コラムVol.33 『信託クエスト』制作秘話

2018年12月26日
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平川らいあん (ひらかわらいあん)
ゲームクリエイター、シナリオライター。大手ゲーム会社でゲームディレクションを多数手がけ、その後独立。株式会社Megg(ミグ)代表取締役。独立後は複数の会社のゲーム開発に携わる。専門学校にて企画シナリオ講師やゲームを題材とした小説の執筆も行う。「お金の、育て方」内で配信中の「信託クエスト」のシナリオを担当。著書に「ゲームシナリオの教科書 ぼくらのゲームの作り方」、「ゲームプランとデザインの教科書 ぼくらのゲームの作り方」(ともに共著・秀和システム)がある。

大人気ゲーム「信託クエスト」を振り返る!

はじめまして。ゲームクリエイターの平川らいあんと申します。「お金の、育て方」内で「信託クエスト」というゲームで、お金について学べるコンテンツのシナリオを担当させていただきました。
「信託クエスト」とは昔懐かしいレトロな雰囲気のテキスト型ロールプレイングゲームです。
あなたは勇者となって、魔王を倒すべく旅に出ます。まず王様から旅の資金となる100ゴールドをもらうのですが、王様から衝撃的な報告があります。
「魔王を倒すまでに、宿には300泊ぐらいするじゃろう。1泊50ゴールドとしても、15,000ゴールドは必要じゃ。武器は、少なくとも65,000ゴールドの王者の剣がないと勝てんじゃろう。」
…本来なら魔王を倒すためのヒントを教えてくれるはずなのですが、いきなりお金の話です。書いた自分でもびっくりです(笑)

確かにロールプレイングゲームでもお金は重要です。一般的なロールプレイングゲームでお金を稼ぐ方法は、モンスターを倒したり、アイテムを売ったり、宝箱から獲得したりですが、そこは信託クエスト。信託銀行で投資信託を売買するなどして資産形成ができます。
投資信託は、ゲーム内の国の情勢で価値が増えることも減ることもあります。モンスターを倒して平和な世界を目指しつつ、資産も増やしちゃおうというゲームです。
昨年2017年9月に第1章を配信開始してから、2018年3月配信の第3章で完結しました。
「旅立ち」から「魔王との対決」、さらにその先の「未来」まで描いた壮大な物語です。是非ともラストまでご覧ください!…ちょっとバッドエンド(注:目指した目的とは違う結末のこと)の数が多すぎてラストまで行けた人いるのか心配です(笑)やりすぎました(反省)

信託クエストの画面
信託クエストの画面

「信託クエスト」の魅力について、熱く語りましたが、この『知っておいて損はない「お金の話」』では「信託クエスト」の制作秘話と、クリエイターのお金の話をせきららにお話しちゃいます。

「信託クエスト」は、どうやって生まれた?

取引があった会社より「信託銀行のサイト内を案内するチャットボットを提案するための文章を書いてほしい」という依頼があり、サンプルを書かせていただくことになりました。
チャットボットでサイト内を案内というのは、
例えば、

iDeCo(イデコ)加入資格診断を行えます。はじめますか?

はい

60歳未満の厚生年金保険の被保険者ですか?

いいえ

申し訳ございません。個人型年金のiDeCo(イデコ)への加入資格がありません。

というような感じです。はじめはすごく真面目な文章の依頼だったのです。

当初のチャットボットサンプル
当初のチャットボットサンプル

サンプルを書きながら、子供の頃よく読んだ「ゲームブック」に似ているなと思っていました。「ゲームブック」とは本を読んでいくと「モンスターが現れたどうする?」「1.たたかう→23ページへ」「2.逃げる→25ページへ」のように選択肢が出てきて、選択した内容によって物語の展開と結末が変わる本です。

ちょうど依頼元の会社の方から「物語性があっても面白いかもですね」という話もあり、ドット絵(注:コンピューターの四角点(ドット)の集合体で書かれた絵)の王様を登場させたロールプレイングゲーム風のサンプルを作成しました。
サンプルを作ってる時も楽しくて、あっという間に今とほぼ同じ形のサンプルができました。
2つのサンプルを提示したところ、ロールプレイングゲーム風が面白いということになり実現することに!すぐにサンプルを膨らませた試作版を作成しました。
ところが…、あんまり反応はよくありませんでした…。
ノリノリで書いただけにショックでした(笑)。

信託銀行が提供するコンテンツということで、真面目な内容にしてしまったため、遊び心が少なく全体的に広告っぽく見えてしまうということでした。
「信託銀行提供のコンテンツという点は気にせず物語として楽しめるものに。」という方向になり、思いっきり好きに書かせていただきました。もちろん節度がある程度に(笑)
その結果、モンスターにボッコボコにされたり、カジノに行けたり、バニーちゃんのムフフがあったりとたくさんの遊びの要素を入れることができ、物語として楽しめるものになったと思います。
そんなこんなで、無事「信託クエスト」は日の目を見る事ができました。おかげさまで多くの方にプレイしていただき、メディアにも多数掲載していただきました。

その結果、第3章まで作らせていただき、「旅立ち」から「仲間との出会い」、「結婚」「転職」、そして「魔王との対決」、さらにその先の「未来」まで描くことができました。
是非最後までプレイしてみてください。投資信託の「長期・積立・分散投資」による資産形成について、少しでも考えるきっかけになれば幸いです。バニーちゃんのムフフも探してみてくださいね。ヒントは第1章の「ローの鏡」を…です!

次回から、クリエイターという職業のお金の話や私が独立した際に行った投資についてお話します。

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