三菱UFJ信託芸術文化財団インタビュー

「オペラおよびクラシック音楽活動」への 支援で日本文化の向上発展に寄与する

公益財団法人三菱UFJ信託芸術文化財団常務理事事務局長の堤正彦さんに、
財団の思いや活動に関するインタビューを行いました。
財団の概要
三菱UFJ信託芸術文化財団は、1987年12月に当時の三菱信託銀行の創立60周年を記念して財団法人として設立されました。その後2007年4月に三菱UFJ信託芸術文化財団に名称変更し、2010年4月に現在の公益財団法人に移行しています。当財団は、音楽芸術を中心に芸術文化活動への支援(助成)を行っています。

資金面での支援を通じ
音楽芸術の発展に貢献する

当財団は、オペラやクラシック音楽など芸術文化活動への支援を通じて、より多くの方々が芸術文化活動へ参加できる機会を増やし、それによって我が国の文化向上に寄与することを目的としています。具体的には、プロの団体が実施するオペラやクラシック音楽の公演に対する助成活動を中心に事業を行っています。

オペラ公演への助成を行っている財団はあまり多くないのですが、オペラは、音楽や歌唱だけでなく、舞台美術や踊りなども含めた総合芸術と言われており、その芸術性は非常に高いと認められています。ヨーロッパを中心に発展してきましたが、日本でも全国的にかなりのオペラ公演が行われています。

芸術性の高いオペラですが、舞台制作や衣装など公演実施にかなりの費用が必要になるため、資金面のご苦労をされている団体が多いです。そこで当財団は、資金面を少しでも支援し、音楽芸術活動の維持・発展に微力ながら貢献したいと考えています。

好不況にかかわらず
安定的な支援を行う

当財団設立以来の助成実績は、2023年3月末現在で、延べ1,800件強、金額にして約17億5,000万円となっています。1年間に助成する件数は、50件〜60件で、総額で3,000万円程度です。1件当たりの助成金額は多くはないですが、これまで30年 以上にわたり、好不況にかかわらず毎年安定的に助成活動を行ってきました。

また、助成事業の一環として、上記とは別に前年度に助成した公演の中から、優れた公演に対し、「三菱UFJ信託音楽賞」の贈呈を行っています。芸術性の特に優れた公演に「三菱UFJ信託音楽賞」を、優れた公演に対し「同奨励賞」を差し上げています。音楽賞の実績累計は、2023年3月末現在で、延べ64件、賞金(助成金)総額1億4,000万円となっています。

これらの助成活動を長く行うことができているのは、当財団の出捐者であり、毎年当財団宛に寄付を行ってくれている三菱UFJ信託銀行のサポートの他、財団の役員や選考委員、関係者の皆さまのおかげであると感謝しております。

コロナ禍での対応

2020年度から2021年度にかけては新型コロナウイルス感染拡大の大きな影響があり、助成することを決定していた公演が中止になったり、延期になったりしました。
具体的には2020年度と2021年度の助成について、約1/3の公演が中止や翌年度・翌々年度に延期となりました。
また、海外から来日する予定だった指揮者や歌手、演奏者が来日できなくなり、当初予定していた内容を変更する公演も多数ありました。

コロナ禍では助成先の団体は公演ができないため大変な苦労をされていました。
そこで当財団では支援が必要と判断し、理事会での決定を経て、公演が中止になった場合でも、かかった費用分の助成金をお支払いすることとしました。

これまでは公演が中止になった場合には助成金の支払いはしていませんでしたが、コロナ禍では、多くの団体が準備をしたにもかかわらず公演が中止となる事態が続出したため規程を変更し対応しました。また、助成公演の延期や公演内容の変更についてもできる限り柔軟に対応し、公演が行えるようバックアップしました。

「オペラやクラシック音楽」の観客の
すそ野を拡げるお手伝い

オペラやクラシック音楽業界の課題として、「初めての方や若い方に公演に足を運んでもらい、観客のすそ野をより一層拡げること」があると思います。オペラやクラシック音楽は少し敷居が高いと思われがちですが、そんなことはありません。当財団が助成している公演の主催団体も、初めてでも内容がわかるよう公演の前に簡単な説明をしたり、若い人たちにはチケット代金を通常より安く設定したりする等、様々な工夫をされています。

私自身も、当財団に来て初めてオペラ公演を観ました。当初は服装を気にしたり、周りを気にしながら緊張して観ていましたが、慣れてくると公演そのものの内容に集中できるようになり、素晴らしい公演を観ると深い感動を覚えるようになりました。

当財団としましても公演費用の一部を助成することがチケット代金の水準を少しでも抑えることに繋がり、結果として、観客のすそ野を拡げることができれば嬉しい限りです。
今後も引き続きできる限り長く助成活動を続け、オペラやクラシック音楽等の音楽芸術の発展に寄与・貢献していきたいと思います。

三菱UFJ信託芸術文化財団の助成先の声

公益財団法人 神奈川芸術文化財団
概要
芸術文化の創造と普及を神奈川県の県立文化施設の運営と一体的に行うことにより、多くの神奈川県民に身近で質の高い芸術鑑賞の機会を提供するとともに、神奈川から新たな文化芸術を創造・発信することを目的として1993年10月に設立された。
以来、音楽、演劇、舞踊、現代美術を中心とした芸術文化の創造と普及につとめ、
積極的な事業展開を図り、全国的にも高い評価を得ている。現在、神奈川県民ホール、KAAT神奈川芸術劇場、神奈川県立音楽堂の3館を指定管理者として管理運営している。

三菱UFJ信託音楽賞受賞歴
第20回三菱UFJ信託音楽賞
(ワーグナー作曲 歌劇「タンホイザー」 /2011年度公演)
第31回三菱UFJ信託音楽賞
(フィリップ・グラス作曲 オペラ「浜辺のアインシュタイン」/2022年度公演)

同財団より
当財団では、「創造に挑む」「感動を分かち合う」「つねに考える」「未来につなぐ」という4つのミッションを掲げ、事業に取り組んでおります。
自分たちのこれまでの価値観をも揺さぶるような作品の創造に挑むことと、時代を越えて愛されてきた音楽作品等に接する感動を多くの方々と分かち合うこと。
そのいずれをも大切にしながら、多様な人々に向け、若い方には初めての体験を、シニアの方は新たな世界との出会いを、私どもの事業を通して経験していただきたいと思います。
当財団の芸術総監督の一柳慧(2022年逝去)は、総合芸術に対し前向きであり、「ジャンルの壁にとらわれず、自由な発想を持つように」と常々言っておりました。
その方針の下、私たちは、過去にとらわれず、未来に向かって新しいものを創っていかなくては、と思っています。次の時代に向けて、「トライアルなことをやり続ける」という気概をもって、活動していきたいと考えております。
こうした活動を続けていくためにも、多くの関係者のご支援が必要です。
三菱UFJ信託芸術文化財団様には1994年からご支援いただいておりますが、引き続き私たちの活動を見守っていただければと思っています。
公益財団法人 東京交響楽団
概要
1946年東宝交響楽団として創立。
文部大臣賞をはじめとした日本の主要な音楽賞の多くを受賞。
新国立劇場のレギュラーオーケストラとして毎年オペラ・バレエ公演を担当している。
ウィーン楽友協会をはじめ海外公演も数多い。
ITへの取組みも積極的で、2020年ニコニコ生放送での無観客演奏会ライブ配信は約20万人が視聴した。
22年には史上最多45カメラによる《第九》を配信し注目を集めた。
「音楽の友」誌「コンサート・ベストテン」では2022年に《サロメ》が第2位、23年には《エレクトラ》が第1位に選出された。

三菱UFJ信託音楽賞受賞歴
第20回三菱UFJ信託音楽賞 奨励賞
(リヒャルト・シュトラウス作曲 歌劇「サロメ」 演奏会形式/2022年度公演)

同楽団より
音楽監督ジョナサン・ノットとともに、2017年より3年がかりで取り組んだ「モーツァルト 演奏会形式オペラシリーズ」に続き、2022年から「R.シュトラウス コンサートオペラシリーズ」をスタートしました。
第1弾《サロメ》(2022年)、そして第2弾《エレクトラ》(2023年)は大変好評をいただき、様々なメディアで第1位に選出され、非常に高い評価をいただきました。
三菱UFJ信託芸術文化財団さまには、以前からご支援をいただいています。
室内楽のように相互に聴き合い一体感を作り出す音楽性や企画力、そしてチャレンジングな姿勢を評価していただいていると考えております。
東京交響楽団は、これからもみなさまの期待を超えるような音楽体験をお届けし続けてまいります。
公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
概要
1911年創立で、日本で最も古い歴史と伝統を誇るオーケストラである。約160名のメンバーがおり、シンフォニーオーケストラと劇場オーケストラの両機能を併せ持っている。
日本で一番多くのオペラ演奏をしているオーケストラであり、芸術祭大賞、芸術祭優秀賞をはじめ数々の音楽賞を受賞している。
新国立劇場のレギュラーオーケストラとしても数多くのオペラ・バレエ公演の演奏を行っている。
自主公演と依頼公演を併せて年間400超の演奏会数はウィーンフィルに次ぐものである。

三菱UFJ信託音楽賞受賞歴
第20回三菱UFJ信託音楽賞 奨励賞
(ヴェルディ作曲 歌劇「ファルスタッフ」 演奏会形式、第976回サントリー定期シリーズ/2022年度公演)

同楽団より
私たちは、日本で最初にオーケストラの形を取り入れた楽団です。
日本の西洋音楽は、昔はオーケストラが主流でしたが、途中からオペラが演奏されるようになり、当楽団も古くからオペラの演奏を行っています。
これまでの日本の芸術文化は、日本経済に支えられているところがありました。
戦後の高度成長は非常に速いスピードで加速しましたが、その後の経済の減速で芸術文化も大きな影響を受けています。
そうした中で、今なお日本の芸術文化の支えとなっているのは、三菱UFJ信託芸術文化財団をはじめとする皆さまのお力添えの継続だと思います。
これからの社会はグローバル化が進んでいき、様々な音楽や文化が広がっていくと思いますが、私たちはこれからも芸術としてのクラシック音楽を続けていき、日本の芸術文化に貢献し続けていきたいと考えています。
事務局長のインタビューは2023年11月に実施いたしました。所属・肩書は当時のものです。
助成先のインタビューは2023年9月に実施いたしました。