コラムVol.3 NISAの非課税メリットを実感しよう!【早見表あり】

2023年11月10日
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目黒 政明 (めぐろ まさあき)
1983年、慶応義塾大学法学部卒業後、大和証券に入社。1987年、独立系FP会社に転職し、FPとしての活動を始める。1992年、MMIライフ&マネープランニングを設立。2002年、個人を対象に幅広くFPサービスを提供する生活設計塾クルーの取締役に就任。2010年、生活設計塾クルー代表取締役。資産運用アドバイスを専門とし、運用相談、新聞・雑誌等での原稿執筆、マネーセミナーの講師などを務めている。

インフレ傾向が定着する中、投資の重要性が高まっている

長らくデフレ傾向に悩まされてきた日本でも、2022年以降はインフレ傾向となっています。一方、2016年1月末に日本銀行がマイナス金利政策を導入して以来、預貯金金利はほぼゼロ%という超低金利に沈み込んだままです。
預貯金金利はほぼゼロ%なのに、物価は上がっているため、預貯金の実質的な価値は目減りし続けていることになります。こうした中、資産防衛のためにも、インフレ率以上のリターンが期待できる投資の必要性が高まっています。

投資商品としては、上場株式や株式投資信託などが代表的ですが、これらに非課税で投資できるのがNISA(少額投資非課税制度)です。運用益に税金がかからなければ、複利効果が高まり、効率的に資産を増やせます。また、税金というコストを減らせれば、課税口座より低めのリターンでも、手取りベースで同程度の収益が期待できます。

投資は、NISAの非課税枠をまず活用し、それ以上の金額の投資ができる場合は課税口座を利用するのが基本だといえます。今回はいくつかのケースを通して、NISAの非課税メリットを具体的に見ていきます。

2024年からの新NISA

2024年からの新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの非課税枠があり、成長投資枠では年間240万円、つみたて投資枠では年間120万円まで投資できます。両者は併用できるので、併用した場合、年間360万円までの投資が可能です。
ただし、生涯投資枠(非課税保有限度額)は最大1,800万円で、うち成長投資枠は最大1,200万円までとされています。成長投資枠は利用しなくてもよく、つみたて投資枠だけで最大1,800万円までの投資も可能です。

つみたて投資枠は、文字通り、積立での投資に限られており、あらかじめ購入する銘柄を指定したうえで、「1か月に1回、1万円ずつ」など、定期的に一定額の買付けを行う必要があります。
成長投資枠には投資手法の制約はなく、積立投資、タイミングを捉えたまとまった資金での一括投資、いずれも可能で、両者を併用することもできます。

投資できる商品にも違いがあり、つみたて投資枠では、長期の積立・分散投資に適した一定の要件を満たした株式投資信託とETF(上場投資信託)だけに投資できます。
成長投資枠では、上場株式、株式投資信託、ETF、J-REIT(上場不動産投資信託)など幅広い商品に投資できます。

成長投資枠で一括投資した場合の非課税メリット

2024年からの新NISAの成長投資枠で、毎年240万円ずつ投資したとすると、5年間で非課税保有限度額に達します(年間240万円×5年間=1,200万円)。

仮に、毎年年初に240万円を一括で投資し続ければ、2年目の年初の投資元本は480万円、3年目の年初の投資元本は720万円、4年目の年初の投資元本は960万円、5年目の年初の投資元本は1,200万円になります。この各年における収益率が3%、5%、7%になった場合の「NISAの非課税メリット」は図表1のようになります。課税口座では、運用益に対して所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%の計20.315%の税金が課せられるということで手取りの収益を計算しています。

投資元本が大きくなるほど、また収益率が高くなるほど、NISAの非課税メリットが大きくなることが確認できます。

図表1 投資金額・収益率別の非課税メリット
収益率が3%の場合
投資元本 NISA口座で
投資した場合の
年間収益
課税口座で
投資した場合の
手取りの収益
差額
=NISAの非課税
メリット
240万円 72,000円 57,374円 14,626円
480万円 144,000円 114,747円 29,253円
720万円 216,000円 172,120円 43,880円
960万円 288,000円 229,493円 58,507円
1,200万円 360,000円 286,866円 73,134円
収益率が5%の場合
投資元本 NISA口座で
投資した場合の
年間収益
課税口座で
投資した場合の
手取りの収益
差額
=NISAの非課税
メリット
240万円 120,000円 95,622円 24,378円
480万円 240,000円 191,244円 48,756円
720万円 360,000円 286,866円 73,134円
960万円 480,000円 382,488円 97,512円
1,200万円 600,000円 478,110円 121,890円
収益率が7%の場合
投資元本 NISA口座で
投資した場合の
年間収益
課税口座で
投資した場合の
手取りの収益
差額
=NISAの非課税
メリット
240万円 168,000円 133,871円 34,129円
480万円 336,000円 267,742円 68,258円
720万円 504,000円 401,613円 102,387円
960万円 672,000円 535,484円 136,516円
1,200万円 840,000円 669,354円 170,646円

※「NISAの非課税メリット」は所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%を別々に計算し、それぞれ1円未満の端数は切捨てた合計額を示しています(図表2、図表3も同じです)。

複利で運用した場合の非課税メリット

図表1の計算例は、毎年、収益を受け取るという前提で計算しています。たとえば、株式投資信託への投資例だとすると、毎年の収益をすべて分配金として受け取るといった場合の計算例です。

しかし、株式投資信託の中には、運用収益を分配せず、収益部分も運用に回して、複利で運用していくタイプもあります。この場合、収益部分も次の収益を生んでくれるので、お金の増え方はより大きくなります。

図表2・図表3は、240万円を年3%、5%、7%の収益率で、1年複利で運用し、5年後・10年後に収益を一括で受け取った場合のNISA口座と課税口座の受取り金額の違い(=NISAの非課税メリット)を示したものです。課税口座では5年後・10年後の収益に対して、最後に1回だけ20.315%課税されるという前提で手取りの収益を計算しています。

収益率が高いほど、また運用期間が長いほど、NISAの非課税メリットが大きくなることが確認できます。

図表2 240万円を5年間1年複利で運用した場合の非課税メリット
収益率 NISA口座で
投資した場合の
収益
課税口座で
投資した場合の
手取りの収益
差額
=NISAの非課税
メリット
3% 382,258円 304,604円 77,654円
5% 663,076円 528,373円 134,703円
7% 966,124円 769,857円 196,267円
図表3 240万円を10年間1年複利で運用した場合の非課税メリット
収益率 NISA口座で
投資した場合の
収益
課税口座で
投資した場合の
手取りの収益
差額
=NISAの非課税
メリット
3% 825,399円 657,721円 167,678円
5% 1,509,347円 1,202,724円 306,623円
7% 2,321,163円 1,849,619円 471,544円

毎月1万円ずつ積み立てる場合の非課税メリット

20歳代、30歳代など若い世代の場合、一般的に投資に回せる金額には限度があります。しかし、将来のために毎月1万円ずつ投資商品で積み立てるといったプランであれば、さほど無理なく多くの家計が実行可能だと思われます。

図表4は、毎月1万円を積立運用した場合の非課税メリットを示したものです。毎月の積立額が2万円の場合は図表4に記載されている金額の倍、積立額が3万円の場合は3倍の金額になります。当然ですが、プラスの収益率を前提とすれば、積立期間が長くなるほど運用収益が大きくなるので、運用収益に対して税金がかからないNISAの非課税メリットの金額も大きくなります。

図表4 毎月1万円を積み立てる場合の非課税メリット
(〜年5%の収益率で積立ができた場合)
積立期間 積立元本 元利合計額 収益 非課税メリット
1年 12万円 123,300円 3,300円 670円
2年 24万円 252,909円 12,909円 2,622円
3年 36万円 389,148円 29,148円 5,921円
4年 48万円 532,358円 52,358円 10,635円
5年 60万円 682,894円 82,894円 16,839円
6年 72万円 841,133円 121,133円 24,607円
7年 84万円 1,007,467円 167,467円 34,020円
8年 96万円 1,182,311円 222,311円 45,161円
9年 108万円 1,366,100円 286,100円 58,121円
10年 120万円 1,559,293円 359,293円 72,989円
11年 132万円 1,762,369円 442,369円 89,866円
12年 144万円 1,975,836円 535,836円 108,854円
13年 156万円 2,200,223円 640,223円 130,061円
14年 168万円 2,436,091円 756,091円 153,599円
15年 180万円 2,684,026円 884,026円 179,589円
16年 192万円 2,944,647円 1,024,647円 208,156円
17年 204万円 3,218,600円 1,178,600円 239,432円
18年 216万円 3,506,570円 1,346,570円 273,555円
19年 228万円 3,809,273円 1,529,273円 310,671円
20年 240万円 4,127,463円 1,727,463円 350,933円

※月初積立として計算しています(例:積立期間が1年の場合だと、1月月初に1万円の積立、2月月初に1万円の積立と続け、12月月初に最後の1万円の積立を行い、12月末に全てを解約し、積立元本と収益を一括で受け取った場合の金額を計算しています)。

※積立期間中に運用収益は一切支払われず、複利運用され、積立終了時に一括で受け取った場合の金額です。

※年率の収益率(5%)を12か月で割った月利で、1か月複利で運用されるとした場合の金額です。

※「非課税メリット」は積立による収益を積立期間最終時点で、一括で受け取ったときに20.315%の税金がかかるとした場合の税額です。

※「非課税メリット」は所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%を別々に計算し、それぞれ1円未満の端数は切捨てた合計額を示しています。

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