コラムVol.81 地方クリエイターの仕事とお金の話9「地方と都会の時間」

- 平川らいあん (ひらかわらいあん)
- ゲームクリエイター、シナリオライター。大手ゲーム会社でゲームディレクションを多数手がけ、その後独立。株式会社Megg(ミグ)代表取締役。独立後は複数の会社のゲーム開発に携わる。専門学校にて企画シナリオ講師やゲームを題材とした小説の執筆も行う。「お金の、育て方」内で配信中の「信託クエスト」のシナリオを担当。著書に「ゲームシナリオの教科書 ぼくらのゲームの作り方」、「ゲームプランとデザインの教科書 ぼくらのゲームの作り方」(ともに共著・秀和システム)がある。
地方と都会の時間
ゲームクリエイターの平川らいあんです。2017年に20年過ごした東京から地元、九州の宮崎県宮崎市にUターンしました。地方クリエイターとなった私が地方での仕事とお金のお話しをさせていただいております。今回で第9回目となりました。
地元宮崎に戻り、テレワークでゲームの仕事を続けながら、新しい試みとしてボードゲームが遊べるカフェの営業にも挑戦してきました。色んなことをやりながらも東京にいる時と違ってプライベートも充実。ワークライフバランスの改善にも成功しました。
そこには、明らかに変わったものがありました。それは「時間の使い方」。
よく地方の人はのんびりしているとか、時間の流れがゆっくりしているとか耳にすることがあります。確かに地方は時間の流れが違います。それは時間の使い方が違うからで、のんびりしているのとはちょっと違うかなと。今回は、地方と都会の時間についてお話しします。実際に住んでみないと分からないことがたくさんあります。時間についてもその1つ。地方か都会かを選択する際の参考になれば幸いです。
時間の使い方の変化
宮崎は、圧倒的に待ち時間が少ないです。逆に言うと東京は待ち時間が長い。特に銀行窓口、病院、携帯ショップ。地方から東京に、遊びに行く場合や滞在時間が短い人は気をつけてください。銀行は25日や月末などは数時間待つこともあり、昼過ぎに行ったら当日の処理に間に合わないことも。携帯ショップは機種変更すると半日はかかりましたね。宮崎で機種変更したら1時間ちょっとで終わりました。病院に関しては、病院によっては地方でも時間はかかりますが、宮崎市は、病院数、病床数も全国平均よりもだいぶ多く、東京に比べれば待ち時間は短いです。

待ち時間が少ないと時間を有効に使え、予定も立てやすいので助かります。東京で銀行窓口に行く日は、どれくらいかかるか分からないので、予定も入れられませんでした。
宮崎は「日向時間」という言葉があり、時間にちょっとルーズな所があると言われています。確かに10分ぐらい遅れることはよくあります。仕事としてはありえないですが、そこには理由がありました。ちなみに「日向時間」の名誉のために言っておくと、その昔、宮崎は自然や動物との仕事が多く、さらに日が長いため正確な時間で動く必要がなかった名残とのことです。また、全員がルーズな訳ではありませんのであしからず。
「10分ぐらい遅れることはよくある」については、車社会であることに理由があります。電車は本数も利用者も少ないので、駅の周りにお店や会社が集まっていません。都会の街とは作り自体が違い、移動にはほぼ車を使います。車での移動は、天候やその他の影響で道の混雑状況が変わるので時間が読みづらいのです。さらに駐車場が空いてなかったり、駐車場を探したりして遅れることもあります。
東京であれば、最寄りの駅に早めに行ってカフェやコンビニで時間をつぶせますが、宮崎では時間をつぶせる場所が少ないため、ちょうどいい時間を目指すと少し遅れることが多くなるのです。宮崎の人は理解しているので、時間に関しては寛容なことが多いです。もちろん時間を守ることにこしたことはないですが、理解してくれると思うだけで気持ちは楽になります。
東京では時間を気にすることが多かったです。電車の時間や、打ち合わせ先への移動時間、ランチは席が埋まっていて昼休みの時間を意識しながら急いで食べ、飲みに行ったら終電の時間を気にかけながら、といった具合に。宮崎では通勤時間は短く、お店で並ぶことはほぼありません。車なら電車の時間を気にする必要もありません。逆に東京は、交通機関が発達しているので、車がなくてもどこへでも行けます。お店も多く、なんでもすぐに手に入り便利です。ネットショップが発達していても宮崎だと届くのに2日から3日かかります。物が必要な仕事であれば、大きなロスになるでしょう。
時間の使い方が変わると、生活が一変します。毎日電車で1時間かけて通勤していたのが、車で10分に変わるとどうでしょう。朝の準備から仕事が終わってからの行動すべてが変わります。私は、電車の中で本を読むのが好きだったのですが、宮崎では本を読む機会が減りました。ちょっと残念です。その分、新しいことに挑戦したり、好きな人たちと過ごしたりする時間は増えました。
やりたいこと、好きなことに時間をかけられる環境かどうか。それが地方か都会かを選択する際に重要なのかもしれません。