LEADER’S
VOICE

機関投資家における
サステナ活動について

常務執行役員 受託財産企画部長
伊原 隆史

伊原隆史

お金の流れを変えることで、
世界は変わる。
投資の世界のプラットフォーマーとして、
サステナブルな未来を描きます。

三菱UFJ信託銀行のサステナ活動は、社会課題を解決していくことで、「安心・豊かな社会」を創ることをテーマに掲げています。三菱UFJ信託銀行は、機関投資家に対する受託財産サービスを提供するとともに、預かった財産を投資する機関投資家という側面もあるかと思いますが、この領域では、どのような社会課題がテーマになるのでしょうか。

ひとつには、少子高齢化対応。具体的には、年金の話になります。年金改革が叫ばれる中、DB(確定給付企業年金)やDC(確定拠出年金)による資産形成の重要性が増してきています。その中で、時代の流れに合わせた商品開発をおこない、運用会社として、あるいは運用会社をサポートするサービスプロバイダーとして、年金制度を支えていくことが最大のミッションだと考えています。 次に、ESGを切り口とした気候変動への対応です。ESGという冠をつけた商品は、世の中にたくさんありますが、サステナビリティの考え方からすると、ESGは特別なものではなく、ESGに準拠していることがあたりまえになっていくだろうと考えています。ですから、我々は必ずしもESG投資に特化した運用商品をつくろうとしているわけではなく、すべての投資にESGに基づくスクリーニング等を実施し、投資先評価にESG目線を盛り込む形で投資判断をおこなっています。
次に、年金、保険、投資信託などを通じて投資されている株や債券といった有価証券等の管理業務です。この業務は当社の関連会社である日本マスタートラスト信託銀行(MTBJ)でおこなっていますが、投資対象国は世界100か国にもおよび、規模では約450兆円、家計金融資産の25%を占めるほどです。
この業務は地震や感染症があっても止めることができません。世界各国の資本市場を停止させてしまうおそれがあるからです。国民のみなさまの資産運用や経済活動、世界の資本市場のサステナビリティを支えるため、不測の事態にも耐える強固な業務基盤を整備しています。

重要課題=事業を通じて解決していく社会課題とアクション
「少子高齢化対応」、「気候変動対応」、「顧客財産保全のためのインフラ提供」などの社会課題に対して、顧客財産の受託を通じた高度な専門性を提供しながら、より良い未来に繋がる責任ある受託者としての投資行動による解決を図り、「安心・豊かな社会」を実現すること。

社会課題に対するアクションとして、ESG投資のお話がありましたが、具体的にどのような形で、社会課題の解決に向けて動いているのでしょうか。

ESG投資の活性化を考えるにあたり、まずは機関投資家のお客さまに商品提供をはじめたわけですが、最近では、年金加入者が商品を選定できる企業型確定拠出年金(企業型DC)向けにも、ESG商品の提供をはじめています。これによって、ひとりひとりが、ESGのフィルターを掛けた商品に自分の年金の一部をスイッチすることで、結果として少子高齢化や気候変動等の社会課題解決に寄与できるようになります。私たちの役割としては、将来の資金形成に対するサポートを通じて、ESG評価にも即した投資ができるインフラを作っていくことだと思っています。そのためにも、お取引先企業に、そういった商品を企業型DCに採用していただき、運用商品のラインナップ拡充を通じて、多様な選択肢を提供していくことが大切だと思っています。現状は、各企業の社員のみなさま向けに投資教育やセミナーを通じた啓蒙活動をおこなっていますが、まだまだ定期預金だけで運用されている方も多いため、まずは安心して投資に向かっていける流れを作っていくことが必要だと考えています。

ESG

三菱UFJ信託銀行は、アジア最大の機関投資家とも呼ばれています。この機関投資家という立場からサステナビリティの実現に向けての動きや目標について教えてください。

当社が機関投資家として企業の株主である場合には、発行会社に対して、ESGの観点で、投資先企業にその課題解決を促すべく提言をおこなっています。こうした株主と企業の対話のことを業界用語で「エンゲージメント」と呼びますが、ESGに関連したエンゲージメントの比率というのは、年々高まっていて、すでに半分以上がESG関連のエンゲージメントだと実感しています。現状目標値は定めておりませんが、投資先企業と課題認識を共有し、投資先企業の方々に、目標を持って取り組んでいただけるようにお願いしています。我々はそれら企業の取り組みを評価し、当社独自のESGスコアという指標に変換して、運用・投資判断を行っています。
もともと我々には、お客さまからお預かりした大切な資産を長期的・安定的に拡大していこうとするフィデューシャリー・デューティーのDNAがあり、これがESG投資の思想を受け入れる土壌となりました。三菱UFJ信託銀行が投資をおこなう場合、すべての投資においてESGは、最低条件というか、あたりまえにある前提条件になっているということです。

伊原隆史

年金の管理やESG投資については、これまでも最先端の取り組みをされてきたと思います。今、新たに全社の取り組みとしてサステナ活動を推進するにあたり、新しい取り組みや今後、実現していきたいことはありますか。

我々が思い描くサステナビリティを実現し、国民のみなさまに投資による資産形成を促していくためにも、我々が投資の世界のプラットフォーマーになるべきであると考えています。
具体的にどういうことかいうと、例えば、皆さんが不動産を投資しようとすると、投資対象は1部屋とか、家1軒、ビル1棟の単位になっていますが、それを、小口化することができれば、もっと不動産投資がしやすくなりますよね。こうした新たなスキームを提供することが、一つの新たな投資のプラットフォームになると思っています。すなわち、我々があらゆる資産を受益権化・電子化し、そのうえで小口化して、販売していくことを目指すということですね。この、信託機能を通じて受益権を発行し、流通させることができるという機能は、信託銀行が持っている貴重な器です。おそらく、こうした不動産をはじめとする資産の小口化案件は、これから加速度的に増えていくと思います。
また、当社は、電力の地産地消と地域内資金循環による地方創生への貢献を理念に、国内各地で太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーへの出資を進めてきましたが、2019年に太陽光発電ポートフォリオの一部を国内機関投資家のお客さま向けのファンドとしてリリースし、その後も毎年ファンドを組成しています。こうした取り組みを通じたCO2排出量の削減は気候変動問題の解決に貢献することから、良質なクリーンエネルギー電源の拡大に今後も寄与していきたいですね。

不動産投資の小口化

こうしたサステナ活動を意識した新しい取り組みを推進していくにあたり、マネジメントとしてはどのように組織を動かしていくのでしょうか。

やはり我々も営利企業なので、どうしても収益を第一に考えてしまう側面があると思います。その結果、儲からないからやめようという価値判断があったわけですが、そこに収益以外のもう一つの判断基準として、社会課題解決に対する取り組みへのウェイトを上げていくことが、我々の使命だと思っています。社員ひとりひとりが儲からないからやめよう、という価値観を見直して、目の前の儲けは少ないかもしれないけれど、将来の社会課題解決につながるから中長期的な目線でやろう、という思いを持って行動し、その思いを会社として後押ししていくことが重要になると思っています。そういった積み重ねの中から、具体的なアクションが生まれていくことで、企業文化として定着していくものだと考えています。

最後にサステナ活動のゴールイメージについて教えてください。

まずは、ESG投資が特別なものではなく、普通に、通常の投資判断をする中で、ESGという観点があたりまえにある世の中にしていくこと。さらに我々が投資のプラットフォーマーとして、投資案件を電子化・小口化することで、資金の大小に関わらず、より多くのお客さまが安心して、さまざまな資産に投資していただける環境をつくること。ただ簡単に売買できるようにするだけでなく、リスクの理解を含めて、きちんと説明する責任を果たし、安全・安心な投資を提供することが重要だと考えています。
また、エンゲージメントは投資先企業の働き方改革にもつなげることもできますが、働き方改革については、個人的にも非常に関心があります。理想としては、世界中の時差をうまく利用しながら、仕事を効率的に進めていくことができたらいいなと。実際、バミューダに勤務しているときに、同僚が個人的な事情でオーストラリアに帰国することになったのですが、そのままオーストラリアの自宅からのリモートで勤務を継続するといったケースもありました。在宅勤務も単に通勤のストレスや時間のロスから解放されるだけでなく、時差を活用することで24時間を効率よく使い、企業の業績アップにつなげていくことが理想だと思います。膨大な事務作業の効率化とデジタル化を進めることで、企業の業績が上がり、結果的にはそこで働く人の収入も増えていくような好循環を生み出したいですね。

It's my サステナ活動

最近、自転車に乗ることをはじめました。

伊原隆史

聞き手/執筆 伊田 光寛
(ブランドコミュニケーションデザイナー)