米国の年金会計基準

  1. 米国の年金会計基準の概要
  2. 日米基準の比較
  3. 今後の動向

1.米国の年金会計基準の概要

2006年9月29日、米国会計基準審議会(FASB)は、年金会計基準(SFAS87)等の改訂に係る基準書「SFAS158」を公表した。これは、2005年から2段階で進められているFASBによる年金会計基準見直しプロジェクトの第1フェーズの見直しである。もっとも、現段階では第2段階の見直しのスケジュールは示されていない。

<バランスシートの計上方法>
従来のSFAS87では、累積給付債務(ABO)が年金資産を上回る場合に、その差額をバランスシートへ計上するよう規定されていたが、SFAS158により、予測給付債務(PBO)と年金資産の差額を全額バランスシートに計上することが決定された。

バランスシートの計上方法

<費用処理方法>
SFAS158では債務および費用の測定方法についての変更は行われていない。数理計算上の差異は、コリドールールに基づき費用処理の要否を判定のうえ、一定年数による遅延認識で費用処理される。

(*)コリドー部分(=PBOまたは年金資産のいずれか大きいほうの10%)は費用処理の対象外

2.日米基準の比較

日本の退職給付会計基準と比較した場合、「1.」で触れたバランスシートの計上方法とコリドールールの取扱いが異なる他、年金資産の評価(費用算出時)と開示が異なる。

米国基準(SFAS87) 日本基準
(退職給付会計基準)
基本的な考え方 退職給付に関する制度について、統一の基準で給付債務を評価し、発生主義で費用処理を行う 同左
債務の評価 予測給付債務(PBO)を使用 退職給付債務
考え方はPBOと同様
年金資金の評価 公正価値(時価)を使用
ただし費用算出時には
平滑化した額でも可
公正価値のみ
未認識債務の種類 数理計算上の差異、過去勤務債務
会計基準変更時差異
同左
算用処理方法 算用の算出 勤務算用+利息算用-期待運用収益+未収益債務の処理費用 同左
未認識債務の
費用処理
(遅延認識)
一定年数にて費用処理
(遅延認識有り)
同左
数理計算上の差異
の処理の対象
(コリドールール)
コリドールール有
(PBOまたは年金資産のいずれか大きい方の10%以内であれば費用処理不要)
コリドールール無
(数理計算上の差異は全て費用処理
の対象)
貸借対照表
負債の計上
PBOと年金資産の差額が積立不足の
場合は負債、積立超過の場合は資産に全額計上
連結決算は同左
単独決算は退職給付債務から年金資産
及び未認識項目を控除して負債を計上
開示 債務、資産、費用、基礎率に加え、
資産構成、将来の給付額見込み等、
詳細な開示が必要
債務、資産、費用、基礎率 等

3.今後の動向

米国年金会計基準の見直しに係るプロジェクトは、引き続き、第2フェーズが進められることになるが、第2フェーズではより包括的に年金会計基準の見直しが行われることになる。2005年のプロジェクト立ち上げ時に、以下の4項目を含む広範囲におよぶ問題に焦点をあてることが公表されている。

  • 退職給付費用の認識方法および開示方法
  • 一時金給付の選択肢をもつ制度の債務評価方法
  • 計算基礎の策定指針
  • 退職後給付の信託財産の母体企業への連結

また、国際会計基準審議会(IASB)においても、年金会計基準を含む従業員給付の包括的な見直しプロジェクトの立ち上げが開始されている。その進行スケジュールと内容・範囲についてはFASBの見直しプロジェクトと異なっているものの、最終的には両者が調和した基準を策定することを目指すとされている。