コラムVol.204 マネーライターの取材裏話――マネー誌に書かなかったこと&書けなかったこと 「シン・住宅ローン控除」で有利なのは新築? 中古?

2026年5月14日
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森田 聡子 (もりた としこ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、地方紙勤務を経て日経ホーム出版社、日経BPにて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は書籍や雑誌、ウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に対し、難しい投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく「書く」(=ライティング)、「見せる」(=編集)ことをモットーに活動している。著書に『節税のツボとドツボ』(日経BP)、編集協力に『マンガ 定年後入門』(日本経済新聞出版社)、『教科書には書いてない 相続のイロハ』(日経BP)。

「節税効果大」の住宅ローン控除が改正

2026年から、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が変更されています。

住宅ローン控除とは、10年以上のローンを組んで住宅を取得した際に年末のローンの残高の一定割合(0.7%)を所得税から控除してもらえるお得な制度。医療費控除などの「所得控除」は所得金額から差し引くことで課税所得を減らす形ですが、住宅ローン控除は「税額控除」と言って所得税額から直接マイナスされるため(所得税から引き切れない分は住民税からもマイナスされます)、節税効果が大きいのが特徴です。

住宅ローンを使ったマイホーム購入を考えている人なら、ローンの適用金利が上昇傾向にある今こそ、この制度を活用して実質的な金利負担を減らしておきたいところです。そこで今回は、住宅ローン控除改正のポイントと利用上の注意点について、ご紹介していきたいと思います。

新築住宅価格の高騰で中古市場が活況

2026年からの住宅ローン控除の変更でメリットが大きいのは、「中古住宅」の購入者です。

インフレや円安の進行により建築業界では資材価格や人件費が高騰し、この10年ほどで、新築住宅の販売価格は全国平均で20〜30%近く上昇しています。建売住宅やマンションの販売価格は需給以上にコストの影響を受けやすく、インフレや労働人口の減少といった構造的なコストアップ要因が多い中、新築住宅の価格上昇は当面続くと見られています。

そこで注目されているのが中古住宅です。「新築は高すぎて手が出せない」と、中古住宅や中古マンションを購入して“自分仕様”にリフォームやリノベーションをする人が増えてきているのです。

近年は、住宅ローン控除がそうした中古人気にキャッチアップしてきています。

中古住宅向けの控除要件が大きく緩和

かつては中古住宅で控除を受ける場合、「木造建築なら築20年以内」というように築年数によって厳しく制限されていました。しかし、2022年の改正でこれが大きく緩和され、新耐震基準に対応していると見なされる「1982年以降に建てられた物件」であれば控除が受けられることになったのです。

さらに2026年の改正では、一定の条件を満たす「認定長期優良住宅(省エネ性能や耐震性に配慮し長期に亘って快適に住み続けられることを前提に設計され、所管行政庁によって認定された住宅)」「認定低炭素住宅(二酸化炭素の排出量を抑制するための仕組みや設備を備え、所管行政庁によって認定された住宅)」「ZEH水準省エネ住宅(Net Zero Energy House、住宅で消費するエネルギー量を太陽光発電などによる“創エネ”で実質ゼロにすることを目指す住宅)」の適用限度額が3000万円から3500万円に拡充されました。「省エネ基準適合住宅(断熱性、気密性、エネルギー消費性能などで一定の基準を満たす住宅)」だけは3000万円→2000万円のダウンとなります。

19歳未満の子どもがいる世帯や、夫婦の両方もしくはどちらかが40歳未満の世帯なら、さらに1000万円が上乗せされます。これらの住宅は控除の適用期間も13年となり、13年間で最大409万5000円の控除を受けることができます。

なお、省エネ基準に適合しない中古住宅の場合、適用限度額は2000万円、控除期間は10年と変更はありません。

さらに床面積要件も、新築と同じように所得が1000万円以下なら「40m²以上」に緩和され、使いやすくなっています(ただし、子育て世帯や40歳未満世帯の上乗せ措置を適用する場合は「50m²以上」です)。

税制面からも中古住宅が買いやすくなった

改正された制度は2030年末までに入居した場合に適用されます。これまでの中古住宅は「割安で同じ予算なら新築より条件のいい物件が選べるけれど、税制的には不利」という印象がありました。しかし、今回の改正を経て「税制面からも買いやすくなった」と言えるのではないでしょうか。

もちろん、住宅ローン控除はあくまで副次的なもの。金利が上昇局面にある今は、フルローンを極力避け、親族からの贈与や借り入れ、低金利の勤務先のローンなどをうまく活用しながら総返済額を抑えて月々の返済額を無理のない範囲に設定していく“資金計画”を立てることがより重要です。

ちなみに、親族からの借り入れの場合、利息を上乗せして返済していても住宅ローン控除は受けられません。一方、勤務先のローンは一定の条件を満たせば住宅ローン控除の対象になります。詳細は勤務先の担当部署に確認してください。

申告時に慌てないよう早めに証明書類を取っておく

最後に、実務上の注意点を1つ。

住宅ローン控除を受けるには、会社員も初年度は自分で確定申告を行います。ZEH水準省エネ住宅などで有利な控除を受けたい場合、中古住宅だと必要書類の取得がネックになります。ZEH水準省エネ住宅の証明には「住宅省エネルギー性能証明書」などの書類が必要ですが、中古住宅では当然ながら手元になく、申告に際して慌てて取り寄せるケースが少なくないようです。

申告に間に合わなかった場合はいったん省エネ区分で申告しておいて、書類が届き次第、税務署に提出するという“裏技”もあるようですが、こうした住宅を購入されるなら、業者に確認の上、入居や申告の前に準備しておくのが安心でしょう。住宅省エネルギー性能証明書は、国土交通省に認定された「登録住宅性能評価機関」や建築士法に基づく登録建築士事務所に属する建築士などに申請することで交付を受けられます。

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