コラムVol.203 後悔しない!今から始める福利厚生×資産形成〜企業年金・持株会・財形〜

- 小澤 良祐 (おざわ りょうすけ)
- 京都大学卒、大阪大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式や投資信託を始めさまざまな金融商品を運用する個人投資家、『ZUU online』などで投資の初心者に向けた記事執筆の担当を経て、2023年三菱UFJ信託銀行入社。「長期投資の威力」「家計の見直しから投資までトータルで考える」を普及させることが目標。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
4月は、多くの人にとって新しい生活が始まる季節です。
初めて給与を受け取る新社会人、環境が変わる転職者、第二のキャリアを歩み始める再雇用の方。環境が変わった際にチェックしたいのが、企業の福利厚生として準備されている資産形成制度です。企業の制度は、給与とはちがって見えづらく、知らないまま数年が過ぎてしまうということも珍しくありません。しかし、上手に活用すれば現在から将来まで、生活を大きく支える存在になります。
今回は、企業で用意されている代表的な資産形成制度を整理し、自身に合った活用方法のヒントをお伝えします(図表1)。
企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業型DCとは、従業員自ら運用することで老後の資産形成を行うための制度で、年々加入者数が拡大しています。
【特徴】
・企業が毎月掛金を拠出する ※従業員が追加で拠出(マッチング)が可能な場合も
・事業主の掛金は非課税となる ※マッチング拠出分は全額所得控除
・掛金をもとに、自身で運用商品を選択する
・運用益は非課税
・原則60歳まで引き出せない
制度の詳細は「企業型確定拠出年金(企業型DC)制度とは?」もご覧ください。
企業型DCでは、従業員全員が加入する場合と、加入を自身で選択できる場合があります。前者の場合、掛金は自動で積み立てられていきますが、制度を十分に理解しないまま運用を放置してしまうケースも見られます。その結果、「期待していたほど老後資産が増えていなかった」と将来後悔しないためにも、まずは制度の仕組みをしっかり把握してみてください。
後者の場合では、もう少し給与が増えてから始めようと考える方もいらっしゃるでしょう。もちろんそれも可能ではありますが、毎月の掛金額には上限があります。ですので、過去に拠出していなかった分を、後からまとめて拠出することはできないため、注意が必要です。また長く運用することで、複利的に資産が増えていくことになります。少額でも早く始めることで、より多くの老後資産が期待できるでしょう。
転職する場合には、前職の企業型DCの扱いに注意が必要です。前職での企業型DCは、何も手続きをしないと「自動移換」が発生し、資産は国民年金基金連合会に移換されます。移換されると資産は現金化され、運用ができません。さらに、移換時に手数料がかかるだけでなく、管理手数料が継続的に発生します。自動移換にならないようにするには、①転職先の企業DCへ移換②個人型確定拠出年金(iDeCo)へ移換という2つの方法があります。いずれの場合でも、前職の企業型DCの資格喪失月の翌月から6か月以内に手続きをする必要があります(図表2)。
再雇用の方は、企業型DCの継続性が重要なポイントです。再雇用後も企業型DCに加入を続けられるかは企業によって異なるため、まずはそれを確認します。加入を続けられず、引き続き確定拠出年金を活用したい場合はiDeCoへ切り替えることが選択肢になります。一方、60歳以降になり受給ができる方は、いつ、どのように受給するかも検討する必要があります。
確定給付企業年金(DB)・退職一時金制度(退職金)
先ほどのDCでは拠出 = 積み立てる金額が“確定”しているのに対して、DB・退職金は給付 = 将来受け取る金額の算定方法があらかじめ“確定”していることが特徴の制度です。
【特徴】
・将来の給付額があらかじめ決まる
・運用は企業が実施 = 従業員は運用リスクを負わない
DB・退職金は企業ごとに制度設計が異なっているため、あまり詳細を把握されていない方も多いかもしれません。いつのタイミングで給付され、どのくらいの金額が見込めるのか。会社説明資料や退職給付規程などを確認し、概要はぜひ把握しておきましょう。それをベースに、DCやNISAなど、ご自身でリスクを負う運用の方針を考えていくことができます。
転職(自己都合退職)する場合は、定年退職にくらべ給付額が減額される場合があるため、どのような条件の時に減額となるのか、将来のために確認しておくことをおすすめします。
従業員持株会
従業員持株会とは、自社の株式を定期的に購入する制度で、その際に奨励金を上乗せする企業も多くあります。たとえば1万円を拠出した場合、奨励金が10%であれば企業が追加で1,000円を拠出し、合計1万1,000円分の自社株を購入できることになります。このように、自社株をお得に積立購入できる制度です。
【特徴】
・自社株を定期的に少額で購入できる
・奨励金による上乗せがあることが多い
奨励金というメリットはもちろん、企業が株主に分配する利益(配当)や、株価上昇時の恩恵も享受することができます。目先の働きによる報酬が増えると考えると、モチベーションの向上にもつながります。一方で、この制度で購入できるのは自社株のみのため、投資先が集中してしまうことには注意が必要です。業績悪化の際には給与が減り、同時に配当も減り、株価下落の影響も受けるといったことにもなりかねません。全体の資産とのバランスを見ながら活用を考えてみてはいかがでしょうか。
財形制度
財形制度は、給与天引きで貯蓄できる制度です。投資信託などでの資産運用を行うのではなく、貯蓄による資産形成をサポートします。
【特徴】
・一般財形、住宅財形、年金財形の3種類がある
・一般財形は使いみちが自由
・住宅財形、年金財形は払出しの目的に制約があるが、一定額まで利子等が非課税になる
制度の詳細は「財形貯蓄とは?」もご覧ください。
給与天引きのため、貯蓄習慣づくりに向いている制度と言えます。また住宅の購入資金、老後の資産を区別して貯蓄していくことができるため、こうした目的への貯蓄には有効な手段となります。
資産形成制度だけではない、押さえておきたい福利厚生
直接的に資産形成を支援する制度をご紹介してきましたが、お金の面で活用できる福利厚生は他にもあります。
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住宅補助(賃貸料の支援など)
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団体保険(生命保険、医療保険などに安価に加入できる)
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健康保険組合による付加給付(高額療養費適用後の自己負担額をさらに軽減するために健保組合が行う上乗せ給付)
など
これらは資産を作るのではなく、支出を減らす側面から従業員を支える制度となっており、ライフプランを考える上では押さえておきたいところです。他にも企業によってはユニークな制度があったりするかもしれません。せっかく用意されている制度は、ぜひ積極的に活用していただきたいところです。
制度を知ることは“未来への投資”になる
企業の福利厚生はさまざま用意されているため、かえって複雑に見えてしまうかもしれません。しかし、仕組みを理解し活用すれば、将来の安心につながる強い味方になるものです。資産形成は時間をかけるほど有利となる、すなわちできるだけ早く始めることが鍵になります。新生活が始まる節目のタイミングで、制度の整理と活用を検討してみてください。
