金融ジェロントロジー
への取り組み

※金融ジェロントロジー(金融老年学)加齢に伴う身体能力や認知能力の変化が経済・金融行動にどのような影響を与えるかを研究する学問領域

日本では2018年に認知症の人の数が500万人を超え、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症であると見込まれており(※1)、また、2025年にはその割合が5人に1人まで増えると予想されています(※2)。超高齢社会において認知機能の低下は誰にでも起こり得ると考えるべき問題となっています。
認知機能の低下という問題に対して金融機関としてどう対応していくのか、三菱UFJ信託銀行での取り組みを担当者に聞きました。

  • ※1出典:

    認知症施策推進大綱(厚生労働省・2019年6月)

  • ※2出典:

    認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜(厚生労働省・2017年7月改訂)

認知機能の低下で起こりうる問題とは?

認知機能が低下すると、計画や段取りを立てられなくなるなど、判断力の障害により、将来の備えを使ってしまうなど、将来を見据えた資産管理ができなくなり、資産寿命を不用意に短くしてしまうおそれがあります。
認知機能の低下に備えて、三菱UFJ信託銀行は、つかえて安心みらいのまもりといった資産を適切に守る商品を開発してきました。これらの商品ではお客さまの認知機能が仮に低下してしまったとしても、必要なものに適切にお金を使うことができる、あるいは、あえて簡単には解約できなくすることで厳重に資金を守ることができます。

金融ジェロントロジーとはどのようなものでしょうか?

こういった取り組みはとても重要なものですが、一般的に認知機能の低下は、ある日突然起こるものではなく、日々徐々に進んでいくものです。また、人によってその進行の速さや、訪れる時期などは異なります。
現在の金融機関は、そのような各個人の認知機能の状態を踏まえた対応が難しく、年齢等の基準で一律の対応を行うしかありませんでした。たとえば、ある一定の年齢になるとお客さまの認知機能の状態に関わらず、ご案内する商品(価格変動が比較的大きい商品等)を必要以上に絞ってしまう等、保守的な対応をしてしまうケースです。逆に認知機能が低下していても、当該年齢に達していないお客さまに価格変動が大きい商品等をご案内するケースもありえます。金融機関はお客さまが商品内容等を理解していないと判断した場合は商品等の契約締結をしませんが、現在はその判断を担当営業員や上席者の定性的(感覚的)な観点でしか行うことができていないことが私の問題意識です。
これからは、各個人の認知機能の状態の把握、認知機能低下の早期発見や認知機能の維持・改善、健康寿命を把握する研究などが世界的に進むことにより、これらの問題への対応としてお客さまの認知機能の状態に応じた対応が可能になるのではないかと考えています。
金融ジェロントロジー(金融老年学)とは、加齢による身体能力や認知能力の変化が経済活動や金融行動にどのような影響を与えるかを、認知科学や老年学、金融研究と組み合わせて研究する学問領域のことです。この領域の研究が進むことにより、今まで提供できなかった「高齢者に寄り添った金融サービスの提供」ができるようになることが期待されています。

三菱UFJ信託銀行ではどのような取り組みを行っていますか?

当社は2018年3月より慶應義塾大学と金融ジェロントロジーに関する共同研究を開始し、お客さま担当者向けに金融ジェロントロジーに関する研修を実施する等、担い手の育成に取り組んでいます。また、金融ジェロントロジーに関する知見を金融サービス等に応用できる人材の育成を日本全体で行うために、2019年4月には、慶應義塾大学、野村ホールディングスと日本金融ジェロントロジー協会を設立し、この協会の活動を後押ししています。
この他に順天堂大学東京大学(PDF 169KB)や各企業とともに産学連携の取り組みとして、認知症の早期発見や健康年齢を把握し行動変容につなげることを目指す共同研究を開始しています。

これらの取り組みはどのような世界を目指しているのでしょうか?

これからの金融機関の使命は、お客さま一人ひとりの認知機能の状態・変化を適切に把握し、加齢による認知機能の低下に伴う行動特性を踏まえた金融商品・サービスを提供することだと考えています。当社は生前の資産管理や相続をはじめとする幅広い業務を通じて、お客さまに近い存在としてこの使命を果たせる金融機関だと思います。
これらの研究を通じて、お客さまのライフスタイルや認知機能に適した商品を、お客さまが理解しやすいようにご説明する、さらにお客さまの健康年齢を踏まえた資産形成、資産管理、資産承継のご提案や、各企業様とも連携しその健康年齢を先に延ばす「非金融」のサービスまで提供することで、「取引をすると本人・家族が幸せになれる金融機関」となることを目指したいと考えています。

プロジェクトを推進するのは、フロンティア戦略企画部シルバー金融室

フロンティア戦略企画部
シルバー金融室
大内誠(おおうちまこと)

フロンティア戦略企画部は、信託の可能性をとことん追求し、経済社会の様々な課題を解決する新しい事業や商品を創り出す部署です。シルバー金融室は、これからの社会の主役である高齢者を応援するサービス等について、金融機関の枠に捉われずに研究・開発をしています。
本プロジェクトは同室の大内誠(おおうちまこと)が推進しています。

本コンテンツの内容について

2020年1月現在の情報に基づき作成しております。