Icon

サステナアクション

SUSTAINABLE ACTIONS

社会課題

2025年には65歳以上の約5人にひとりが
認知症になるといわれている。

出典「日本における高齢者人口の将来推計に関する研究」
(平成26年度 厚生労働科学研究費補助金特別研究事業九州
大学二宮教授)による速報値より一部、編集・抜粋

THINK

三菱UFJ信託銀行が考えたこと

加齢による認知機能の変化が経済活動や金融行動にどのような影響を与えるかを分析し、高齢者が自分自身の望む形で資産を活用できるサービスを研究する学問である「金融ジェロントロジー(金融老年学)」の研究に取り組む。

お客さまひとりひとりの認知機能の状態・変化を適切に把握することで、加齢による認知機能の低下に伴う行動特性を踏まえた商品・サービスの提供をおこなう。

他業態・他業界とも協働して、健康年齢を先に伸ばすサービスなど金融のワクにとらわれない発想の商品開発で、超高齢社会の問題と向き合っていく。

三菱UFJ信託銀行が実現すること

金融ジェロントロジー研究を推進

認知機能の低下に備える商品を開発

金融のワクにとらわれずにお客さまの健康・長寿実現に向けたチャレンジ

It’s my サステナ活動

昨日まで信じていた価値観を疑うこと

フロンティア戦略企画部 シルバー金融室

大内 誠

It’s my サステナ活動

毎日のテンションが上がるような
エコバッグを購入

池袋支店 資産コンサルティング第1課

前田 郁美

既存の価値観にとらわれず、
新たなアイデアを実現。

「認知機能の低下によって引き起こされる問題」

大内
大内

僕の仕事は新商品とか、新サービスを開発することですね。次の当社の柱になるビジネスを作るというのが目標で、それに向けたいろんな調査や研究もおこなっています。今日はよろしくお願いします。

前田
前田

私はリテール部門の営業店におりまして、窓口で個人のお客さまに向けて、その方の資産運用や管理、相続・不動産などのご相談を承って、解決方法などをご提案させていただく仕事になります。

大内
大内

高齢化、長寿化という中で、長生きする方が多くなったわけですが、歳を重ねれば身体機能も低下するし、認知機能も低下する、5歳年を取るごとに認知症になる人の割合が倍増するといわれています。そういう状況の中で、我々がサービスを提供しようとするとき、もっと広く言えば、お客さまとコミュニケーションしようとするときに、その認知機能の低下によって理解力や判断力の問題が大きくなるだろうと。

前田
前田

そうですね。お客さま自身が商品の中身を理解する力とか、リスクを理解する力が弱くなると、いろいろある商品の中からその方が理解できるような商品を、理解できるように分かりやすく説明することが必要になってくるということですね。

大内
大内

実際、前田さんは窓口でご高齢のお客さまと接していてどうですか。

前田
前田

そうですね。やっぱり年齢だけでは判断ができなくて、60〜70代の方でも会話をする中で理解力が低下していると思われる方もいらっしゃいますし、逆に80歳、90歳でも非常にしっかりしている方もいらっしゃいますね。年齢や性別だけでは判断できない目に見えないところなので、その方が実際に理解できているのかを判断するのは難しい問題だと思っています。

大内
大内

それは、どういうふうに判断をして、どういうふうに対応しているんですか。

前田
前田

例えば投資商品の提案になると、商品性も定期預金よりは複雑になるので、その中で意思疎通というか、質問に対する答えがきちんと返ってきているか、リスクについてきちんと理解できているのかを見るようにしています。ただ良いところだけを理解して、リスクについては十分に理解できていないという方もいらっしゃるので、そういった質問に対する答えに矛盾がないかとか、様々な視点から判断をしていきます。特に私が気をつけているのは、その方の知識や経験がどれくらいあるかを、会話していく中で把握して、その方の理解度に合わせた提案をするようにしています。もともと、相場や金融商品に詳しい方は、知識もあるので、専門用語のままお話しした方が分かりやすい場合もありますし、逆に運用経験のない方にはカタカナの専門用語で説明しても分かりにくいので、より簡単な言葉や言い回しで理解いただけるように工夫していますね。

大内
大内

金融商品に限らず、判断力の低下で先のことが考えられなくなり、高額な買い物をしてしまい、大切な資産を失ってしまうというケースもあります。また認知症で本人の意思能力が喪失してしまうと、金融機関が口座からお金を下ろすことをお断りする場合があって、これは大きな社会問題にもなっています。

前田
前田

もともと代理人がお金を下ろす方法はありましたが、それはどちらかというと本人も意思能力があって、このときだけお金を下ろすことをお願いするという委任状を用意いただくもので、本人の意思能力がない場合は使えません。ご本人が老後資金をきっちり準備していたとしても、それが使えなくなってしまうと、本当に困りますよね。実際、私も窓口でこのようなケースの相談を受けたことがあります。

「お客さまの声に寄り添うことで、新しい商品、サービスが生まれる」

大内
大内

先ほど、お話しした判断力の低下によって、思わぬ買い物をしてしまうケースを防ぐために、僕が開発に携わったのが、解約制限付信託「みらいのまもり」です。これは、老人ホームの入居一時金や10万円以上の医療費という使い道に限って、所定の要件を満たす領収書の提出があれば、ご本人以外からの請求でも資金の払い出しが可能になるという商品です。ご本人さまだけでは解約できないという解約制限が付いていて大きな資金を守る機能があることも特長です。

前田
前田

わたしたちも現場の声をできるだけ届ける努力はしていますが、商品開発はどのようなプロセスで行われているのですか。

大内
大内

そうですね。基本的には、認知症のような大きな社会課題があって、企業や個人が困っていること、あるいは、これから困りそうなことを考えることからはじまります。考えると言っても、デスクワークではなく、社内外、とくに社外の人と意見交換する中から気付きを得ることが多いですね。

前田
前田

たとえば、社外の人というのは、どのような人と話して、どのような情報を得ているのですか。

大内
大内

そうですね。老人ホームの運営会社の方と話をしてみると、僕は勝手に認知症になる境目があると思っていたのですが、実はそうじゃないと。認知機能がはっきりしている時間とそうでない時間の比率が徐々に変化していくということを教えてもらいました。つまり、認知症と診断されている方でも軽度であれば、認知機能がはっきりしている時間もあるということです。

前田
前田

確かにそうですね。同じお客さまでも調子の良い時と悪い時があるかもしれません。

大内
大内

例えば、朝はしっかりしてるけど、夕方はちょっと理解力が弱くなっているというのが確かにあるんですよね。夕方に説明したら、理解されているのか不安な感じだけど、朝、説明したらしっかり理解いただけるみたいな。実は、境目がわかったら、その境目をトリガーに何かが発動するみたいな商品を考えたいと思っていたんですけど、それは無理だとわかりました。それなら、お客さまの認知機能がどうなっても大切な資産を守れるような商品をつくるという方向で考えようと。

前田
前田

商品開発のプロセスでは、社外の人から学ぶことも多いというお話でしたが、認知症によって、口座が凍結されてしまう問題については、特に社内の現場からもなんとか解決できないか、という声が上がり商品開発を進めたと聞いています。

大内
大内

この問題を解決するためにリテールの本部で開発したのが、代理出金機能付信託「つかえて安心」です。「つかえて安心」は、元気なうちに契約し、将来自分でお金の管理が難しくなった場合に備える信託商品で、契約した本人が認知機能の低下で、判断能力がないとみなされても、あらかじめ指定した代理人が契約者の代わりにお金を引き出せる商品で、僕もこれは良い仕組みだと思っています。

前田
前田

「つかえて安心」は、実際のお客さまの関心度も高く、私も積極的にお客さまにご案内しています。

「未来のために、金融ジェロントロジーを推進」

大内
大内

当社では、金融ジェロントロジー(金融老年学)に関する共同研究を2018年3月から慶應義塾大学と開始して、2019年4月には、慶應義塾大学、野村ホールディングスと「日本金融ジェロントロジー協会」を設立しました。この協会に加入するメガバンクや大手生保、大手証券、地方銀行の従業員に対して研修を提供し、高齢者に寄り添える担い手の育成に取り組んでいます。この他に、産学連携の取り組みとして、認知機能低下の早期発見を目指す研究や、健康年齢を把握して行動変容につなげることを目指す研究を進めています。

前田
前田

具体的に、今どんな研究が進んでいるのか、すごく興味があります。

大内
大内

今、東大とソフトバンクと一緒に研究しているのは、血液からその方の健康寿命を判定しようという研究です。

前田
前田

血液から?

大内
大内

はい。例えば60歳の方が80歳まで健康でいらわれるとか、90歳まで健康でいられるというのが分かります。

前田
前田

たとえば、金融商品とどう繋がっていくイメージですか。

大内
大内

僕もそれを考えてるんですが、たとえば、お客さまにいろいろな提案しても、「私、もう何年後には生きていないから、そんな期間の長い運用商品はやらない」という方がいたとします。そんな方に、エビデンスを持って、いや84歳までは健康でいられます、という数字が示せたら、じゃあ、そこに向けて遺言作りましょうとか、そこに向けて運用しましょうとか、もっと言えば、それまでにお孫さんと旅行しましょうとか、今までとは違った提案ができるようになると思っています。

前田
前田

逆に、もっと健康寿命を伸ばしたいから、どうしたらいいか、という相談もありそうですよね。そこで、運動しようとか、食事を変えようという話になったら、金融サービスのワクを超えて、いろいろな相談やサービスに展開できそうですね。

大内
大内

あると思います。正直、金融機関が金融サービスだけを提供する時代はもう終わっていて、それだけをやってる金融機関はお客さまに選ばれなくなる、つまり、未来はないと思います。そういう意味では、自社だけでサービスを提供するのではなく、どこかと組むなどして、お客さまや社会の期待に応えていくという発想が必要になると思います。「金融」というワクにとらわれずに、新しいサービスを生み出していきたいです。

前田
前田

面白いですね。ちなみに大内さんが商品企画の担当者として将来的に実現したいことは何ですか。

大内
大内

やっぱり医療に関するものを作りたいですね、実際には、非常にハードルが高いとは思いますが、やっぱり人間誰しも病気にはなりたくないし、認知症にもなりたくないじゃないですか。例えば、僕たちと取り引きすると、より元気になって、より長生きできるみたいな。金融というワクを設けていたのは私たち金融機関自身なんですよね。そこに囚われず、いろいろな可能性にチャレンジしていきたいですね。