コラムVol.88 マネーライターの取材裏話――マネー誌に書かなかったこと&書けなかったこと 今年の投資勝ち組は“日本語脳”!?

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森田 聡子 (もりた としこ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、地方紙勤務を経て日経ホーム出版社、日経BPにて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は書籍や雑誌、ウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に対し、難しい投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく「書く」(=ライティング)、「見せる」(=編集)ことをモットーに活動している。著書に『節税のツボとドツボ』(日経BP)、編集協力に『マンガ 定年後入門』(日本経済新聞出版社)、『教科書には書いてない 相続のイロハ』(日経BP)。

今年の投資勝ち組は“日本語脳”!?

最近の投資家仲間とのチャットで盛り上がったのが、「英語脳」と「日本語脳」の話題です。

英語脳と言っても、「英語を流暢に操る脳」という意味ではありません。英語の文型が「主語+述語+目的語」に副詞や形容詞が加わる形で秩序立てて構成されていることから、論理的な思考を好み、何事も明確にしてほしいタイプのことを指します。「左脳型思考」とも言い換えられるでしょう。
これに対し、日本語には主語のない文章がいくらでもありますし、時には述語が省略されることも。ですから、会話の中から「誰が」なのか、「何をした(する)」なのかを読み取る必要があり、こうした能力に長けた想像力豊かな直観力の鋭い人が「日本語脳」の持ち主ということになります。こちらは「右脳型思考」ですね。

常識的に考えると、英語脳の人のほうが投資には向いていそうな気がします。ところがどっこい、チャット仲間の現在の勝ち組の多くは日本語脳だったのです(こちらのほうが、母数が多いということもありますが)。
そうなった背景の1つに、最近の相場がセオリー通りに動いていないことが挙げられるように思います。
この記事をお読みの方の中には、「そもそも、セオリーって何?」という方もいらっしゃるかもしれませんので、簡単にご説明させていただきます。

株式相場は気まぐれに動いているように見えますが、その動向は一定の法則性を持っています。例えば、株式相場には「アノマリー」と呼ばれる季節要因があります。
「Sell in May.(5月には株を売れ)」という格言を目にしたことはないでしょうか?日経平均株価や米国の代表的な株価指標であるニューヨークダウ工業株30種平均は、例年だと5月に高値を付け、夏場にかけて下降していく傾向が見られます。理由としては、米国で税金の還付が5月で終わるから(5月までは還付金を元手に投資するので相場が強いという意味合いです)、あるいは、金融機関が年度末や中間期末の6月に向けてポジションを減らすから、といった解釈がなされています。

ちなみに、英国にはこの格言の続きもあるそうです。「Don’t come back until St. Leger Day.(セント・レジャー・デイまでは相場に戻ってくるな)」。セント・レジャー・デイとは9月の第2土曜日のことで、この日、英国のドンカスター競馬場では日本の菊花賞のモデルになったセント・レジャー・ステークス(クラシック三冠・牝馬クラシック三冠の最終戦)が開催され、英国中が大きく盛り上がります。
株式相場は7〜8月は“夏枯れ”となりますが、9月に底を打つと、そこから年末にかけて上昇していく年が多いのです。だからこそ、9月中旬以降に株を買え、という教訓です。

こうしたアノマリーがあまり当てはまらなくなってきたのは、米国にドナルド・トランプ大統領が誕生して以降です。中国やイラン相手に手荒な外交を繰り広げ、いくらSNS全盛時代とはいえ、重要な政策や人事をいきなりツイッターで発信する大統領に、市場は振り回されてきました。
トランプ大統領の場合、企業税の減税や、米国の多国籍企業の海外留保資金を米国内に還流する際の税金を大きく優遇する「レパトリ減税」など、株価への正のインパクトも少なくないのですが、株式市場のほうが破天荒な言動に翻弄され、必要以上にセンシティブになってしまった観があります。
今年はそこに新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)も加わり、アノマリーの「ア」の字も出てこないような相場展開が続いているのです。

そんな相場で儲けている日本語脳の投資家は、大きく2つのタイプに分かれます。
1つ目は、その鋭い直観をフルに働かせているタイプです。2月末のコロナショックの後にREIT(不動産投資信託)が大暴落する局面がありましたが、直前に「何となく嫌な予感がして」売り抜けた人がいました。別の人は「通院の際にピンと来て」、既に高値で筆者などはとても手が出せなかった医療関連株を仕込み、大きなキャピタルゲインを得ています。
さすがにこれは、誰でも真似できるわけではありません。

もう1つのタイプは、自身の勘を生かしつつ、苦手な理屈の部分をいわゆるFin Tech(フィンテック、ICTを駆使した金融商品やサービス)にお任せする手法を取っていました。AI(人工知能)による銘柄分析や予想株価などを参考にしながらも、直観に従って銘柄を選択・購入し、その際はAIの分析を基に「いくらになったら売るか」を決めておく、といった投資スタイルです。
AIやビッグデータを活用すれば、個人投資家もプロ並みの情報収集が可能な時代です。ICTに人間の直観が加わったら、まさに“怖いものなし”なのかもしれません。ごくごく平凡な(しかも、英語も満足に話せない)英語脳の筆者から見ると、日本語脳の投資家がうらやましく思えます。

欧州で第二波が拡大しロックダウン(都市封鎖)が相次ぐなどコロナの先行きが不透明なことから、当面、この相場付きが変わることはないと思われます。アップダウンの激しい市場は手練れの投資家でないと手を出しづらい半面、硬直した市場よりは動きがあるほうが利益を生むチャンスが大きいのも確かです。
実際に投資をしなくても、「今この銘柄を仕込んだら来月には株価がこれくらいまで行くだろう」とか、「この銘柄はさすがに買われ過ぎだから、売りだな」といった“投資家目線”で市場をウオッチしていれば、個々人の相場勘は確実にブラッシュアップされていくはずです。
ということで、投資ビギナーの皆様、この秋は投資の基礎体力を養う“筋トレ”にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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