コラムVol.207 知って得する確定拠出年金 第10回 60歳以降も働く人必見!どうする?DC「3つの選択肢」

2026年8月10日
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日下部 朋久 (くさかべ ともひさ)
MUFG資産形成研究所長。1986年三菱信託銀行(当時)入社。年金数理、年金ALM、退職給付コンサルティングなど、幅広く年金業務に従事。企業年金基金、健康保険組合等を経て、2022年4月より現職。年金数理人。日本アクチュアリー会正会員。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。1級DCプランナー。
MUFG資産形成研究所

60歳以降も、再雇用されたり、定年がまだ先であるため、働き続ける人が増えています。その際、意外と悩ましいのがDC(企業型確定拠出年金)をどうするかという問題です。というのも、加入しているDC制度によって異なるものの、多くの場合、就労の有無にかかわらず、60歳に到達すると加入者資格を喪失する仕組みになっているからです。

「加入者ではなくなるのだから、受け取らなきゃいけないの?」「働いている間は運用を続けたほうがいい?」「iDeCoに移すことができるって本当?」など疑問が次々と生じます。

そこで、本コラムでは、60歳以降も会社勤めを続ける方(お勤めの会社が変わるケースも含みます)で、DCが60歳で資格喪失してしまう方を想定し、①受給を開始する ②受給せず運用を続ける ③iDeCoへ移換する という3つの選択肢から、何を選択すればよいのか考えていきます。

大切なのは、60歳以降のDCは「自分で選ぶ」こと!

DCは、多くの制度で60歳以降に老齢給付金として受給可能になります。ただし、60歳になったからといって、必ずしもすぐに受け取る必要はないのです。引き続き収入があるので受給を遅らせてよい場合や、働き方を変えるため収入が減少しその補填として利用する場合など、必要に合わせて利用方法を自分で決めることができるのです。

①60歳時に「受給を開始する」

60歳以降の生活資金として利用したり、住宅ローンの返済や予定していた大きな支出に利用することが考えられます。場合によっては、投資資金としてNISAなどを利用して、DCとは違った形で運用するという方法も考えられます。受け取り方は、一時金、年金、両者併用のいずれかです。

【年金で受給する場合】
生活資金として利用する場合は、定期的にお金が振り込まれる年金の受給が便利です。給与+DC(年金)で生活をするイメージで、たとえば公的年金の受給開始までのつなぎ年金として活用するパターンです。留意点としては、DCからの受給額は公的年金等に係る雑所得として所得税等の課税対象となります。ただ、公的年金等控除があるため、金額によっては税負担を抑えられる場合があります。なお、年金の振込手数料(1回あたり数百円)やDC口座の管理手数料(年間、3,000〜4,000円程度)がかかるケースが一般的です。事前に確認をしておくとよいでしょう。

【一時金で受給する場合】
まとまった資金が必要な場合や、会社からの退職一時金と同年度に受給し、退職所得控除を使い切りたい(税制優遇を最大限利用したい)場合などが考えられます。受給後はDC口座の管理が不要になり、口座の管理手数料がかからないというメリットもあります。

【併用する場合】
年金・一時金の両方に資金ニーズがある場合は、併用するという選択肢が考えられます。そのほか、公的年金等控除および退職所得控除などの税制上の優遇を最大限受けるために、併用する方法も考えられます。
受給時の税の取り扱いについては、以下のリンク先をご参照ください。
DC年金で「年金」を受給する!?〜公的年金等控除の活用法(お金の、育て方コラムVol.166)

60歳以降も働きたい!その時、DCをどうする?3つの選択肢から自ら選択が必要

②DCで「運用を続ける(受給を繰り下げる)」

60歳以降も、すぐに受け取らず運用のみを継続する選択です。加入資格は喪失しますが、運用指図者として制度に残ることになります。掛金の拠出はなくなりますが、これまでの運用を非課税で75歳まで継続できます。もちろん、運用商品の変更、いわゆる預替えもこれまでどおり可能です。そして、資金が必要となったタイミングで受給することができます。60歳以降、とりあえず資金ニーズがなく、かつ運用を継続したいなら、手軽な方法といえるでしょう。

ただし、運用を継続する場合は、将来、いつどのように受給するかを、この時期にしっかり考えておくことが大切です。受給額の損得を計算するのではなく、お金の使い道を考えるのです。第二の人生を豊かにするためにぜひ検討しましょう。留意点としては、①の年金受給と同様、口座管理の手数料が個人の負担になる場合があります。

なお、運用を継続したい方のもう一つの選択肢として、一時金で受給して、すぐにNISAで運用を再開するというのも有力だと思います。NISAも運用益は非課税であり、取り崩し時も税金がかかりません。

ただしNISAには年間の拠出限度額がありますので、DCから受け取る一時金額によっては非課税投資枠を超え、課税口座での運用になってしまいます。また、一時金の受給時には現金化しますので、運用が一時的に中断します。

そして、最大の留意点は、NISA等での運用再開を躊躇してしまわないかということです。いったん、多額の資金が現金となって、そこから投資を再開することに、ストレスを感じる方は多いと思います。今、買うべきか、もう少し待ってからの方がよいか、などと考え出し、結局買いそびれてしまったというケースも少なくありません。その点、DCで継続運用すると、そのような心配は少ないでしょう。

③DC資産を「iDeCoへ移換する」

DCの資産をiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)へ移す方法です。DCでは加入資格を喪失しますので、掛金の拠出はできなくなります。掛金の積み立てを継続したければ、自己負担となりますが、iDeCoに加入することで可能です。拠出した掛金は所得控除の対象となりますので、課税対象の所得が減り、税負担の軽減につながります。会社に必要書類を提出すれば、年末調整で反映されます。そしてiDeCo加入時にDCの資産を移換すれば、新しい掛金と一緒に運用することができます。移換せずにAで説明したDCに資産を置いて運用を継続することも可能ですが、iDeCoに一本化してまとめて運用をした方が口座管理手数料も節約できますし、シンプルで管理しやすいと思います。

60歳以降、まだまだ働いて資産形成も継続したいとお考えの方にぴったりです。掛金の拠出限度額は他に企業年金等に加入していなければ、現在は月23,000円が上限ですが、制度改正により2026年12月からは一定の条件のもとで、最大月62,000円まで拡大します。

加えて、iDeCoの受給時には、その加入期間は退職所得控除の算定期間に加算されますので、一時金で取得する場合は、所得税の軽減効果も期待できます。

iDeCoに加入するには、まず金融機関を選ぶことから始まります。金融機関によって口座管理手数料や商品ラインアップが異なる(DCで利用していた商品があるとは限りません)ので希望に合ったものを探すことが大切です。ネット証券系は商品ラインアップが充実しているとされていますが、今は銀行系にも魅力的なプランが用意されているため、比較検討するとよいでしょう。

そのほかの留意点としては、DCからの移換に際し現金化する必要があること、移換完了まで時間がかかること、などが挙げられます。

まとめ:60歳はDCの「第二の選択タイミング」

DCは60歳以降も働く人にとって、「受け取るかどうか」だけでなく、いつ・どのような形で使うかを自分で設計できる資産です。その選択に際しては、税金の考慮も大切ですが、何より、第二の人生においてどのようにお金を使うかを考えることが重要です。そしてDCの使い方の選択は、DC単体で考えるのではなく、60歳以降の給与収入、退職金、公的年金など、今後見込まれる収入全体とあわせて検討することが大切です。

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