コラムVol.145 知って得する確定拠出年金 第3回 企業型DCは持ち運び自由〜退職時に考えること〜

2022年6月10日
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日下部 朋久 (くさかべ ともひさ)
MUFG資産形成研究所長。1986年三菱信託銀行(当時)入社。年金数理、年金ALM、退職給付コンサルティングなど、幅広く年金業務に従事。企業年金基金、健康保険組合等を経て、2022年4月より現職。年金数理人。日本アクチュアリー会正会員。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。1級DCプランナー。
MUFG資産形成研究所

勤め先を退職するとき企業型DCはどうすればよいの?

勤め先を退職するときに、加入している企業型DCはどうなるのでしょうか。少なくとも60歳に到達しなければ引き出せないことは、ご存知のとおりですが、では一体どうすればよいのか考えてみましょう。

前提として、皆さんは国民年金第2号被保険者(厚生年金加入者)であり、企業型DCに加入、iDeCoには未加入の状態で会社を退職するとします。
退職後の状態を以下の4つのパターンに整理して考えてみます。

4つのパターン

@企業型DCのある会社に転職する(第2号被保険者)場合

原則、資産を転職先の企業型DCに移換し、転職先のDC加入者となります。一般的に考えられているDCの積立資産を持ち歩くイメージです。この場合、移換の申出を退職後6か月以内に行います。運用商品は一旦売却し現金化する必要がありますので、運用の空白期間が生じます。現金化はどのパターンにおいても移換時に必要となります。

留意すべきは、60歳以上で退職した場合です。おそらく退職時にDCの受給の意思等の確認の案内がされると思いますが、ここで転職前の企業型DCから受給してしまうと転職先のDCには加入できないことになります。

次に、企業型DCへの移換以外の選択肢を検討します。22年10月以降であればiDeCoに資産を移換することができます(10月以前でも企業型規約でiDeCo加入可能の定めがあれば可能)。ただし転職後の新しい掛金は企業型DCに拠出されることになりますので、iDeCoでは運用指図者となるか、もしくは企業型DCの掛金との関係でiDeCoへの拠出枠が残っていれば加入者となり企業型DCとの併用ということになります(第1回コラムを参照)。また、転職先の企業型DCが任意加入という場合もあります。この場合、企業型DCに加入せずiDeCoのみ加入するということも考えられます。いずれにせよ第1回でご説明したとおり、iDeCo利用には費用と手間がかかりますので、iDeCoを特に利用したい事情、たとえば企業型DCの掛金が少額なので自己資金で積立てたいとか、企業型DCにはない運用商品で運用したいなどの事情がなければ企業型DCを優先した方が良いでしょう。

第3の選択肢として、22年5月より企業年金連合会の通算企業年金に移換することができるようになりました(60歳以上の退職により企業型DCの運用指図者となる場合を除く)。通算企業年金は移換資産を原資に終身年金もしくは一時金を支給する仕組みであり、掛金の拠出はできませんがDCと併用することができます。年金払いの受給を計画している方には検討の選択肢になると思います。なお、とてもレアなケースですがDCからの移換金の受け入れを認めている確定給付企業年金(DB年金)がある場合は、そのDB年金に移換することが選択肢に入ります。
【ご参考】 『企業年金連合会 通算企業年金のおすすめ』パンフレット(PDF形式/1.54MB)

図表1 転職先に企業型DCがある場合の移換先と掛金の拠出先
図表1 転職先に企業型DCがある場合の移換先と掛金の拠出先

A企業型DCのない会社に転職する(第2号被保険者)場合

上述のレアケースを除いて、基本的にはiDeCoに移換するか、通算企業年金に移換することになります。既述のように移換の申出を6か月以内にする必要があります。これを行わないと国民年金基金連合会に自動移換され、運用されずにキャッシュのまま置かれる上に、管理手数料が引き落とされることになるので、この移換の申出は確実に行いましょう。

60歳以上で退職した場合、企業型DCがある場合と違い、iDeCoへの加入制約はありませんが、企業型DCから受給を開始していないことが条件となります。これは上述の企業型DCに加入できない場合と同じです。もちろんiDeCoに加入せず企業型DCから受給することも選択肢になります。加えて、転職前の制度において受給の繰下げ(60〜75歳までの間で任意に決められます)を行い、運用を継続するという選択肢もあり、この場合資産を移換せずiDeCoの加入者となることも可能です。

B自営業、フリーランス、無職(第1号被保険者)となる場合

基本的に転職先に企業型DCがない場合と同様に、iDeCoもしくは通算企業年金に移換します。国民年金のみの加入となることから、iDeCoの掛金上限額は68,000円に増加します。もちろん運用指図者となり拠出しないことも可能です。

iDeCoの加入条件として国民年金の加入者であることが必要ですので、60歳以上の場合は国民年金に任意加入(保険料納付期間が40年未満等の加入条件あり)しない限りiDeCoには加入できません。一方で企業型DCの受給権が発生している場合は受給を開始するか、受給の繰り下げを行うという選択肢となります。受給の繰下げ可能年齢について、22年4月より従来の70歳から75歳に引き上げられています。

※拠出上限額については第2回コラム(図表2)をご参照ください。

C配偶者の被扶養者(第3号被保険者)となる場合

基本的に上述の第1号被保険者となる場合と同じですが、iDeCoの拠出上限は23,000円となります。被扶養者となれば基本的に所得がなくなりますのでiDeCo掛金の所得控除による税メリットが得られません。NISAの積立枠があるならば今後の掛金はNISAを先に活用することが考えられます。NISAへの積立金は所得控除にはなりませんが、運用時、引き出し時には課税されないメリットがあります。NISAについては「少額投資非課税制度(NISA)とは?」も参考にしてください。

いかがでしたでしょうか。少し複雑ではありますが、ご自身があてはまるパターンを想定してご検討いただければと思います。

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