コラムVol.3 NISAの非課税メリットを実感しよう!【早見表あり】
- 目黒 政明 (めぐろ まさあき)
- 1983年、慶応義塾大学法学部卒業後、大和証券に入社。1987年、独立系FP会社に転職し、FPとしての活動を始める。1992年、MMIライフ&マネープランニングを設立。2002年、個人を対象に幅広くFPサービスを提供する生活設計塾クルーの取締役に就任。2010年、生活設計塾クルー代表取締役。資産運用アドバイスを専門とし、運用相談、新聞・雑誌等での原稿執筆、マネーセミナーの講師などを務めている。
インフレ傾向が定着する中、投資の重要性が高まっている
長らくデフレ傾向に悩まされてきた日本でも、2022年以降はインフレ傾向となっています。一方、2016年1月末に日本銀行がマイナス金利政策を導入して以来、預貯金金利はほぼゼロ%という超低金利に沈み込んだままです。
預貯金金利はほぼゼロ%なのに、物価は上がっているため、預貯金の実質的な価値は目減りし続けていることになります。こうした中、資産防衛のためにも、インフレ率以上のリターンが期待できる投資の必要性が高まっています。
投資商品としては、上場株式や株式投資信託などが代表的ですが、これらに非課税で投資できるのがNISA(少額投資非課税制度)です。運用益に税金がかからなければ、複利効果が高まり、効率的に資産を増やせます。また、税金というコストを減らせれば、課税口座より低めのリターンでも、手取りベースで同程度の収益が期待できます。
投資は、NISAの非課税枠をまず活用し、それ以上の金額の投資ができる場合は課税口座を利用するのが基本だといえます。今回はいくつかのケースを通して、NISAの非課税メリットを具体的に見ていきます。
2024年からの新NISA
2024年からの新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの非課税枠があり、成長投資枠では年間240万円、つみたて投資枠では年間120万円まで投資できます。両者は併用できるので、併用した場合、年間360万円までの投資が可能です。
ただし、生涯投資枠(非課税保有限度額)は最大1,800万円で、うち成長投資枠は最大1,200万円までとされています。成長投資枠は利用しなくてもよく、つみたて投資枠だけで最大1,800万円までの投資も可能です。
つみたて投資枠は、文字通り、積立での投資に限られており、あらかじめ購入する銘柄を指定したうえで、「1か月に1回、1万円ずつ」など、定期的に一定額の買付けを行う必要があります。
成長投資枠には投資手法の制約はなく、積立投資、タイミングを捉えたまとまった資金での一括投資、いずれも可能で、両者を併用することもできます。
投資できる商品にも違いがあり、つみたて投資枠では、長期の積立・分散投資に適した一定の要件を満たした株式投資信託とETF(上場投資信託)だけに投資できます。
成長投資枠では、上場株式、株式投資信託、ETF、J-REIT(上場不動産投資信託)など幅広い商品に投資できます。
成長投資枠で一括投資した場合の非課税メリット
2024年からの新NISAの成長投資枠で、毎年240万円ずつ投資したとすると、5年間で非課税保有限度額に達します(年間240万円×5年間=1,200万円)。
仮に、毎年年初に240万円を一括で投資し続ければ、2年目の年初の投資元本は480万円、3年目の年初の投資元本は720万円、4年目の年初の投資元本は960万円、5年目の年初の投資元本は1,200万円になります。この各年における収益率が3%、5%、7%になった場合の「NISAの非課税メリット」は図表1のようになります。課税口座では、運用益に対して所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%の計20.315%の税金が課せられるということで手取りの収益を計算しています。
投資元本が大きくなるほど、また収益率が高くなるほど、NISAの非課税メリットが大きくなることが確認できます。
投資元本 | NISA口座で 投資した場合の 年間収益 |
課税口座で 投資した場合の 手取りの収益 |
差額 =NISAの非課税 メリット |
---|---|---|---|
240万円 | 72,000円 | 57,374円 | 14,626円 |
480万円 | 144,000円 | 114,747円 | 29,253円 |
720万円 | 216,000円 | 172,120円 | 43,880円 |
960万円 | 288,000円 | 229,493円 | 58,507円 |
1,200万円 | 360,000円 | 286,866円 | 73,134円 |
投資元本 | NISA口座で 投資した場合の 年間収益 |
課税口座で 投資した場合の 手取りの収益 |
差額 =NISAの非課税 メリット |
---|---|---|---|
240万円 | 120,000円 | 95,622円 | 24,378円 |
480万円 | 240,000円 | 191,244円 | 48,756円 |
720万円 | 360,000円 | 286,866円 | 73,134円 |
960万円 | 480,000円 | 382,488円 | 97,512円 |
1,200万円 | 600,000円 | 478,110円 | 121,890円 |
投資元本 | NISA口座で 投資した場合の 年間収益 |
課税口座で 投資した場合の 手取りの収益 |
差額 =NISAの非課税 メリット |
240万円 | 168,000円 | 133,871円 | 34,129円 |
---|---|---|---|
480万円 | 336,000円 | 267,742円 | 68,258円 |
720万円 | 504,000円 | 401,613円 | 102,387円 |
960万円 | 672,000円 | 535,484円 | 136,516円 |
1,200万円 | 840,000円 | 669,354円 | 170,646円 |
※「NISAの非課税メリット」は所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%を別々に計算し、それぞれ1円未満の端数は切捨てた合計額を示しています(図表2、図表3も同じです)。
複利で運用した場合の非課税メリット
図表1の計算例は、毎年、収益を受け取るという前提で計算しています。たとえば、株式投資信託への投資例だとすると、毎年の収益をすべて分配金として受け取るといった場合の計算例です。
しかし、株式投資信託の中には、運用収益を分配せず、収益部分も運用に回して、複利で運用していくタイプもあります。この場合、収益部分も次の収益を生んでくれるので、お金の増え方はより大きくなります。
図表2・図表3は、240万円を年3%、5%、7%の収益率で、1年複利で運用し、5年後・10年後に収益を一括で受け取った場合のNISA口座と課税口座の受取り金額の違い(=NISAの非課税メリット)を示したものです。課税口座では5年後・10年後の収益に対して、最後に1回だけ20.315%課税されるという前提で手取りの収益を計算しています。
収益率が高いほど、また運用期間が長いほど、NISAの非課税メリットが大きくなることが確認できます。
収益率 | NISA口座で 投資した場合の 収益 |
課税口座で 投資した場合の 手取りの収益 |
差額 =NISAの非課税 メリット |
---|---|---|---|
3% | 382,258円 | 304,604円 | 77,654円 |
5% | 663,076円 | 528,373円 | 134,703円 |
7% | 966,124円 | 769,857円 | 196,267円 |
収益率 | NISA口座で 投資した場合の 収益 |
課税口座で 投資した場合の 手取りの収益 |
差額 =NISAの非課税 メリット |
---|---|---|---|
3% | 825,399円 | 657,721円 | 167,678円 |
5% | 1,509,347円 | 1,202,724円 | 306,623円 |
7% | 2,321,163円 | 1,849,619円 | 471,544円 |
毎月1万円ずつ積み立てる場合の非課税メリット
20歳代、30歳代など若い世代の場合、一般的に投資に回せる金額には限度があります。しかし、将来のために毎月1万円ずつ投資商品で積み立てるといったプランであれば、さほど無理なく多くの家計が実行可能だと思われます。
図表4は、毎月1万円を積立運用した場合の非課税メリットを示したものです。毎月の積立額が2万円の場合は図表4に記載されている金額の倍、積立額が3万円の場合は3倍の金額になります。当然ですが、プラスの収益率を前提とすれば、積立期間が長くなるほど運用収益が大きくなるので、運用収益に対して税金がかからないNISAの非課税メリットの金額も大きくなります。
(〜年5%の収益率で積立ができた場合)
積立期間 | 積立元本 | 元利合計額 | 収益 | 非課税メリット |
---|---|---|---|---|
1年 | 12万円 | 123,300円 | 3,300円 | 670円 |
2年 | 24万円 | 252,909円 | 12,909円 | 2,622円 | 3年 | 36万円 | 389,148円 | 29,148円 | 5,921円 |
4年 | 48万円 | 532,358円 | 52,358円 | 10,635円 |
5年 | 60万円 | 682,894円 | 82,894円 | 16,839円 |
6年 | 72万円 | 841,133円 | 121,133円 | 24,607円 |
7年 | 84万円 | 1,007,467円 | 167,467円 | 34,020円 |
8年 | 96万円 | 1,182,311円 | 222,311円 | 45,161円 |
9年 | 108万円 | 1,366,100円 | 286,100円 | 58,121円 |
10年 | 120万円 | 1,559,293円 | 359,293円 | 72,989円 |
11年 | 132万円 | 1,762,369円 | 442,369円 | 89,866円 |
12年 | 144万円 | 1,975,836円 | 535,836円 | 108,854円 |
13年 | 156万円 | 2,200,223円 | 640,223円 | 130,061円 |
14年 | 168万円 | 2,436,091円 | 756,091円 | 153,599円 |
15年 | 180万円 | 2,684,026円 | 884,026円 | 179,589円 |
16年 | 192万円 | 2,944,647円 | 1,024,647円 | 208,156円 |
17年 | 204万円 | 3,218,600円 | 1,178,600円 | 239,432円 |
18年 | 216万円 | 3,506,570円 | 1,346,570円 | 273,555円 |
19年 | 228万円 | 3,809,273円 | 1,529,273円 | 310,671円 |
20年 | 240万円 | 4,127,463円 | 1,727,463円 | 350,933円 |
※月初積立として計算しています(例:積立期間が1年の場合だと、1月月初に1万円の積立、2月月初に1万円の積立と続け、12月月初に最後の1万円の積立を行い、12月末に全てを解約し、積立元本と収益を一括で受け取った場合の金額を計算しています)。
※積立期間中に運用収益は一切支払われず、複利運用され、積立終了時に一括で受け取った場合の金額です。
※年率の収益率(5%)を12か月で割った月利で、1か月複利で運用されるとした場合の金額です。
※「非課税メリット」は積立による収益を積立期間最終時点で、一括で受け取ったときに20.315%の税金がかかるとした場合の税額です。
※「非課税メリット」は所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%を別々に計算し、それぞれ1円未満の端数は切捨てた合計額を示しています。