コラムVol.183 日下部所長の知っトクお金講座第4回 積立投資のやめ時、売り時教えて!
- 日下部 朋久 (くさかべ ともひさ)
- MUFG資産形成研究所長。1986年三菱信託銀行(当時)入社。年金数理、年金ALM、退職給付コンサルティングなど、幅広く年金業務に従事。企業年金基金、健康保険組合等を経て、2022年4月より現職。年金数理人。日本アクチュアリー会正会員。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。1級DCプランナー。
NISAやiDeCoを利用されている方がどんどん増えています。徐々に資産残高も増え、運用リターンが結構プラスとなっている方も多いのではないでしょうか。残高が増えたら増えたで、今度は減ってしまう心配が出てきますよね。もう売ってしまおうかなと考えている方、ぜひ当コラムをお読みください。積立投資のやめ時、売り時を解説します!
積立投資はいつまで続けたら良いですか?
積立投資は何を目的に始めたのでしょうか?自宅購入の頭金のため、子供の大学進学のため、老後資金のため、など目的があったはずです。いや、特に目的はなく・・・という方もいらっしゃるでしょう。
ではいつやめるのか?1つの答えは「目的が達せられたら」ということになります。では目的を達した状態はどういう状態を指すのでしょうか。これには2つの考え方があると思います。時期と金額です。
時期については、目的のための支払いが必要となる時期が目安になるでしょう。たとえば自宅購入の頭金であれば、契約時や引き渡し時などになります。大学進学資金であれば進学時や、その後の授業料等を考慮にいれて計画的に終了させるなど考えられます。
金額については、資金が必要となる時期に到達する前に目標金額に到達していればそこでやめて構わないと思います。ただ、目標額がピンポイントで決まっている場合ばかりではないと思いますし、せっかく身に付いた積立投資ですから、そのまま時期が来るまで継続するという考え方も良いと思います。
積み立ての目的は複数あると思いますので、一つ一つの目的で勘定やファンドで区切って管理しても良いですが、お金に色はありませんので、長く一つの口座で積立投資を継続し、目的とするイベントが発生した都度、必要額を取り崩すという方法が考えられます。
どういった方法をとるかは、好みの問題ですが、私はこの最後の方法が好きです。なぜならば積立投資を習慣にしたいからです。目的毎に区切って積立投資を実施しようとすると、一度区切りがついた後にまた次の目的に向かってスタートするのが億劫になってしまいそうです。始めるタイミングを逃すことを一番警戒すべきだと思います。あえて区切りを付けなければ、サブスクの契約と同じで、自然と積立投資が継続できます(サブスクの方は必要かどうかの判断を定期的にしましょう!)。
積立投資をやめる直前で暴落するのが心配です
投資を続けていて、資産残高が増えれば増えるほど、暴落するのではないかと心配になります。暴落と言わずとも値下がりするのは嫌ですよね。積立投資の目的に近づくにつれて、投資ポートフォリオのリスクを減らしていくという考え方はあります。たとえば株式の比率を下げて、債券の比率を上げることをします。ただし、このリスクコントロールというのは頭で理解しても、いつどのくらい行うのかという判断や手間暇の問題で実践するのは結構大変です。
私のお薦めはあまりうまくやろうと考えないことです。さきほど紹介した継続して積立投資を行い、必要な時に必要な額だけ取り崩すことにするのです。たとえば入学金が必要だから取り崩すとなれば、その時点で損失が発生していても諦めがつくのではないかと思います。相場の下落を読み切って、先回りして現金化するなんてできないのです。それであれば、少しでも長く投資していた方がリターンを得られる確率が高まります。
一方で、投資を続けたために必要額を下回ってしまうと、資金繰りが困るとお考えの方は、きっぱりと目的の1年〜数か月前までに投資をやめ現金化しておく方が良いと思います。やめた時点で不足している額があれば、預貯金で積み立てを継続することにします。ここで肝心なのは、自分で納得して、これでいいのだと思う方法を選択するということです。投資の世界に足を踏み入れた以上、不確実なことばかりです。最高の結果になることは決してないので、どのように腹をくくるかにかかっていると思います。
「より長く投資するとより大きなリターンを得る確率は高くなる。ただし、損失を出した時の心の痛みは大きくなる。」これをどう捉えるかです。
値上がり益が大きくなりました。投資は続けるつもりですが、ひとまず、利益確定(売り)をした方がよいですか?
投資対象が値上がりしても売らないとその利益は確定しません。もちろんいったん売却しても良いですが、ではそのあとどうするおつもりですか?
この問いに「値下がるタイミングを待って買い直すつもりだ」という答えの方には売却はお薦めできません。なぜかと言うと、①売ったあと値下がらず買うに買えず悶々とする、②値下がったとしてもさらに下がると思いいつまでも買えない、③買い場を迷っているうちにだんだん億劫になって結局買いそびれる、などなど、投資が中断してしまう可能性が高くなるからです。
投資対象の入れ替えのための売りではなく、目的が老後資金など使う予定がまだ先で投資をしばらく続けたいと考えている資金であれば、不用意に投資が中断する売りは避けた方が良いと思います。
それでも売買のタイミングで稼ぐことにチャレンジされたい方もいらっしゃると思います。その場合は、売買の金額がそれなりに大きくなっていると思いますので、売買自体が大きなストレスとなるので覚悟を持って臨んでください。また、もしNISAの枠の中で実践しようとするならば、いったん売却すると投資枠が復活するのは翌年になるため、すぐにNISA枠で購入することはできないことにも留意が必要です。
以上のことから、積立投資ではやめ時、売り時はその資金が必要になった時、そして利益確定売りは行う必要がない、が私の結論です。
投資の世界ではプロでもタイミングを計って利益を大きくするというのは大変です。どうせ、最善手がわからないのなら、資金が必要な時に売るという行動の方が、納得感や諦めがついて精神衛生上良いのではないかと私は思います。これはあくまで私の積立投資に対する考え方、捉え方ですので、皆に当てはまるかどうかはわかりません。ここしばらく運用環境が良好でしたので楽観的に感じているだけかもしれません。ただ、私は生涯投資を続けると思いますので、暴落の時期があってもいつかは持ち直すと信じて投資を継続します。
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