コラムVol.73 地方クリエイターの仕事とお金の話7「地方の現実とライフプランの変化」

2020年8月17日
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平川らいあん (ひらかわらいあん)
ゲームクリエイター、シナリオライター。大手ゲーム会社でゲームディレクションを多数手がけ、その後独立。株式会社Megg(ミグ)代表取締役。独立後は複数の会社のゲーム開発に携わる。専門学校にて企画シナリオ講師やゲームを題材とした小説の執筆も行う。「お金の、育て方」内で配信中の「信託クエスト」のシナリオを担当。著書に「ゲームシナリオの教科書 ぼくらのゲームの作り方」、「ゲームプランとデザインの教科書 ぼくらのゲームの作り方」(ともに共著・秀和システム)がある。

ライフプランを考える

ゲームクリエイターの平川らいあんです。2017年に20年過ごした東京から地元、九州の宮崎県宮崎市にUターンしました。地方クリエイターとなった私が地方での仕事とお金のお話しをさせていただいております。今回で7回目となりました。地方に拠点を移した理由は大きく3つありました。

宮崎県宮崎市に拠点を移した理由

「ワークライフバランスの改善」ついては、東京では仕事ばかりで休みを取れない日々だったのが、仕事の量をコントロールすることができ、休みも取れるようになりました。通勤時間や打ち合わせの移動時間が短縮できたのも大きかったです。

「将来を見据えた新しいことへの挑戦」「宮崎のゲーム好きのための環境をつくりたい」については、ボードゲームが遊べるカフェをオープンしました。たくさんのお客さんに来ていただき、街中でゲームイベントも開催することができました。

ボードゲームカフェを経営しながら、ゲームの仕事も続け、シナリオや本の執筆などの仕事をさせていただきました。しかしながら、売上は東京の頃と比べ3分の1まで落ちていました。大規模なゲームの開発やディレクションが遠隔だと難しいこともあり、単発の仕事が多く、収益は安定しません。売上が落ちていても宮崎では生活はできています。しかし、将来のライフイベントを考えるとちょっと不安です。東京と宮崎でかかる費用とライフプランについて改めて考えてみました。地方に移住を考えている方の参考になれば幸いです。

地方の現実

東京と宮崎の生活で大きく違う点は「家賃が安い」「生活に車が必要」です。田舎の方が、食品や外食が安いイメージがありますが、そんなに変わりません。例えば宮崎市のランチは800円〜1000円が平均です。東京とほぼ変わらないですね。東京の方がワンコインランチなどお得な所も多いですし、牛丼や蕎麦のチェーン店なども見渡せばすぐに見つかります。食品は、野菜や魚介類など安いものもありますが、全部が安いというわけではありません。同じ値段でも地元の新鮮な食材は美味しいので、手軽に手に入るのは嬉しいですね。

圧倒的に違うのは「家賃」。例えば東京23区内で、家族で住むために2LDKの間取りを探すと16万円ぐらいからが相場ですが、宮崎市だと5万円ぐらいからあります(不動産サイトの平均値情報より)。さらに駐車場込みの物件も多く、駐車場別でも5,000円〜8,000円ぐらいで付けられます。家賃は大きな比重を占める固定費なので、安いと助かりますし、不安も少なくなります。

家賃が安い分、収入が少なくても生活していけますが、宮崎は月収が全国最下位です。都会に比べて生活が楽とは言い切れません。

都道府県別賃金(月収)

求人の量は、宮崎市ではある程度ありますが、業種は少ないです。例えばゲームを開発している会社は2社あると言われていますが、求人はありません(2020年6月26日現在)。クリエイティブな仕事は少ないですが、農林漁業などは、都会よりも多くあります。地方への移住を考えている方は、やりたい業種の仕事があるのか、確認した方がいいでしょう。

宮崎県の業種の割合など詳細は宮崎県のWebサイトをご確認ください。
宮崎県:【国勢調査】1職業

もう一つが「生活に車が必要」です。都会だと駅の周りにお店も会社も集まっていて、電車やバスで近くまで行くことができますが、宮崎だと宮崎市中に散らばっています。例えば牛丼チェーン店YからSまで車で10分かかります。東京だと駅の周り徒歩5分圏内にだいたいありますよね。特に会社は広く点在しているので、通勤にも車を使う人がほとんどです。このように生活に車は必須なので、車の維持費とガソリン代がかかってきます。その分、通勤時間は短く、宮崎は全国で1番短いと言われています(H23年総務省社会生活基本調査より)。利便性、かかる費用、時間。都会と地方での大きな違いです。

宮崎に来て約1年後。ボードゲームカフェは終日満員で嬉しい悲鳴。しかし、広さがないために売上の上限は見えており、これ以上は見込めなくなってきました。残念ながら、完全に人に任せるほどの収益はありません。
このまま続けて大丈夫だろうか。そう迷っている時に大規模なゲームの開発依頼が来ました。そこで思い切って、ボードゲームカフェを閉じて、ゲームの開発に集中することを決意。収益が安定したら事業の規模を少し大きくして、広いボードゲームカフェやゲームイベントを本格的にやろうと考えたのです。

空が大きくて、夜は星が綺麗で、風が心地よい。そんな宮崎でもう少しがんばりたい。そのためには、より一層の努力と工夫が必要だと感じ、思い切って決意しました。しかし決意してすぐに大きな出来事が起きます。一体何が起きたのか。次回お話しさせていただきます。

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