コラムVol.200 マネーライターの取材裏話――マネー誌に書かなかったこと&書けなかったこと 市場が注目する2026年の大イベント、アメリカ中間選挙とは?

2026年1月14日
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森田 聡子 (もりた としこ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、地方紙勤務を経て日経ホーム出版社、日経BPにて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は書籍や雑誌、ウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に対し、難しい投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく「書く」(=ライティング)、「見せる」(=編集)ことをモットーに活動している。著書に『節税のツボとドツボ』(日経BP)、編集協力に『マンガ 定年後入門』(日本経済新聞出版社)、『教科書には書いてない 相続のイロハ』(日経BP)。

2025年は日米とも積極財政派トップの就任で株高に

2025年はアメリカでドナルド・トランプ大統領、日本では高市早苗首相という積極財政派のトップが就任し、トランプ大統領の関税政策による混乱があったものの、アメリカは利下げ(金融緩和)の実施、日本は財政拡張への期待による“高市ラリー”で株式市場は最高値を更新する展開になりました。

そうした中、2026年の政治イベントで投資家が注目するのが、11月に行われるアメリカの中間選挙です。

アメリカ連邦議会の勢力図を大きく変える中間選挙

中間選挙とは、4年に1度の大統領選挙の「中間」、つまり、大統領の任期2年目に実施されるアメリカの連邦議会の選挙を指します。

連邦議会は日本と同じ2院制で、日本の参議院に当たる上院と、衆議院に当たる下院があります。上院議員100人の任期は6年となっており、2年ごとに約3分の1が改選となります。一方、下院は全435議席で、任期は2年です。

中間選挙では上院の3分の1と下院の全議席が争われます。同時に州知事選などの地方選挙も行われ、大統領選の狭間の政治イベントとして存在感を高めています。

その時点の大統領の政策が争点になることも多く、中間選挙が「大統領の通信簿」と呼ばれる所以です。

中間選挙イヤーにもアノマリーがあった!

大統領選の年やその翌年は株価が上がりやすい傾向がありますが、実は、中間選挙の年にもアノマリー(市場の経験則)が存在します。

中間選挙の年は押しなべて、選挙後のパフォーマンスが良いようです。日本の金融機関の調査によると、1942年から2018年までに実施された20回の中間選挙では、選挙の翌年末のニューヨークダウ30種平均株価が、選挙の前日を下回ったことは一度もないというのですから驚きです。

平均騰落率は+18%でした。先の金融機関は、中間選挙の結果を受けて大統領が次の選挙に勝利するために積極的な政策を打ち出した影響が大きいと分析しています。背景には、中間選挙では大統領の属する政党が大量の議席を失いやすいという「野党優勢」のジンクスがあります。

第1次トランプ政権下の中間選挙のトラウマ

たとえば、2018年の第1次トランプ政権下で実施された中間選挙では、大統領率いる共和党は上院こそ多数を維持したものの、下院では野党・民主党が41議席を増やし8年ぶりに多数党に返り咲くという“ねじれ”現象が起きました。

おかげで政権運営に支障を来し、当時の目玉政策だったメキシコ国境の壁の建設などは実現が困難になったという経緯があります。それどころか、トランプ大統領自身が複数の不正容疑で2度の弾劾を受けました。その結果、2020年の大統領選挙では共和党から民主党への政権交代が行われました。

一方で、中間選挙後の2019年、トランプ大統領が自国第一主義政策(アメリカ・ファースト)を強化し米中貿易摩擦が逼迫してアメリカ経済が先行き不透明感を増したことから、FRB(米連邦準備制度理事会)が連続して利下げを行い、同年の株式市場の主要3指数(ニューヨークダウ30種平均、S&P500、ナスダック)は揃って2ケタの上昇となったのです。

ちなみに、過去の中間選挙を振り返ると、2006年(共和党ブッシュ政権)は31議席、2010年(民主党オバマ政権)に至っては63議席、当時の野党が下院の議席を増やす躍進を遂げています。なお、直近の2022年(民主党バイデン政権)は与野党の勢力が拮抗しており、野党の共和党は9議席増にとどまりました。

トランプ大統領にとっては“不吉な前兆”が

足下の状況を見ると、第2次トランプ政権は、アメリカ国民からあまり支持を得られていないようです。大手メディアの支持率調査では不支持が支持を大きく上回り、共和党自体の支持率も2025年後半には民主党に差を広げられています。

それを証明する形になったのが、11月に行われた首長選挙です。トランプ大統領のお膝元のニューヨークの市長選で、当初は無名候補だったイスラム教徒で急進左派の34歳のマムダニ氏が家賃値上げの凍結を公約に掲げて当選するなど民主党候補が躍進を遂げました。

「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ大統領の高関税政策による景気の下振れ懸念は払拭されず、このままだとトランプ2.0の通信簿は厳しい結果となりかねません。

そこでトランプ大統領は2018年の悪夢の再来を阻止すべく、人気回復に躍起になっている模様です。2025年も雇用統計の数値が「現政権を悪く見せるための民主党の陰謀」だと決め付け労働省の担当局長をクビにし、FRBには利下げを強要するなど、その強権発動ぶりが幾度となく報道されてきました。

仮に中間選挙が2018年の再現となった場合、自身の3選は法改正に時間を要することから諦めたようですが、「民主党に次期大統領の座を渡すくらいなら」となりふり構わずあっと驚く起死回生の政策を打ち出してくる可能性は少なくありません。

そうはならなくても、「過去の事例から、大統領と議会が“ねじれ”の状態にある時は株価が上がりやすい」という専門家の指摘もあります。

サテライト投資は2026年の後半が本番?

中間選挙のアノマリーに基づけば、2026年の8月から10月頃にかけては“仕込みのチャンス”となりそうです。

ただ、いくら強固なアノマリーが存在するとはいえ、主役はあのトランプ大統領ですから、シナリオどおりにいかないことも想定されます。ロシアとウクライナ、中東に加え、高市首相の国会答弁を受けて日中関係の緊張が強まるなど東アジアの地政学リスクも依然高い状態が続いているので注意が必要でしょう。

また、この原稿を読んでくださっている方には「釈迦に説法」ですが、投資は長期と中短期に分けて考えるべきで、つみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの長期投資では、数年単位の動きは後年振り返れば株価チャートの“さざ波”に過ぎない可能性が大です。

しかし、コア資産に対するサテライト資産を活用して相場上昇の果実を取っていこうと考える方なら、2026年は投資テーマの1つとして中間選挙に着目するのもいいかもしれません。

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