コラムVol.101 地方クリエイターの仕事とお金の話14 最終回「都会と地方どちらが幸せか」

2021年3月2日
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平川らいあん (ひらかわらいあん)
ゲームクリエイター、シナリオライター。大手ゲーム会社でゲームディレクションを多数手がけ、その後独立。株式会社Megg(ミグ)代表取締役。独立後は複数の会社のゲーム開発に携わる。専門学校にて企画シナリオ講師やゲームを題材とした小説の執筆も行う。「お金の、育て方」内で配信中の「信託クエスト」のシナリオを担当。著書に「ゲームシナリオの教科書 ぼくらのゲームの作り方」、「ゲームプランとデザインの教科書 ぼくらのゲームの作り方」(ともに共著・秀和システム)がある。

地方で見えたこと

ゲームクリエイターの平川らいあんです。2017年に20年過ごした東京から地元、九州の宮崎県宮崎市にUターンしました。地方クリエイターとなった私が地方での仕事とお金のお話しをさせていただいております。第14回目。そして、今回で最終回となります。1年以上続けさせていただいたので寂しいですが、続けられたのは、読んでいただいた皆様のおかげです。誠にありがとうございました!

宮崎にUターンしてから、3年半が過ぎました。ほんとに色々ありました。Uターンする時も悩みに悩み、宮崎に来てからも正直苦戦ばかりでした。それでも、目標だったワークライフバランスの改善には成功し、新しいことにも挑戦できました。東京では仕事ばかりで疲れ果てていましたが、今では体も心も元気でやる気もみなぎっています。元気があれば何でもできる!です(笑)

今回は、締めくくりとして、私が感じた都会と地方の違いをまとめていきたいと思います。そして結論として、究極の選択「都会と地方ではどちらが幸せか」に答えを出したいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。

都会と地方の違い

・生活面
都会と地方の大きな違いは、やっぱり家賃ですね。地方の方が圧倒的に安いので、毎月の固定費を抑えることができます。土地も安いので、家を建てたい人のハードルも低いです。その他の物価はほぼ変わりませんが、家賃が安い分、飲食店は比較的安いお店が多いです。地元の新鮮な食材を食べられるのもメリットの1つですね。地方は、交通機関が少なく、街のつくりも広いので、生活には車が必須。車の維持費を考慮する必要があります。収入は都会に比べると低いですが、1番負担の大きい家賃が安く、車の維持費も都会でも交通費がかかりますし、差はあまり感じません。しかし、地方の方が負担が大きくなるものがあります。それは教育費。子供が県外に出て都会の学校に進学する場合です。都会の方が、大学も専門的な学校も多いため目指す子供も多いでしょう。早い段階から学資保険などで資産形成を考えていた方がいいかと思います。

・仕事面
仕事の数も種類も圧倒的に都会の方が多いです。大企業や最先端の企業も多いので、やりがいも刺激もあります。やりたい仕事があるかどうかは非常に重要になるかと思います。ちなみに宮崎にはクリエイティブな仕事が少なく、クリエイターは厳しいのが現状です。ですが、チャンスでもあります。まだ地方にない新しいモノやお店をもってくれば、競合も少なく注目される可能性を秘めています。家賃も人件費も安いためコスト面でもチャレンジはしやすいです。

・時間
都会と地方では時間の使い方が違います。「使える時間が違う」と言った方がいいかもしれません。宮崎県の通勤時間の平均は17.7分と日本で1番短く、1番長い神奈川県が平均48分(宮崎市ホームページ(2015年2月27日)より)と30分も違います。また、地方は待ち時間も短いです。銀行窓口、病院なども都会より短く、ランチなどお店に並ぶこともほぼありません。移動時間や待ち時間が減ると使える時間が増え、生活が一変します。趣味の時間に費やしたり、家族との時間を増やしたり、副業したりとやれることも増えるでしょう。(地方クリエイターの仕事とお金の話1「なぜ地方に?」地方クリエイターの仕事とお金の話7「地方の現実とライフプランの変化」でも宮崎県での生活や時間などについて述べています。)

・人との繋がり
地方は、同じ業種や同じ趣味の人が少ないのもあり、コミュニティの結束や絆は強いです。その分、内輪感があり、新規の方は入りにくく感じるかもしれません。勇気を振り絞って話かけてみてください。また、行政との距離が近いのも驚きでした。親身になって相談にのってくれ、力になってくれました。恩返しするためにがんばろうとモチベーションにも繋がりました。(地方クリエイターの仕事とお金の話5「地方のコミュニティ」地方クリエイターの仕事とお金の話10「行政との距離」でも行政とのかかわりについてお話しています。)

・情報とエンタメ
地方に不足しているものが「情報とエンタメ」です。テレビ局などメディアは少なく、トレンドを発信している人も少ないため、流行が遅れてやってくることもしばしば。特にアニメなどのサブカルは人気が出てから放送されるなどファンにはつらい環境です。仕事面でも最新の情報はやっぱり人からの情報が1番早いので、人口も業種も少ない分、情報が伝わるのにも時間がかかります。情報源となる都会の人や企業など繋がっていた方がいいですね。(地方クリエイターの仕事とお金の話12「地方のエンタメ」でも地方の遊びや娯楽、エンターテイメントについて考察しています。)

都会と地方では、どちらが幸せ?

こうして比べてみると、まだ都会の方がメリットが多い気がします。地方創生という言葉が発表されたのは2014年。東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的とした政策でした。「2020年までに東京圏の転入超過数をゼロにする」という目標を掲げているのですが、2018年には、2014年に比べ29の府県で転出超過が拡大し、東京圏の転入超過数は24.7%増加(株式会社日本総合研究所2020年05月28日JRIレビューVol.6,No.78より)と、数字でも物語っています。

私は、宮崎に戻ってきて、会社の売り上げも自分の収入もだいぶ減りました。ゲームの仕事は宮崎にはなく、リモートでできる新規の仕事を獲得するのに苦労しています。でもまったく後悔していません。新しいことに挑戦できたし、そこでたくさんの出会いがありました。このコラムも地方にUターンしたからこそ書かせてもらえました。すごくいい経験になりました。

都会と地方では、どちらが幸せなのか。私の答えは、ずばり!両方です!ごめんなさい。どちらか1つは選べませんでした…。東京では、たくさんの仕事をさせてもらい充実していました。色んな人たちにもお会いすることができ、お店も遊ぶ場所も多く刺激がいっぱいでした。宮崎は自然がいっぱいで空が広く、温かい日差しと優しい風が体も心も癒してくれます。海も温泉もサイコーに気持ちいいです。

ただ正直思うこともあります。宮崎で東京と同じぐらい収入があったらいいのに。あのイベント宮崎でもやってくれないかな。小劇場やお笑いライブに行きたいな。とか。まだまだ地方には足りないものがあります。でもそれ以上に生まれ育った宮崎が好きなのです。

都会と地方、どちらにもメリットとデメリットがあります。何を求めるのか、大切にしたいものは何か、都会か地方かを選択する際には一度考えてみてください。私も宮崎を諦めず、宮崎にUターンしてよかったと心から言えるようにがんばっていきたいと思います。

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