「経営の健全化のための計画」

3.責任ある経営体制の確立のための方策

(1)金融機関の社会性・公共性を踏まえた経営理念

イ.経営理念

 弊社は、「国民生活に直結した信託銀行として、国民の要望に応え、わが国経済の発展に寄与すること(設立趣旨書)」を目指して、昭和34年に設立され、経営理念として、「お客さまのニーズに的確におこたえし、お客さまに支持される信託銀行」を掲げ、設立以来、一貫してお客さま第一の経営姿勢を堅持しております。

 従来より、財務管理業務(年金、証券代行、証券管理・運用、不動産等)に特色をもち、堅実な社風を有する専業信託銀行として、わが国金融界における役割を着実に高めるよう鋭意努めております。

 また、金融仲介機能を十分発揮することが銀行の社会的使命であると認識し、厳正な審査の下、法人及び個人のお客様への安定的な資金供給に務めております。

 さらに、「高い社会性、公共性が求められる銀行にとって、信用こそが経営の原点である」との考えに立ち、社内の管理体制の充実を図るとともに、あらゆる機会を通じて、社会の公器たる銀行の使命を、職員一人ひとりに徹底しております。



ロ.リーガル・コンプライアンスの体制および現状

 近時の金融自由化の急速な進展と市場原理の適用範囲の拡大に対応し、法令等の遵守と社会的責任の遂行を徹底するために、内部管理・リスク管理(法令等の遵守体制を含む)の企画・推進を担う独立の統轄部署として、平成9年11月に業務管理部を設置しました。

 この体制のもと、以下の具体的施策を通じて、より公正で透明な経営と業務の運営の確保を図っております。

1) 法令等の遵守体制の整備・強化

(ア)法令等の遵守責任者等の任命(平成10年1月)
 すべての本部・営業店に「法令等の遵守責任者」等を任命し、業務管理部を中心とした全社的な体制を整備しております。

(イ)法令等の遵守に係る照会・相談制度
 法令等の遵守を全社的なリスク管理と認識し、業務運営上の問題について適切な判断を下すため、法令等の遵守に係る照会・相談について、専用の照会票を用いることを制度化しております。

(ウ)文書審査体制の整備(平成10年11月)
 社内外に対し配付、掲載、契約の締結等を行うために作成する文書について、その内容等の事前審査を行う「文書審査規定」を制定、施行しました。

2) 外部チェックの導入等

(ア)監査役会の体制強化(平成10年6月)
 社外監査役として、法律・会計の専門家を招聘し、リーガル・コンプライアンスのチェック体制を強化しております。

(イ)自己査定、不良債権の償却等処理にかかる外部監査の導入
 自己査定、および自己査定結果をもとに行う不良債権等の償却等の処理にかかる監査法人監査を平成9年度中間決算期より実施しております。

(ウ)市場リスク管理部門への外部監査導入
 BISマーケットリスク規制に対応する内部モデルについて、監査法人による監査を実施し、平成10年度よりこのモデルを使用しております。

(エ)海外支店における外部監査の充実
 海外支店に監査法人による業務監査を導入しております。

3) 倫理基準の策定・強化等

(ア)「信託業務を行う者の服務規程」等の制定(平成10年1月)
 顧客との高度な信頼関係に基づく信託業務の適正な運営に資するため、平成9年11月「信託業務を行う者の服務規程」を制定し、平成10年1月より施行しました。

(イ)「職員必携」の制定(平成7年8月)
 「職員必携」は全職員に配布しており、研修等を通じ遵法精神の徹底に活用しております。制定後も適宜改定を行い、その内容を充実させております。

(ウ)倫理規定の制定
 全銀協の「社会的責任に関する委員会」の議論等を踏まえ、業務の健全かつ適切な運営により社会の信頼の維持・向上を図るため、役職員の行動規範として、平成10年5月、法令等の遵守、社会正義の実践等をうたった倫理規定を制定し、直ちに施行しました。


(2)経営の意思決定プロセスと相互牽制体制

 弊社においては、権限と責任の明確化という観点から、各部署の職務分掌および各機関の決裁権限を、職制規定および決裁権限基準書において明確に定めております。

 個別の意思決定においても、その重要性等に応じ、代表取締役で構成する「常務会」や組織横断的な「委員会」等における審議を経たうえで、「取締役会」以下の各決裁機関において決裁することを定めるなど、意思決定プロセスにおける透明性の確保および相互牽制機能の強化を図っております。

 また、原則として、すべての本部各部室について、代表取締役を担当役員として任命し、業務執行統轄の任に当たらせることによって、責任ある経営体制の確立に努めております。なお、担当役員の任命に際しては、検査・監査部門の独立性に特に留意しております。

 さらに、弊社においては、コーポレートガバナンス強化の観点から、平成11年6月に執行役員制度を導入いたします。執行役員制度を導入することにより、「戦略決定機関」「業務執行の監督機関」としての取締役会のミッションを明確化し、これらの機能の強化を図るとともに、執行役員が「取締役会で決定された戦略の実行(業務執行)」に専念することによって、戦略実行の徹底およびスピード・アップを図ります。

経営諸会議および委員会の実施状況は以下のとおりです。

(図表8-1)経営諸会議の実施状況
名称 議長 構成メンバー 担当部署 開催頻度 目的・討議内容
取締役会 会長 ・取締役
・監査役
秘書室 月1回 ・代表取締役の選任
・支配人その他の重要な使用人の選任および解任
・重要な財産の処分および譲受
・支店その他重要な組織の設置、変更および廃止 等
監査役会 常任監査役 ・監査役 監査役室 月1回 ・会計監査人の選任等に関する議案の同意 等
常務会 社長 ・代表取締役
・常任監査役
総合企画部 随時
(113回)
・経営全般に関する事項
役員部長会 ・本部・本店勤務の代表取締役
・常任監査役
・本部部室長
総合企画部 月2回 ・業務上必要な情報の交換
・役付取締役と本部各部室長との意見交換
・役付取締役からの指示事項伝達
総合部長会 ・本部部室長 総合企画部 月1回 ・情報連絡および意見交換
部店長会 ・取締役
・監査役
・本部部室長
・営業店長
総合企画部 毎期1回 ・本部方針の徹底、意見交換

(図表8-2)委員会の実施状況
名称 委員長 構成メンバー 担当部署 開催頻度 目的・討議内容
ALM・リス
ク管理委員会
社長 ・社長が委嘱する役付取締役
・総合企画部長
・調査部長
・市場管理部長
・営業店統轄部長
・法人業務推進部長
・企業金融部長
・市場運用部長
・委員長が随時指名する部長
総合企画部 毎期2回 ・銀行、貸付信託、合同運用指定金銭信託の各勘定の効率的運用調達のための金利予測に関する事項
・金利予測等に基づいた、業務の推進に関する基本的事項
・資金業務の収益およびリスク管理に係わる基本的事項
・その他委員長または副委員長が審議を必要と認める事項
投融資委員会 社長が委
嘱する役
付取締役
・社長が委嘱する役付取締役
・審査第1部長
・企業金融部長
・総合企画部長
・委員長が随時指名する部長
審査第1部 月1回 ・1件50億円を超える与信案件
・1件5億円を超える政策投資の取得および処分
・信用格付け6〜10の先に対する与信案件および政策投資案件のうち特に重要なもの
・国際部所管の新規与信案件
・その他委員長または副委員長が必要と認めた事項
金利審議委員
社長が委
嘱する役
付取締役
・社長が委嘱する役付取締役
・総合企画部長
・委員長が随時指名する部長
総合企画部 随時
(15回)
・貸付信託、合同運用指定金銭信託等の配当率、買取割引額等に関する事項
・長期貸出最優遇金利、短期貸出標準金利に関する事項
・その他委員長または副委員長が必要と認めた事項
システム化委
員会
社長が委
嘱する役
付取締役
・社長が委嘱する役付取締役
・総合企画部長
・システム部長
・委員長が随時指名する部長
システム部 毎期1回 ・長期および年次のシステム化計画に関する事項
・重要なシステム開発に関する事項
・その他委員長または副委員長が必要と認めた事項
2000年問題
対応委員会
社長が委
嘱する役
付取締役
・社長が委嘱する役付取締役
・総合企画部長
・広報室長
・総務部長
・業務管理部長
・業務企画部長
・システム部長
・企業金融部長
・国際部長
・委員長が随時指名する部長
総合企画部
システム部
月1回 ・コンピュータ2000年問題対応の推進に係わる事項 ・その他委員長または副委員長が必要と認めた事項
関連会社委員
社長が委
嘱する役
付取締役
・社長が委嘱する役付取締役
・審議対象会社の業務関連部の担当役付取締役
・関連事業部長
・総合企画部長
・業務関連部の部長
・委員長が随時指名する部長
関連事業部 随時
(25回)
・関連会社の新設に関する事項 ・関連会社の合併および解散に関する事項
・関連会社の増資および減資に関する事項
・関連会社の経営計画および重要な営業活動に関する事項
・関連会社の年度予算および決算に関する事項
・関連会社の資産の健全性に関する事項
・その他委員長または副委員長が審議を必要と認める事項

(図表8-3)委員会の実施状況
名称 委員長 構成メンバー 担当部署 開催頻度 目的・討議内容
受託資産運用
第1委員会
社長が委
嘱する役
付取締役
・社長が委嘱する役付取締役
・証券企画部長
・受託資産運用第1部長
・投資企画部長
・証券運用部長
・外国証券運用部長
・委員長が随時指名する部長
投資企画部 月1回 ・信託財産の資産配分等、運用方針に関する基本的事項
・重要な投資対象国および投資対象通貨の選定に関する事項
・投資不適格銘柄の選定基準の決定に関する事項
・投資不適格銘柄の選定に関する事項のうち重要なもの
・その他委員長または副委員長が必要と認めた事項
受託資産運用
第2委員会
社長が委
嘱する役
付取締役
・社長が委嘱する役付取締役
・証券企画部長
・受託資産運用第2部長
・個人資産運用管理部長
・投資企画部長
・証券運用部長
・外国証券運用部長
・委員長が随時指名する部長
投資企画部 月1回 ・信託財産の資産配分等、運用方針に関する基本的事項
・重要な投資対象国および投資対象通貨の選定に関する事項
・投資不適格銘柄の選定基準の決定に関する事項
・投資不適格銘柄の選定に関する事項のうち重要なもの
・その他委員長または副委員長が必要と認めた事項
金基金運用
委員会
社長が委
嘱する役
付取締役
・社長が委嘱する役付取締役
・投資企画部長
・証券運用部長
・外国証券運用部長
・年金企画部長
・年金運用部長
・委員長が随時指名する部長
投資企画部 月1回 ・信託財産の資産配分等、運用方針に関する基本的事項
・重要な投資対象国および投資対象通貨の選定に関する事項
・投資不適格銘柄の選定基準の決定に関する事項
・投資不適格銘柄の選定に関する事項のうち重要なもの
・その他委員長または副委員長が必要と認めた事項
歩積両建預金
自粛委員会
審査第1
部担当役員
・業務管理部長
・検査部長
・営業店統轄部長
・審査第1部長
審査第1部 毎期2回 ・歩積両建預金自粛措置の徹底に関する諸施策の立案
・店別臨店指導結果の報告聴取および結果に基づく改善勧告
・営業店業績表彰制度に基づく表彰店選考に際し、業績表彰制度運営部長会に対する勧告
・その他自粛に関する事項
同和教育推進
委員会
人事担当
役員
・人事部長
・総務部長
・人事部企画グループリーダー
人事部 随時(2回) ・同和問題に対する職員の理解と認識を深めるため研修計画の策定および推進、適正な採用選考システム
・人事管理体制等の確立および指導監督
・関連行政機関との連絡
土地関連貸出
適正化委員会
社長が委
嘱する役
付取締役
・業務管理部長
・審査第1部長
・審査第2部長
・不動産部長
審査第1部 月1回 ・土地関連貸出の実態把握および適正化措置の企画立案
・案件審査に当り適正化の観点から審査第1部長が委員会での検討を必要と認めた案件の審議
・その他委員長または委員が審議を必要と認めた事項


(図表9)担当業務別役員一覧 担当業務別役員一覧


(3)自主的・積極的なディスクロ−ジャ−

 弊社は、お客様や株主等の投資家の皆様に対して、経営の状況等を適切にご理解いただくために、法令等に定められた開示事項にとどまらず、様々な機会や媒体を活用し、積極的な情報開示に努めております。

 決算短信・有価証券報告書等においては、適正な開示に努めるとともに、ディスクロージャー誌においては、トピックス等の掲載により、分り易さに心掛けるとともに、情報の網羅性にも配慮しております。また、インターネットにホームページを開設することにより、広く情報を開示するよう努めております。


根拠法等 対 象 頻度、実施時期 等
○印刷物


  営業報告書等 計算書類 商 法§281 株 主 年2回(決算(含中間期)毎)
  ディスクロージャー誌 銀行法§21 公 衆 年1回(営業年度毎)
  有価証券(半期)報告書 証取法§24 投資家 年2回(決算(含中間期)毎)
  決算短信 取引所規程 投資家 年2回(決算(含中間期)毎)
  アニュアルレポート 任 意 公 衆 年1回(営業年度毎)
  営業のご報告 任 意 株 主 年2回(決算(含中間期)毎)
○インターネット 任 意 公 衆 9/1〜ホームページ開設
○IR活動


  説明会 任 意 投資家 国内(9/11〜) 海外(9/12〜)
  個別説明 任 意 アナリスト等 随時

(IR活動について)

 弊社では、経営状況等の実態をより的確にご理解いただくよう、アナリスト・投資家向け説明会の開催や、個別説明等も積極的に行い、ディスクロージャーに係る種々の要望に応えております。

 特に、平成9年11月、信託銀行としては初めて、投資家向け会社説明会を開催し、以後半期毎に、社長自らが弊社の戦略を説明する投資家向け会社説明会を、東京、欧州(ロンドン・スコットランド・チューリッヒ等)、米国(ニューヨーク・ボストン等)で開催しております。説明会においては、投資家の方々がその時々で最も関心のあると思われる点につき、説明を行うよう努めております。

 また、弊社では、平成9年度中間決算から自己査定に基づく償却・引当を実施いたしましたが、平成9年11月の説明会では、自己査定状況につき、破綻懸念先以下について説明を行い、平成10年5月には説明資料にて破綻懸念先以下の債務者区分、III分類・IV分類債権額の開示を行いました。また、資金業務・財管各部門別の収益の開示も行っております。さらに、平成10年11月には、連結決算制度の拡充を織込んで、関連会社等についての開示を行うとともに、いわゆる金融機能早期健全化法の趣旨に則り、不良債権の開示を実施しております。

 このようなIR活動の結果、平成10年度からスタートした日本証券アナリスト協会による銀行ディスクロージャーランキングでは、弊社は総合で第2位、大手19行ベースでは第1位と高い評価を得ております。

 今後も、投資家の皆様に、弊社をより正しく理解していただく上で必要な情報につきましては、積極的に開示を行っていく方針としております。また、本計画でも開示しておりますとおり、部門別採算等の管理会計の計数につきましても広く開示して行きたいと考えております。


(4)従来の経営責任についての考え方

 前記(1)の通り、弊社は、設立以来、堅実な経営を旨として業務を運営してまいりましたが、バブル期後半の平成2年度下期ごろより、他行比劣勢であった貸出の量的拡大を企図して貸出残高を増加させ、結果として、不動産会社、ノンバンク等向け貸出を中心に、多額の不良債権を抱えるに至ったことは遺憾であります。

 当時の行動を振り返りますと、1) 資金使途の社会的・公共的意義のチェック、2) 適正な業種別貸出ポートフォリオの維持、3) 物的担保に偏りすぎた貸出チェック等に反省すべき点があったと考えております。

 平成4年度以降、弊社は、再び同じ轍を踏まぬよう厳正な経営を維持してゆくことを固く決意し、できるだけ早期に不良債権の処理を終え、資産の健全化を図ることが、金融機関としての社会的責任・使命を果たすための基盤であるとの認識に立ち、徹底した経営の合理化・効率化を実施してまいりました。

 具体的には、平成4年10月、経営効率化委員会(第1次)を設置し、全社的な経営効率化への取り組みをスタートさせ、その後も「新中期経営計画(平成6年度〜8年度)」「長期経営計画2000(平成9年度〜11年度)」と言った全社レベルの経営方針として経営効率化を最優先課題の一つに掲げ、推進してまいりました。

 この間、役員賞与のカット・役員報酬の減額等の施策を継続的に実施してきたほか、平成10年12月より、役員報酬の一段の減額を実施するなど、経営責任の明確化を図っております。

 今後は、執行役員制度および事業部制の導入により、取締役会および取締役の経営責任ならびに各執行役員の業務執行責任を一層明確化してまいります。

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