティング力を総動員してご提案を差し上げ続けることです。
その部分は道半ばであり、まだまだやれる余地があるように感じています。
なるほど、遺言信託は「お客さまからの信頼の証」なのですね。そして、「販売」でなく「提案」することで、お客さまに価値を提供していくわけですね。少子高齢化への対応という意味で、三菱UFJ信託銀行のリテール部門ならではの取り組みや、そこから生み出された具体的なサービスや商品がありましたらお教えください。
1つは、代理出金機能付信託「つかえて安心」ですね。
お客さまが認知症で判断能力が低下したり、長期に渡って入院された際に備え、あらかじめ指定しておいたご家族などの代理人が、ご本人の代わりに信託口座からお金を引き出せる商品です。
お子さまなどがご本人に代わり信託口座からお金の引き出しをされるケースも多いようですが、その方の手続き負担が大きくなったり、他のごきょうだいとの間で疑心暗鬼が生じたりする懸念もあります。
その点、「つかえて安心」は、スマートフォンの専用アプリを使って支払いのレシートなどを撮影していただくことで簡単に手続きができることに加え、他のごきょうだいにもその内容が通知される仕組みを備えているので、安心感があります。

また、一人暮らしの高齢者の増加が社会課題となる中で、2023年10月には「おひとりさまライフサービス」をリリースしました。
一人暮らしの高齢者の方は相続や資産管理などの財産に関するお悩みに加え、日常生活の不安、介護施設入居時の身元保証、葬儀、遺品整理などの死後事務に関するお悩みまで多岐にわたります。
「おひとりさまライフサービス」では、このようなお悩みに対して、生活支援、身元保証、死後事務などのサービスを提供する高齢者サポート事業者と提携し、事業者が提供するサービスと当社が提供する「信託」を活用した金銭の管理、財産の承継などのサービスをワンストップでご提供しています。
本サービスのリリース後、一人暮らしの高齢者の方だけではなく、ご家族がいても高齢で頼めない、ご多忙で迷惑をかけたくないとお考えの方からも多くお問い合わせを頂いており、幅広い方にご利用いただけるサービスであると思います。
少子高齢化という課題に対しては、多角的な視点からバラエティに富んだ商品、サービスをご提供できているのではないかと思います。
背景には、本部だけで商品開発を行うのではなく、「現場で直接、お客さまと接する営業担当者の声」を重視してきたことが挙げられます。現在もいろいろな領域で「営業店参加型プロジェクト」が進行していて、そこでチームを組んで、新しい商品を考えようといった取り組みを行っています。

現場の声、イコール「お客さまの声」ですから、謙虚に耳を傾けないとなりません。
とりわけ昨今は税制など外部環境の変化が大きく、デジタル化も進んでいますから、そこに対応しながら、本当にお客さまのためになる商品を作っていく必要があります。

対面・リモート・デジタルという3つのチャネルをうまく融合させた体制作り

デジタル化という言葉が出てきましたが、金融業界では今急速にデジタル化が進んでいます。こうした非対面取引はお客さまの利便性を高める一方で、お客さまに寄り添うといった観点では、対面ならではの安心感や細やかな気配りに欠けるデメリットもあるように思います。その辺りをどうお考えですか?
そこは難しいですね。デジタル化には今取り組んでおかないと、時代に置いて行かれてしまいます。
ただ、対面取引とデジタルなどの非対面取引は、うまく棲み分けができるのではないかと考えています。

資産承継のような領域ですと、お客さまお一人でなく配偶者の方、お子さま、ごきょうだいなど多くの方々の想いを受け止めなければなりませんから、担当者が入ってご相談を承るなど細かいところまで心配りしていく必要があります。
一方で、デジタルにはデジタルのメリットがあり、リモートでお取引してくださるお客さまも一定数いらっしゃるんですね。

当社ではリモートの相談窓口として「MUFGマイカウンター」というユニークな取り組みを行っています。画面を通して担当者とリアルなコミュニケーションがとれるサービスで、HPから前回面談した担当者を指名予約できる機能を導入したりして、対面で得られるのと同様の安心感や、対面では得られない利便性を感じてもらえるよう工夫しています。定期預金や投資信託、一部の信託商品などのお手続きにつきましても、当社の担当者が書類を作成し、お客さまに画面上でご確認いただいた上で、ワンストップでお申し込みいただけるので大変便利です。窓口同様、当日付けでのお申し込みも可能です。

5年後、10年後には、対面・リモート・デジタルという3つのチャネルをうまく融合させた体制作りができたらと考えています。リモートやインターネットバンキングの機能が充実していけば、必ずしも物理的に近くなくても「相談しやすい金融機関」と認識していただき、お取引を始めてくださる可能性もありますから、新規のお客さまとのタッチポイントになる期待もあります。
今後もサステナビリティ活動を推進していく上で、5年後、10年後の「安心・豊かな社会」について、どんなイメージを持っていらっしゃいますか?
今の社会は変動要因が多く、将来的には社会課題自体が大きく変わってしまう可能性もあります。
そうした中で、信託の役割として確実に残るのは「資産の承継・管理」ではないかと考えています。個人のお客さまの場合、人生100年時代ですから遺言信託で遺言をご用意された後も相続が発生するまで長い時間があります。その間、資産をどう活用するかも重要になってきます。
例えば、事業オーナーさまに対しては親族内承継、第三者へのM&Aを含め、次世代へのバトンタッチをスムーズに行っていくお手伝いをすることが第一ですが、お客さまご自身が豊かに生きるためのご提案も欠かせないと思っています。

こうした観点から、「資産を守って、つないで、増やす。そして、使う」というところまで含めた包括的なご提案ができるようなコンサルティング、商品、サービスがご提供できるようになっていると良いですね。
旦部門長は信託銀行での32年のキャリアのうち20年超がリテールの営業担当者という、自称「営業現場経験が一番長い部門長」でいらっしゃいます。最後に、ご自身の経験を活かしながら、リテールの現場をどのように変えていきたいか、お伺いできたらと思います。
私ごとですが、支店に勤務していた30歳の頃、70代の女性のお客さまを担当したことがありました。最初は一般的な相続のご相談から始まり、いろいろなお話を伺う中で、納税資金を確保するために不動産を売却したり、相続税対策として生命保険を活用したりといったアドバイスをさせていただきました。
また、お子さまたちにご自分の想いを残したいということで、遺言信託も作成されました。担当者としての立場はわきまえておりましたが、私自身がそのお客さまに対して自分の祖母のような親しみを感じていたのも事実です。

10年ほどして本部で勤務していた頃、その女性のお子さまと名乗る方から突然お電話をいただきました。「先日母が亡くなったのですが、亡くなる直前に『旦さんという人に大変お世話になったから、ひと言お礼を伝えてほしい』と言われ、お電話しました」。
お話を聞いて、思わず心と体が震えました。一生懸命サポートさせていただいた私の想いが、お客さまご自身にも届いていたことを知り、リテールという仕事のやりがいを噛み締めた経験として、この時のことは今でも鮮烈に記憶に残っています。

私は現職になって、行く先々の会議で「各自がウェルビーイングを実現してほしい」と話しています。ウェルビーイングという言葉にはいろいろな捉え方があると思いますが、私の解釈では「やりがいを持って楽しく働いている」状態のことです。
リテールの一番のやりがいとは、私自身が体験したように、お客さまに喜んでいただけることではないでしょうか。仕事ですからつらいこともあるでしょうが、やりがいや成長実感は明日への最高の活力になります。

私自身の経験を伝えながら、現場の声もしっかり聞いて変えるべきところは変える。そして、より多くのお客さまのお役に立てる商品やサービスがご提供できるよう、現場としっかりコミュニケーションを取っていきたいと思います。

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