コラムVol.148 真面目に考える『投資の必要性』 第19回 若者の投資ブームは、本物なのか?

2022年8月10日
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荒 和英 (あら かずひで)
1982年三菱信託銀行(当時)入社。1985年より為替ディーラー、ファンドマネージャー、エコノミストなど、資産運用の最前線で投資業務に携わる。25年以上にわたるキャリアを生かして、2011年からマーケットレポートの執筆や投資に関するセミナー講師、TV出演(BSジャパン「日経モーニングプラス」)や執筆活動(『資産活用いろはかるた“い”の巻、“ろ”の巻』)などを精力的に行っている。

「若い時の投資は買ってでもせよ(元句:若い時の苦労は買ってでもせよ)」

「若者の投資ブーム」という言葉を耳にする機会が最近増える中、実態を探るために「若者 投資ブーム」でキーワード検索してみた所、少し前では考えられないほど多くのページがヒットしました(単なる広告・宣伝や否定的な見解のページも少なくないですが・・・)。しかし、2020年以降は新型コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻、物価上昇と不安な出来事が続き、株式市場もあまり調子が良くないという逆風の環境下、若者は何故投資を始めているのでしょう?

図表1 NISA口座の新規開設数(四半期毎、単位:万口座)
図表1 NISA口座の新規開設数(四半期毎、単位:万口座)

出所:金融庁「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」データより三菱UFJ信託銀行作成

図表1はNISA(少額投資非課税制度)口座の四半期毎の新規開設数推移であり、前回「投資は、ギャンブルの一種なのか?」で書いたように、2014年1月にNISA制度が始まった当初の新規開設は60歳代以上が主役でした。その後、2020年になるとそれまで低水準であった20・30歳代の新規開設数が増え始め、2021年には過去最高を記録、40・50歳代も順調に増加しています。このように若年層がNISA口座を増やし始めたきっかけは、一体何なのでしょう?世間では、スマホを使った手軽な投資の浸透や投資原資となる新型コロナ特別定額給付金(10万円)の支給、アップルやアマゾン等の米国ネット関連株価上昇、投資YouTuberの影響など様々な要因が指摘されています。このような要因がきっかけだとしたら、投資増加は一時的な現象で終わってしまうのでしょうか?

NISAは2014年1月に始まり、2018年1月に積立専用の「つみたてNISA」がスタートして、「一般NISA」と新しい「つみたてNISA」の2本立てとなっています。両者の特徴を簡単にまとめると、一般NISAは非課税枠上限が年間120万円と大きく、投資対象は上場株式から様々な投資信託まで幅広いものの非課税期間は5年間と短い、一方のつみたてNISAは非課税枠上限が年間40万円、投資対象は専用の投資信託に限定されますが非課税期間は20年間と長くなっています(なお、2024年1月から「新しいNISA(1階部分は「つみたてNISA」、2階部分は「一般NISA」の2階建て)」が開始され、以降は「新しいNISA」と「つみたてNISA」の2本立てに変わります。詳しくは、金融庁のHPをご参照ください)。

図表2 20・30歳代のNISA口座新規開設数の内訳(四半期毎、単位:万口座)
図表2 20・30歳代のNISA口座新規開設数の内訳(四半期毎、単位:万口座)

出所:金融庁「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」データより三菱UFJ信託銀行作成

そこで、2020年以降の若年層の投資実態を知るために、図表2で20・30歳代のNISA口座新規開設数の内訳を見てみると、大部分はつみたてNISA口座で占められています。何故、若年層はつみたてNISAを選んでいるのでしょう?

「積めば都(元句:住めば都)」

若年層がつみたてNISAを選んでいることは、最近の投資増加が一過性のブームで終わらない可能性を示唆しています。何故なら、積立投資は長期投資を続けるための王道だからです。

図表3 一般・つみたてNISA口座の投資実績(2020年)
図表3 一般・つみたてNISA口座の投資実績(2020年)

出所:金融庁「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」データより三菱UFJ信託銀行作成

図表3で一般NISAとつみたてNISAの2020年投資実績を比較すると、両者の運用スタイルの違いが明確になります。まず、@の年間買付金額は一般NISAがつみたてNISAの約3倍になっていますが、一般NISAのように金額が大きくなると売買が思うようにできなくなる危険性も高まる点に注意が必要です。たとえば、多額な購入を一括で行う一般NISAの場合、先行きが不安で購入の決断ができない結果、いつまでも始められなくなることは珍しくありませんし(Aのカラ口座比率が高い)、購入できたとしても、少し値上がりしたら儲けを確定したくなってしまいます(Bの年間売却額/買付額比率が高い)。このような運用スタイルの一般NISAは、一定の資産を持ち運用経験が豊富な投資家が短期投資で使うことが多いのに対し、少額の積立投資を毎月続けるつみたてNISAは始めやすく続けやすいため、長期投資を本気で始めたい初心者に向いているのです。

図表4 投資に関するアンケート結果
図表4 投資に関するアンケート結果

出所:日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」、投資信託協会「投資信託に関するアンケート調査報告書」データより三菱UFJ信託銀行作成

図表5 総人口に占めるNISA口座開設者の割合
図表5 総人口に占めるNISA口座開設者の割合

出所:金融庁「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」、総務省「人口推計」データより三菱UFJ信託銀行作成

2020年以降の不安な状況において若年層がNISA口座を新規開設した背景は、「将来が不安だからこそ、投資を始める」という逆転の発想かもしれません。その証拠に、図表4のアンケート結果を見ると、2020年を境に@「証券投資を必要と思う」割合が上昇し、A「投資信託に興味がない」人が減少するなど、投資に対する若年層の意識が変化しています。そして、図表5の総人口に占めるNISA口座開設者の割合も、20歳代は2019年末の5.8%(約17人に1人)から2021年9月末の11.0%(約9人に1人)へ、30歳代は11.7%(約9人に1人)から18.6%(約5人に1人)へ上昇しました。残念ながら、ブームと呼べるほど普及率は高くありませんが、集団の一定割合が動くと残りも追随する日本人の「横並び意識」を考えると、将来若年層の投資が本物のブームになる可能性は残っていると思われます。

私が投資ブームを期待している理由は、若年層が積立投資という長期投資の王道を歩んでいるからです。投資成果を決めるのは「投資元本・運用利回り(リスク)・投資期間」という3つのエンジンですが、時間に余裕のある若年層が最初に検討すべきは、投資期間のエンジンを使う長期投資なのです。次回は、この「投資の3つのエンジン」について考えてみます。

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