コラムVol.61 つみたて投資にとって、相場が下落した時に一番大切なこと

2020年4月16日
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正岡 利之 (まさおか としゆき)
日本証券アナリスト協会検定会員。行動経済学会会員。
1982年三菱信託銀行(当時)入社。1985年より一貫して運用業務に従事し、2018年から2022年3月の退職までMUFG資産形成研究所長を務める。
内外債券のファンドマネジャー、国内株式のリサーチ、年金資産の運用管理、また投信会社での運用や商品開発など、運用に関する幅広い経験を有する。

つみたて投資にとって、相場が下落した時に一番大切なこと

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとして、株式市場を中心に、相場が大きく下落しました。時間をかけて積み上げてきた投資資産が一気に目減りして、含み損になるなど辛い思いをされている方も多いと思います。人の生死と関係するウイルスへの不安と相俟って、経済的な打撃も心配になります。いつまで続くか分からないし、まるで株価がゼロになるような錯覚にも襲われます。すぐにでも売却してしまいたい。そう思うのは、誰しも自然なことです。
しかし、NISAや確定拠出年金でつみたて投資を行う際に、このような下落相場で一番大切なことは継続することです。そして、避けなければならないことが、売却してしまうことです。逆にこういうときに継続しておけば、「安い価格を自然体で買い続けることができる」ことによって、相場が戻ったときにつみたて投資の効果を得ることができるのです。

過去のデータを参考として、具体的に見てみましょう。リーマン・ショックという言葉をご記憶の方が多いと思います。当時の株価を米国のNYダウ平均株価でリーマンの破綻前後でみてみると、高値から約54%下落しました。今回の新型肺炎による下落は40%弱です(2020/3/31現在)。
リーマンが破綻する前のNYダウの高値のところで、毎月のつみたて投資を開始した人がいるとします。相場の下落後、元の価格に戻るまでに65ヵ月かかりました。その人が下落相場の中で売却してしまえば、当然のことながらそこで損が確定してしまいます。しかし、諦めずに継続しておけば、36ヵ月で損が解消し、株価が元の水準に戻ると約30%の利益となったのです。これは、つみたて投資を続ければ、相場の動きに気持ちを振らされることなく、安い値段で淡々と買うことができたからです。これからつみたて投資を始める人にとっても、「チャンスが来ている」ということができるでしょう。

実は、2000年以降を例にとると、下図のように相場の大きな下落は何回も起こっています。その中で最大の下げ幅で、かつ元の価格に戻るまでに最も長い時間を要したのがリーマン・ショックです。ここで大切なことは、過去の実績では大きな下落相場でも、下がり続ける株式相場はなかった、ということです。

つみたて投資を継続した場合の、もうひとつのデータをご紹介しましょう。下図は、米国株式へのつみたて投資を20年間継続した場合の最終的な時価残高を示しています。つみたて投資を始めた年によって最終的な金額は異なりますが、元本240万円に対して平均で461万円となっていて、かつ1984年以降のどの年に始めたとしても利益になっています。

適切に分散しながら長期のつみたて投資を行うと、なぜこのように利益を得られる可能性が高まるのでしょうか。それは、株価の動きが経済を反映するからです。下図の青い部分のように、世界全体の経済規模は中長期的に成長しています。そして株価は、短期的に大きく上下に変動しながらも、中長期的には世界経済の成長に連動しています。つまり、永久に経済の規模が縮小をし続けない限り、株価は上昇していくということになります。

確かに現在は新型肺炎が拡大し、経済活動へのマイナスの影響が大きく、株式を中心とする市場も乱高下を繰り返しています。しかし、新型肺炎による影響は永久に続くのでしょうか?人類が必ずこれを克服し、再び成長への歩みを始めると信じるのであれば、つみたて投資は粘って続けるだけの価値ある仕組を備えているのです。

  • 文中のデータについては、すべてリフィニティブ(データストリーム)のデータから三菱UFJ信託銀行作成

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