コラムVol.26 外国資産に投資する投資信託の価格変動要因

2018年6月15日
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古徳 佳枝 (ことく よしえ)
東京大学卒業後、日興證券に入社。投資信託・投資教育業務等に携わった後、2002年退社し、東京大学大学院にて「大学におけるパーソナルファイナンス教育」に関する研究を行う。その後、野村アセットマネジメントに入社、投資信託のセミナー講師等を担当。2011年同社退職後は、金融経済教育インストラクターとして、大学生・高校生向けの金融経済教育の講師や確定拠出年金導入企業の社員向け説明会の講師等を中心に活動している。

外国株式や外国債券に投資する投資信託の場合、国内資産に投資するタイプと比べて、価格変動要因が多く、複合的になります。以下では、それらの価格変動要因をマトリックスでまとめて確認してみます。

外国株式型ファンドの価格変動要因

外国株式ファンドでは「投資対象国の株価変動」「投資対象国の通貨の為替変動」の2つが大きな価格変動要因となります。

・投資対象国の株価変動
一国の株式市場全体の動きを示す株価指数は、その国の経済ファンダメンタルズ(経済成長率、物価動向、財政収支等)や金利動向、指数を構成する企業の業績動向などによって変動します。一国ではなく、先進国や新興国、世界全体など、複数の国を組み合わせて投資する投資信託もありますので、その場合、どの国の株式に何%投資するかによって全体の動きが決まってきます。
また株式投資による収益には、株価の上昇・下落以外に、配当収入があります。特に長期投資においては、配当収入の積み上げが期待できますので、その国の平均的な株式配当利回りが何%なのかも大切な収益源となります。

・投資対象通貨の円に対する動向
外国株式に投資する投資信託では、株価変動だけでなく、投資対象通貨の動向にも影響を受けます。ただし投資信託によっては、為替変動リスクを回避するため為替ヘッジを行うタイプや通貨を選択するタイプもあります。以下では、為替ヘッジを行わず、投資対象国の通貨で運用する場合を考えます。
例えば、米国株式に投資する投資信託では、円を米ドルに換えて投資していますので、投資した後、円高・米ドル安になると、米ドル建ての株価を円換算した時価は目減りすることになります。逆に円安・米ドル高は円換算価格のプラス要因になります。
為替レートは、日本とその国の金利差、貿易動向、インフレ率の差、政治的要因、金融政策など、さまざまな要因によって変動します。また為替の変動幅は、時として株価変動以上に大きくなることもあります。

<図1>外国株式型ファンドの価格変動要因
<図1>外国株式型ファンドの価格変動要因

(表中の印は ◎:ファンド価格上昇、△:ファンド価格はプラスもマイナスもある、×:ファンド価格下落)

<図1>の株価上昇(A)の上段のように、投資対象国の株式市場が値上がりし、かつ投資対象国の通貨が値上がりすれば(円安・外貨高)、ファンド価格は株価上昇率以上の値上がりが期待できます。しかし下段のように、株価が上昇しても、それ以上の率で円高が進むと、ファンドとしては損失が生じてしまうことになります。
逆に、その国の株価が下落した(B)の場合でも、上段のように円安になれば、ファンドがプラスになる場合もありえます。下段のように、株価下落と円高が同時に進行すると、ファンド価格は下落します。
外国資産に投資する投資信託では、投資対象国のファンダメンタルズだけでなく、投資対象国の通貨が円に対してどう動くかも、あわせて考える必要があります。

外国債券型ファンドの価格変動要因

外国債券ファンドの主な価格変動要因は、投資対象国の「金利水準」「金利変動」「為替変動」の3つです。
これらをまとめたファンドの価格変動に与える影響のマトリックスが<図2>です。

<図2>外国債券型ファンドの価格変動要因
<図2>外国債券型ファンドの価格変動要因

(表中の印は ◎:ファンド価格上昇、△:ファンド価格はプラスもマイナスもある、×:ファンド価格下落)

・投資対象国の金利水準
<図2>の最上段「その国の金利水準」は、債券を保有することで受け取ることのできる利子収入が何%かです。国によって金利水準は異なります。ファンドにとっては常にプラスの収益となり、特に長期投資においては重要な収益源となります。

・投資対象国の金利変動
<図2>の右上「債券の価格変動」は、市場金利が上昇すれば下落し、市場金利が低下すれば上昇します。金利水準が高い国の債券でも、投資した後に金利が上昇すれば、得られる利子収入よりも、価格変動による損失が大きくなってしまうこともあります。各国の金利政策・金利動向を確認しましょう。

・投資対象通貨の円に対する動向
<図2>の左の「為替変動」は、外国株式と同じです。円安・外貨高はファンド価格のプラス要因、円高・外貨安はマイナス要因となります。

これらを複合的に考えると、表中の◎は、「金利低下」「円安・外貨高」によってファンド価格が上昇し、表中の×は「金利上昇」「円高・外貨安」でファンド価格が下落する(利子収入以上のマイナスとすると)ことになります。表中の△は、プラス・マイナスのどちらの率が大きいかで決まります。
このとき注意すべき点は、一般に債券は株式に比べて価格変動が小さい(リスクが低い)ということです。その分、相対的に為替変動の影響を受けやすいともいえます。
外国債券投資においては、その国の現在の金利水準だけではなく、今後の金利動向、そして為替変動もファンド価格に影響を与えることを理解して投資しましょう。

・その他の価格変動要因
また債券は、「満期までの年限」や「格付け」などによって価格変動の特性が異なります。
長期債と短期債では、金利変動による影響は長期債の方が大きくなりますので、金利上昇局面では、長期債ファンドは、短期債ファンドよりも大きく値下がりし、金利低下局面では、より大きく値上がりする可能性があります。
また格付けが低い会社の場合、財務内容に不安があり、投資したお金が返ってこなかったり利息が払われなかったり、というリスクがある分、格付けが高い債券と比べて、高めの金利を投資家に支払います。このような格付けの低い債券はハイ・イールド債といわれます。ハイ・イールド債を組み入れている投資信託は、債券の発行体が破たんしなければ高い利回りが得られますが、景気の悪化などで発行体の破たんや債務不履行が生じれば、組入れ債券の価値がゼロになったり、価格が下落したりして、投資信託の価格低下要因になります。

国内資産だけでなく外国資産にも投資を行うことは、より幅広い分散投資という観点から有効な戦略です。外国資産に投資する際は、複合的なリスク要因を理解した上で、長期的な視点で活用していくと良いでしょう。

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